矢作川研究所日記

2023/07/20

矢作川水源の森づくり合同研修会に参加しました

矢作川流域の約7割は森林に覆われており、そのおよそ半分の面積を人工林が占めています。スギやヒノキといった、水消費量が多い常緑針葉樹で構成される人工林は、適正な間伐が行われないと、水源かん養機能や土砂災害抑制機能が劣化することが指摘されています。
人工林の間伐が進まない原因の一つが、林業現場技術者の減少であり、背景には林業の労災発生率の高さがあります。労働者千人あたりの死傷者数は全産業平均が2.7なのに対し、林業は24.7と、9倍以上になっています(2021年)。

林業の現場で労災を減らすには、従来の「親方の背中を見て学べ」式ではない、系統立った技術教育が必要です。豊田森林組合は2021年度から新入職員に、科学的で安全な林業技術を学ばせることに力を入れてきました。その技術教育を含めた人材育成方法を矢作川流域内で広めるため、根羽村森林組合(長野県根羽村)、恵南森林組合(岐阜県恵那市)、岡崎森林組合(岡崎市)と合同で、初めての「矢作川水源の森づくり合同研修会」が開催されました(主催:矢作川流域圏懇談会山部会)。

午前中は座学で、豊田森林組合が人材育成のため、豊田市、岐阜県立森林文化アカデミーとの連携協定を締結したことや、人材育成にあたる総合職の枠を7人分設けたことが紹介されました。この7人は、林業技術者のリーダーを育てるトレーナーズトレーナーの第一人者の元で学び、新入職員の指導にあたっています。
午後は、林業の現場を再現した訓練ができる伐倒練習機(MTW-01)を使って、各森林組合の職員が日頃の伐倒の技を披露し、豊田森林組合の担当職員が、安全で確実な伐倒を行うための詳細な助言をしました。

この研修会では、立ち位置や体勢といった体の使い方、正しい道具の使い方を身に付けるのは決してむずかしいことではなく、それらに習熟することで、林業の現場の安全性が確実に高められることが共有されたと思います。参加した豊田市森林課長の、「森づくりには流域単位の連携が必要。この流域が森づくりの視点で日本一注目されるようになるといい」という言葉に共感しました。(洲崎燈子)





2023/06/07

市役所南庁舎2階で標本などの展示をしています


6月7日(水)~6月27日(火)の期間限定で、外来生物の標本、はく製、写真などを展示しています。場所が、市役所の南庁舎2階のため、土日を除く平日の午前8時30分から午後5時15分までの間に見ていただくことができます。
 この展示は、外来生物法の改正により6月1日からアカミミガメとアメリカザリガニが特定外来生物になったことを啓発する目的で行います。標本などの展示資料は、(仮称)豊田市博物館、豊田市環境政策課、矢作川研究所が部局の垣根を越えて準備をしました。
 この期間中に、市役所に御用の方や近くにお越しの方は、ぜひご覧ください。





2023/04/11

河川敷のたまりに取り残されたフナ類とコイ類を見つけました

 4月11日、矢作川の河川敷にできた「たまり」で、体長35cm前後のフナ類31匹(写真左)と、体長65cm前後のコイ類4匹が泳ぎ回っているのを見つけました。
 フナ類やコイ類は春を迎えると、ヨシなどの植物が生えた岸辺の浅瀬で産卵することが知られています。そこで「たまり」に沈んでいた落葉落枝をよく観察すると、おびただしい数の卵が付着しているのを確認することができました(写真右)。この場所は冬には水が全く無い窪地だったのですが、4月7-8日の雨で増水・冠水したタイミングでフナ類やコイ類が入り込み、産卵したと考えられます。その後の水位の低下で「たまり」に取り残されてしまったようでした。
 「たまり」は普段、矢作川本流の水域から切り離された池のような環境です。水位の低下によって干上がってしまうこともあれば、増水によって年に数回ほど本流と繋がることもあります。このような環境の変化の中で、成魚や卵たちは無事に生き延びることができるのか、観察してみたいと思います。(浜崎健児)


写真左:たまりの浅瀬で休むフナ類。写真右:落葉や落枝に付着した卵(直径1.5mm前後)。



2023/04/03

枝下町矢作川水辺愛護会が豊田市表彰を受け、代表受領しました

2023年3月4日、豊田市民文化会館小ホールで開催された豊田市の市制72周年記念式典の中で、枝下町矢作川水辺愛護会が豊田市表彰を受けられました。長年にわたる水辺愛護活動のボランティア活動が認められての表彰でした。

