2021/03/15
猿投台地域でわくわく事業の助成を受けている「民芸の散歩道づくり」活動の報告会・セミナーが、猿投台交流館で行われました。
この地域には平戸橋周辺の豊かな自然と歴史を活かした地域づくりをめざす「民芸の渓(たに)」構想があります。この構想はこの地に住み、電気通信事業と科学技術の向上に献身するとともに、陶磁器の研究に取り組み、猿投窯を発見した本多静雄氏の提案に基づいています。「民芸の散歩道づくり」活動はこの構想を踏まえ、平戸橋駅から前田公園に至る民芸の散歩道と、平戸橋公園から表州(ひょうす)水辺公園に至る矢作川散策路及びその周辺に、地域産の木材と竹材を使ったオリジナルのベンチをこれまで18基作成し、設置してきました。
セミナーでは「平戸橋周辺の矢作川の自然資源」と題して報告を行いました。川辺の林、河畔林の機能と、矢作川中流のモデル的な河畔林として整備されたお釣土場水辺公園などの豊かな自然と生物を紹介し、この地域にある川港や伝統工法による護岸、流れ橋などの歴史的な痕跡についても触れました。この地域の河畔はかつては密生化した竹林に覆われていましたが、水辺愛護活動の活発化により近年劇的に景観が改善されています(Rio2020年4月号参照)。今後は人が利用しやすいだけでなく、多様な植物が生育できるような川辺づくりにつながる管理を、竹林と草地で行っていくことを提案しました。
参加者からは、「竹や草を刈りすぎたり放置したりするのではなく、ほどよく管理することが植物の豊かさにつながるとわかり驚いた」「地域の河畔林にいろいろな植物がある事が分かったので、子どもも含め地元の皆さんと見て楽しみたい」などの声が上がりました。また、前年度行われた椿油搾り体験も話題に上り、植物利用の楽しみをきっかけに川への興味が広がる可能性についても言及されました。
その後、以前研究所に在籍されていた枝下用水資料室の逵志保さんが「歴史・文化資源としての枝下用水」と題した報告で、枝下用水資料室開室までのあゆみや、愛知新十名所として賑わっていた頃の勘八峡の写真や資料、枝下用水がみんなのプールや生活用水だった頃のようすを紹介されました。越戸ダム上流の名鉄三河線の廃線区間で清掃活動が続けられ、廃線跡からでも枝下旧用水路を見ることができるようになったそうです。
登壇者と参加者を交えた意見交換会では、広い猿投台地域のあちこちにベンチが置かれるようになったことで、ここが一つの地域であるという意識が培われるようになったことと、ベンチのある場所に多くの人が来るようになって、散策路整備のモチベーションが上がったとの発言がありました。この地域の川辺の豊かな自然と歴史の資源がさまざまな活動のアイディアをもたらし、地域を愛する人のつながりを強め、広げていることを実感できました。(洲崎燈子)
2021/02/12
2020年6月、初音川ビオトープの一角で産卵中のミシシッピアカミミガメ(以下「アカミミガメ」)が確認されました(写真1、初音川ビオトープ愛護会 萩野鎭夫会長 撮影)。アカミミガメは春~初夏にかけて、土に穴を掘って産卵します。ニホンイシガメやスッポンなどとは異なり、ふ化しても子ガメはそのまま土の中で冬を過ごし、翌春になってから出てくることが知られています。そこで、土の中から出てくる前に産卵巣(さんらんそう、メスが産卵のために掘った穴と産み落とされた卵)の様子を観察するため、2021年2月に掘り起こしを行いました。
産卵場所は植栽された樹木の根元付近で、よく見てもどこに産卵したのか分からない状況でした。産卵時に撮影された写真を頼りに少しずつ掘り進めると、表層から約6cmの深さに産卵巣があり、その中で重なってじっとしている子ガメを見つけました(写真2)。子ガメは全部で9個体、1個の卵は死んでいました(写真3)。子ガメの大きさ(甲羅の背面の長さ)は27.7~33.7mm、重さは4.2~7.5gで、最も小さな子ガメの鼻先には卵歯(らんし、卵の殻を割るための突起)が確認できました(写真4)。
