矢作川研究所日記

2019/01/31

矢作川研究所セミナーを開催しました(講師:高橋 勇夫 氏)

豊田市矢作川研究所セミナー「アユの過去,現在,未来」
たかはし河川調査事務所 高橋 勇夫 氏




 高橋さんは全国の河川を巡りアユの生態調査や漁場改善などについての指導・助言をされているアユの専門家で,矢作川研究所の発足前から矢作川天然アユ調査会のメンバーと共に矢作川でアユの調査を始められ,現在でも矢作川のアユを見つめて下さっています.矢作川研究所セミナーでは「アユの過去、現在、未来」と題して,アユ事情の最前線についてお話をして頂きました.



 ゼミには矢作川漁業協同組合や矢作川天然アユ調査会,愛知県水産試験場などから多くの方々が参加され,熱心に聞き入っておられました.


 アユの漁獲量は1991年以降,減少傾向が続いており,その要因としてアユの病気の蔓延,河川環境の悪化,放流アユの大型化などを挙げられていました.しかし,漁獲量を増やすために放流すれば良いかというと,そうとも限らず,天然遡上の無い河川では放流しても,漁協は赤字になってしまう可能性が高いとのことでした.
 後半では天然アユ資源を増やすための方策として,高橋さんが全国の河川で取り組まれている産卵場の造成についてお話し頂きました.ダムがある河川でも漁協や電力会社などが協力して,効果的な産卵場を造成することで,アユの卵のふ化量,ひいては翌年の遡上量が増加することに成功したそうです.


 高橋さん曰く,「矢作川は様々な問題の常に先頭を走っている」とのことで,矢作川で起きた河川環境の問題が数年後には他の河川でも見られるようになるのだそうです.矢作川で起こる河川環境の悪化をいち早く見つけて,食い止め,改善に向けることが矢作川研究所の使命であると改めて認識しました.



2019/01/28

初音川ビオトープのかいぼりを実施しました



初音川改修工事に伴い生息場所を喪失する水生生物の避難を目的に、ビオトープ内の水を抜くタイミングにあわせ、かいぼりを行いました。土のうを積んでビオトープを半分に仕切り、12月に南西側の半分を、1月に北東側の残り半分を調査しました。ヘドロが厚く堆積したぬかるみの中での採集はなかなか大変でしたが、大きなコイからイトトンボ類の幼虫まで大小さまざまな水生動物を採集しました。集計の結果、9種の魚類をはじめ23種の水生動物を確認することができ、採集数の多かったものは、カダヤシ(特定外来生物)、モツゴ、チュウゴクスジエビ(外来種)で、いずれも3ケタを超えていました。チュウゴクスジエビは今回はじめての確認です。本来たくさん生息していてもいいはずのメダカが全く確認できず、ドジョウがわずか3尾にとどまったのは残念でしたが、今後魚道の整備や水底の浚渫によってより良い環境に整備していきたいと思います。



2019/01/26

第一回小さな自然再生サミットに参加してきました

 兵庫県神戸市で開催された「第一回小さな自然再生サミット」に参加してきました(主催:「小さな自然再生」研究会、日本河川・流域再生ネットワーク、後援:国土交通省)。
 約160人が参加した初日には、基調講演「これまでの多自然川づくりと小さな自然再生」(島谷幸宏氏(九州大学))と、全国各地から15事例の発表があり、豊田市の岩本川での“ふるさとの川づくり事業”についても研究員が発表をしました。




 事例紹介では、主に「魚道」や「バーブ工」の設置についての試行錯誤、市民・行政・企業の連携などの取組体制が語られました。
 「統一されない技術、しかし、交流される技術」(島谷氏)を目指そうということで興味深い意見の交換がありました。また、課題としては「活動の継続性」などが挙げられていました。魚道設置などの大きな取り組みがあれば盛り上がりますが、その後の継続はやはりどこも難しいようです。


 翌日は神戸市内を流れる住吉川のエクスカーションがあり、急勾配で落差工の多い都市河川における「水辺の小わざ魚道」を見学しました。約2.5kmの区間にある12基すべてを案内していただきましたが、ひとつひとつの魚道に市民や技術者の想いがこもっていることを実感しました。川沿いの遊歩道は「清流の道」として整備されジョギングする人が多く見られたり、水際が階段状になっていたり、川の中には飛び石が配置されていたりと、親水性の高い川でもありました。



 市民が日曜大工的に取り組める「小さな自然再生」の事例発表会は初開催ということでしたが、全国から市民、専門家、行政など色々な立場の当事者が集まりました。身近な川を良くしたいという気持ちに溢れた人たちと意見交換が出来たことで、改めて「できることからはじめよう」と思うことができ、今回収集した各地の事例を豊田市流にアレンジして地域に愛される「ふるさとの川」を皆さんと一緒につくっていけるように調査研究に取り組んでいきます。(吉橋・山本大輔)