当日は、枝下町矢作川水辺愛護会の会長の三宅典久さんが、団体表彰の部の代表として表彰状を市長から直接受け取りました。その写真をご紹介します。厳かな雰囲気の中でも、三宅さんの笑顔がとても印象的です。

その後、三宅さんから今回の表彰を愛護会の会員の皆さんと分かち合う写真が届きました。「表彰されたことを会員に知らせ、記念撮影」されたとのことでした。表彰状を囲んで、一緒になって作業に取り組まれてきた皆さんが嬉しそうな感じで、こちらも素敵な写真だと思います。

豊田市には25の水辺愛護会があり(令和5年に3愛護会が追加)、清掃や草刈りなどの河川美化活動を定期的に実施してくださっています。その活動は河川や河畔の利用者の方に対して素晴らしい空間を提供するとともに、豊かな地域づくりにも貢献するものです。とても大切で地道な活動ですが、長期間にわたって活動を継続していくことは、簡単なことではありません。枝下町矢作川水辺愛護会をはじめとする、長年活動を継続されている水辺愛護会の皆さんには頭が下がるばかりですし、水辺愛護会の活動がこれからも継続していくことを願ってやみません。

川を見たときに手入れの行き届いた場所を見つけることがあったら、そこは水辺愛護会の活動地かもしれません。思いを込めて愛護会の活動をされている方々の姿を想像して頂ければと思います。(小野田)
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注)今回は豊田市表彰を代表受領された枝下町矢作川水辺愛護会を取り上げましたが、これまでの長年にわたる愛護会活動に対して豊田市表彰を受けられた水辺愛護会が他にもあります(古鼡水辺公園愛護会、波岩水辺公園愛護会※、アド清流愛護会、梅坪水辺愛護会、石倉水辺公園愛護会※、太田川河川愛護会、御船せせらぎ広場愛護会、百々水辺愛護会、西広瀬町矢作川水辺愛護会、初音川ビオトープ愛護会、藤沢水神ロード愛護会、加茂川水辺愛護会)。※現在、平戸橋二区水辺愛護会に統合。



2023/03/09

有間竹林愛護会の活動に大和ハウス工業株式会社豊田支店が参加しました

矢作川研究所では、河畔林を整備する水辺愛護会の活動に対して、多くの外部ボランティアの方に参加してもらうためにどうすればよいかについて、調査をしています。人手不足の水辺愛護会の活動に、ボランティア実施先を探す企業が参加することで、河畔林の保全が進みます。このような協力体制が、都市部と山間部をつなぐ中間支援組織「おいでん・さんそんセンター」の仲立ちにより実現し、継続されている現場にお邪魔しました。

この日は、旭地区の矢作川の川辺を整備する有間竹林愛護会の活動に、大和ハウス工業株式会社豊田支店の社員25名の方が参加しました。ボランティア休暇制度を利用して自主的に参加した、20代から50代の皆さんです。この活動は2017年からほぼ毎年行われており(コロナ禍で中止になった2021年を除く)、参加者のほとんどが経験者でした。研究所からは2名が参加し、活動前に、河畔竹林整備の意義と市内の水辺愛護会の全体像についての解説を行いました。
有間竹林愛護会の原田茂男会長から、竹を伐る際に跳ね返ることがあるので顔を近づけないことなど、作業上の注意があった後、参加者は、「準備体操」として既に伐られていた竹を片付けのため移動させました。その後、3つのエリアに分かれ、伐るべき竹としてビニール紐が巻かれた竹を間伐しました。お昼を挟み、伐った竹を2m程度の長さに刻みました。後日、車で運び出して処理するためです。
この日は4月並みの陽気となり、竹を伐るのも運ぶのも汗をかきながらの活動でしたが、その甲斐あって、竹林に光が入り、すっきりしました。

参加者に感想をお聞きすると、「あまり地域の人たちと交流することがなく、他の部署の人ともこういう時しかしゃべらないので良い機会になっている。自然体験ができるのがいい。」とのことでした。また、継続して参加している方からは「景色が変わってきて(竹林が良い状態になり)、やりがいを感じる」「愛着が湧いてきた」などの感想をいただきました。参加者のほとんどが県外の出身で「なかなか来ることのなかった地域に来る機会になっている」「ボランティアの後に立ち寄れる観光地を紹介してもらえるといい。またこの地域に子どもを連れてくることもできる」というお声もあり、外部ボランティア誘致のヒントを頂きました。「河畔竹林整備の意義を教えてもらったのでやる気が3倍4倍5倍になりましたよ!」と教えていただいたときは、研究員として嬉しく感じました。 



参加者の向こうに見える竹林がすっきりしました