アカミミガメは北アメリカ原産の外来種で、日本の生態系や農業に悪影響を及ぼす可能性が高いことから「緊急対策外来種」に指定されています。無責任な飼い主や業者が野外に放したことで、全国各地で増殖し分布域が広がっています。今回、産卵された卵のほとんどは孵化していました。ビオトープや近隣の河川・ため池ではたくさんの親ガメが確認されていることから、市内でも急激に増殖している可能性が高いと考えられます。
野外に生息するアカミミガメには何の罪もありません。しかし、在来の生態系を守るために、豊田市ではアカミミガメの防除を行っています(詳細はこちらをご覧ください)。子ガメは小さく可愛らしいですが、成長すると20cm以上になり寿命も30年前後と長生きです。防除しなければならないかわいそうなアカミミガメたちを増やさないために、飼育する場合は最後まで責任を持って飼い続けるようにしましょう。(浜崎健児)
2021/01/29
この写真のように「パソコン画面に向かって、一人でしゃべっている」という状態は、およそ1年前には物珍しい光景に感じていました。
しかし、最近では誰かしらがオンラインで打合せをしたり会議に参加したりしており、新しい日常の様相を呈しています。
この写真を撮影したのは、外部専門家も交えた研究報告を行っているときなのですが、後日ほかの人にも見てもらえるように、その様子をパソコン上で録画しています。そのため、少し大げさに相づちを打ったり、デスクライトを自分に向かって点灯したりして、表情が暗くならないように気を付けています。
オンラインでは画面越し、オフラインの日常ではマスク越し、と顔を合わせていても、なかなかお互いに表情が見えない状況だからこそ、少しでも明るい気持ちでいられるように心掛けたいです。(山本大輔)
2020/12/17
今年度からふるさとの川づくり事業が始まっている猿投町で、広沢川についての昔の思い出を語りあうワークショップを行いました。事業を研究所と共に進めている「猿投町まちづくり協議会」の呼びかけで13人がご参加くださいました。
まず、地域の方々から寄せられた昔の地図や写真を見ました。広沢川と籠川との合流点が今より下流であったことや、この地域の生業であった石粉の製造や、米をつくために用いられていた水車の様子などがわかりました。
研究所からは、約20年前に行われた広沢川の調査の際に川を写した写真や、当時70代、80代の方にお聞きした、川と暮らしにまつわるお話をご紹介しました。
休憩・換気を挟んで、後半は、参加された方々の川の思い出を付箋に書き、大きな地図や航空写真上に貼っていきました。水車がある風景や、水をせき止めて水遊びをしたこと、魚を捕りに友達と上流や下流へ行ったこと、ウナギがとれたことなどが話題になりました。地域の皆さんが広沢川と深いつながりがあったことがよく分かる時間でした。
集まった情報を猿投町の皆さんにお知らせするため、現在まとめ作業をしています。来年度は、川の未来を皆さんと一緒に描いていきます。
2020/12/03
毎年、晩秋から初冬にかけて行っている平戸橋下流から久澄橋までの外来生物オオカナダモの分布調査も今年で10年目を迎えました。
矢作川漁協の方々のアユ釣り船に乗せていただき船上からオオカナダモを目視して分布状況を把握していたのですが、船頭さんの高齢化が進み、2018年からはドローンを飛ばして、上空から撮影した動画を見ながら分布を確認する方法も併用しています。
写真のように、水位も低く水が澄んでいるので、上空からもオオカナダモの群落がはっきりと分かります。
今年は昨年に引き続き繁茂面積は狭く、特に籠川合流点より下流ではこの10年で最も狭い面積となりました。また、平井公園の前あたりも以前に比べ、面積が大きく減少しました。
一方、平戸大橋を挟んで上下流の右岸側は減少はしているものの、依然として面的な繁茂が見られました。
カモ類はドローンが迫ってくると慌てて飛び立ったり、水に潜ったりと、驚かせてしまいます。
あちらこちらで見かけたコイは、水面が波立つほどの高さで飛んでも悠々と泳いでいました。