矢作川研究所日記

2022/12/21

研究は“段取りが命”

年の瀬も押し迫った12月下旬のある日、研究所の奥の部屋からガチャガチャと音が。
行ってみると、内田さんと濱野さんが何やら工作中で、よく見ると金属の繋ぎ手にネジを入れ込んでいます。実はこれ、川に透明水路を作って川底の付着藻類の光合成量を調べる研究の“下ごしらえ”で、透明水路のフレームの部品の準備風景の一つでした。


作業中の濱野さん(奥)と内田さん(手前)


透明水路のフレームの概念図


水量の安定しやすい冬季に実験を実施するのですが、かじかんだ手でも水中でパイプをつなぎやすいようにあらかじめネジを少し入れ込んでおくとのこと(少し浮いたネジは手抜きというわけではありません!)。その工夫に感心していると、内田さんからさらに追い打ちが。赤く塗られた繋ぎ手を見せて、「上下方向が分かるように目印も入れている」とのこと。現場での作業を極限まで効率化する努力に驚くばかりでした。


少し浮いたネジ


目印で上下も分かりやすくする工夫


作業中に「料理の下ごしらえと似ている」との話になり、内田さんから「研究は“段取りが命”!」との名言をもらいました。こういう地道な作業も研究の大切な一部だな~としみじみと思いました。 (話し手:内田朝子、聞き手:小野田幸生)



2022/12/20

ドローンを用いた外来水草オオカナダモの分布調査


今年も外来水草オオカナダモの分布をモニタリングする時期になりました。今年は頼みの綱であった船頭さんのご都合が悪く、調査対象の全区間をドローンで確認することになりました。研究所の熟練ドローン操縦士の指導を受け、ドローン操縦に挑戦しました。


スタートさせたドローンは、4つのプロペラを高速回転させ、草や枯れ葉を蹴散らして勢いよく上空に舞い上がりました。手に汗を握り、心に「良い仕事をするんだよ、無事に戻ってくるんだよ」と念じつつ操縦しました。矢作川の水面、岸辺の様子、ドローンに驚く水鳥たちなどなど、モニターに次から次へと上空からの川の情報が映し出されました。まるで自分自身が川の上空で旅しているような、そんな感動を味わうことができました。



将来、スマホでドローン操作ができる時代も到来するのでしょうか。そうなると、ドライブ気分で川に出かけ、車窓から放ったドローンで川の様子を確認し、調査のタイミングも容易に図ることができそうです。夢は膨らむばかりです。

なお、矢作川のオオカナダモの分布変化(2011年~2021年)は令和5年1月1日発行の矢作川研究27号に紹介しました。是非、ご覧ください。



2022/11/04

河川活動現地研修会を開催しました

2022年11月4日、水辺愛護会・河畔林愛護会の方を対象とした河川活動現地研修会を実施し、関係者を含め30名程度が参加しました。愛護会活動と関連の深い、除草や伐竹に取り組む豊田市の2つの団体(めぇープルファームと竹々木々[ちくもく]工房)を視察しました。

めぇープルファームの代表である鈴木光明さんから、ヤギを活用した「ヤギ除草」についてのお話を聞きました。持続可能な社会の実現に向けてヤギ除草の活用が注目を集めていますが、除草効果だけでなく、イベントなどでの集客効果も大きく、若い世代から活動の支持を得られるといった相乗効果も期待できることが分かりました。



竹々木々工房の共同代表である大山侑希さんは、親子参加型の竹林整備メニューを開発して多くの人を巻き込んだ竹林整備を実践するとともに、幼竹をメンマ等に活用することで竹林の再繁茂の抑制までを視野に入れた活動をしています。経験に裏打ちされた、美しい竹林を保つための取組みとそのコツについて、先進的な取組みが紹介されました。地元の有間(あんま)竹林愛護会にはメンマの加工時に協力してもらっているということで、講義後のコメントからは、竹林管理の同志として一体となって活動していることが感じられる一面もありました。



コロナ禍による中断で3年ぶりの研修会の実施となったため、愛護会の近況報告や愛知県・豊田市等からの情報提供もあり、関係者同士の交流や理解を深める機会にもなりました。たとえば、梅坪愛護会の方からは、企業の基金や社会貢献活動を活用して新しい草刈り機材を導入したり人手不足を補ったりする戦略的な取組みが紹介され、持続可能な愛護会活動に役立ちそうな情報提供などもありました。



参加された愛護会の方から多くの質問やコメントがあり、討議も大変盛り上がりました。事後アンケートでも、参考になったとか、今後の活動に活かしたいという意見が多く寄せられました。今後の愛護会の活動のヒントになったようで嬉しく思います。

(豊田市役所河川課 中園・小野田)



2022/10/23

広沢川で川づくり学習会(第2回)を行いました

 猿投山を源流とする広沢川では、2020年度から住民と行政の共働による「ふるさとの川づくり事業」が行われています。今年5月に行った第1回川づくり学習会に続き、2回目の学習会を行いました。今回も猿投町まちづくり協議会、猿投町子ども会役員の皆さん14人にご参加いただきました。
 今回は、夏の出水を経た広沢川の堆砂状況等の変化を確認し、草刈りや浚渫などの維持管理の工夫について学びました。川の流れの緩急や深さ・浅さにより多様な環境を用意すること、水際の草を刈り残すことで生き物の隠れ場所を確保することなど、生き物のすみやすい環境づくりを意識していただく機会となりました。


水際の水の流れを学びました

 また、学習会後半では、農業用堰堤の堰板を取り外し、堆積していた土砂を下流に押し流しました。参加者のお一人に農業委員会の方がいて、その場で堰板を外すことを、了解を得た上で実施することができました。参加者の皆さんが自ら率先して行動していただき、大変実りある学習会となりました。(金田 修)


堰板を外して土砂を流しました



2022/09/25

矢作自治区水辺愛護会活動地で植物観察会

当研究所は、各水辺愛護会が今までの活動をふりかえり、今後の活動を展望する「管理・活動計画」づくりのお手伝いをしています。今年度は矢作自治区水辺愛護会でこの計画を作りますが、そのためのワークショップに先がけて、植物観察会を行いました。

笹戸温泉対岸の下流側にある矢作自治区水辺愛護会の活動地には、「川坊主公園」という名前が付けられています。ここはかつて川の中州で、大きな淵があり、川坊主と呼ばれる大きな鯉がいたという伝説があります。この川坊主は心優しく、たびたび大男の姿に化けて村の仕事を手伝っていたそうです。

川坊主公園ではミゾソバやミズヒキ、ヤブミョウガといった秋の花を観察することができました。ヤマグワの葉がたくさんの健康改善効果を持つお茶になることや、ヤブカンゾウが葉だけではなく花やつぼみもおいしく食べられるお話をしました。一方で、特定外来生物のアレチウリも広がってしまっており、結実前の駆除が望ましいことをお伝えしました。

参加者は昔イタドリや桑の実を食べた思い出話をしたり、百々水辺愛護会で行われているニホンミツバチの養蜂に関心を示されたりしていました。また、川坊主公園を訪れる人が増え、関係人口(特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人)、ひいては小原地区に移住してくる人も増やせないだろうかという夢を語られました。(洲崎燈子)


活動地のようす

参加者の皆さん

ヤブミョウガの花