2020/12/17
今年度からふるさとの川づくり事業が始まっている猿投町で、広沢川についての昔の思い出を語りあうワークショップを行いました。事業を研究所と共に進めている「猿投町まちづくり協議会」の呼びかけで13人がご参加くださいました。
まず、地域の方々から寄せられた昔の地図や写真を見ました。広沢川と籠川との合流点が今より下流であったことや、この地域の生業であった石粉の製造や、米をつくために用いられていた水車の様子などがわかりました。
研究所からは、約20年前に行われた広沢川の調査の際に川を写した写真や、当時70代、80代の方にお聞きした、川と暮らしにまつわるお話をご紹介しました。
休憩・換気を挟んで、後半は、参加された方々の川の思い出を付箋に書き、大きな地図や航空写真上に貼っていきました。水車がある風景や、水をせき止めて水遊びをしたこと、魚を捕りに友達と上流や下流へ行ったこと、ウナギがとれたことなどが話題になりました。地域の皆さんが広沢川と深いつながりがあったことがよく分かる時間でした。
集まった情報を猿投町の皆さんにお知らせするため、現在まとめ作業をしています。来年度は、川の未来を皆さんと一緒に描いていきます。
2020/12/03
毎年、晩秋から初冬にかけて行っている平戸橋下流から久澄橋までの外来生物オオカナダモの分布調査も今年で10年目を迎えました。
矢作川漁協の方々のアユ釣り船に乗せていただき船上からオオカナダモを目視して分布状況を把握していたのですが、船頭さんの高齢化が進み、2018年からはドローンを飛ばして、上空から撮影した動画を見ながら分布を確認する方法も併用しています。
写真のように、水位も低く水が澄んでいるので、上空からもオオカナダモの群落がはっきりと分かります。
今年は昨年に引き続き繁茂面積は狭く、特に籠川合流点より下流ではこの10年で最も狭い面積となりました。また、平井公園の前あたりも以前に比べ、面積が大きく減少しました。
一方、平戸大橋を挟んで上下流の右岸側は減少はしているものの、依然として面的な繁茂が見られました。
カモ類はドローンが迫ってくると慌てて飛び立ったり、水に潜ったりと、驚かせてしまいます。
あちらこちらで見かけたコイは、水面が波立つほどの高さで飛んでも悠々と泳いでいました。
2020/11/28
ヤブツバキは矢作川の河畔に多い樹木で、種子からは椿油を取ることができます
(矢作川の生き物 ヤブツバキ)。矢作川研究所は、矢作川の河川敷で草刈りや竹伐り、ごみ拾いなどの活動をしている水辺愛護会の活性化に向けた支援を行っており、活動の楽しみになる川辺の生物資源としての椿油の可能性に着目しています。
今年の2月に研究所で、百々水辺愛護会の今井菊平会長と下越戸水辺愛護会の白鳥満夫さんにお越し頂き、河畔で採取したヤブツバキの実を搾る体験をして頂きました。白鳥さんが搾った椿油を自治区の方に見せたところ、女性の方々が興味を示され、下越戸児童館で搾油体験会を開催する運びとなりました。講師には椿油の生産やワークショップを手がけている松原孝史さんをお招きし、下越戸水辺愛護会の会員と地域住民あわせて7人が参加しました(松原さん)。
参加者の皆さんは事前に集まって種子を採取し、各自持ち帰って天日干ししていました。その種子を重い棒で砕いて殻をとり、ミキサーにかけ、さらしの袋に入れて松原さんお手製の搾油機で搾りました。殻をとるのは時間がかかりますが、おしゃべりをしながらの楽しそうな作業でした。搾油は強い圧力が必要なため、搾油器を支える人、バーを回して圧力をかける人が協力して行いました。圧搾されてゆっくり染み出してきた、うっすら黄色い油をスポイトで吸って容器に移しました。2時間ほどで25mlの容器7本分の油が搾れました。
この体験会に参加して、身近に自然の恵みがあることに気付いた、初めての体験でワクワクした、手搾りでできるなんてすごい、との声も聞かれました。その夜さっそく椿油をお肌の手入れに使った方もいたそうです。
古くから美容に用いられてきた椿油は、これまで水辺愛護活動への参加が少なかった女性が川辺に関心を持つきっかけになったようです。今後も河畔の自然と水辺愛護活動について広報するツールとして、ヤブツバキの活用を進めていければと思います。
2020/11/06
豊田市足助地区にある「めぇープルファーム」では除草のためのヤギレンタルを行っています。河畔林を整備する「水辺愛護会」でも活用できないかということで、鈴木光明会長、鈴木康生事務局長、貞島容子さんにお話を伺いました。
めぇープルファームは山里の景観を守り、住民が生き物とふれあう機会を作ることを目的に2016年に発足しました。現在ファームで5頭、会員宅に2頭のヤギが飼われており、除草のためには一ヶ月単位で貸し出しをしています。
冬の間に予め草を刈っておき、春先に一ヶ月弱、夏と秋にそれぞれ一ヶ月弱,ヤギを放つとよいそうです。地面にロープを這わせてそこからリードでヤギを繋げば、ロープが絡まることはありません。日中は日陰が、雨天時や夜は屋根がある場所があれば大丈夫ですが、「ほったらかしだとヤギがいじける」そうで、「一日一回は顔を見せた方がいいかな」とのことでした。二年目には草丈が低くおさえられ、景観が変わってくるそうです。ヤギがいる風景が、川辺に住民を呼ぶきっかけにもなればいいなと思いました。
2020/10/10
矢作川の河畔林整備を行っている古鼡水辺公園愛護会と矢作川研究所で、「管理・活動計画図」ワークショップを開催しました。古鼡水辺公園愛護会は今から27年前、1993(平成5)年に発足した、豊田市で初めての水辺愛護会です。「管理・活動計画図」の作成は昨年度から始まった事業で活動のこれまでをふりかえり、成果と課題を明らかにしたうえで、将来像を描き、それを文章や図面資料として会員や地域住民で共有しようというものです。今回は第一回のワークショップで活動年表を作るとともに、活動地の植物と活用について話し合われました。
まず、これまでの30年近い活動をふりかえって年表をつくりました。高度経済成長期以降、川と人の関わりが疎遠になり、活動前は川際までぎっしり木や竹が生い茂って人を寄せ付けなかった活動地ですが、竹を切ったことですっかり明るくなり、それまで成長しにくかった木が枝を広げました。会員が持参した昔の写真からは、太陽光が差し込む明るい活動地の様子がわかりました。しかし、現在は木が大きく育ったために日陰が多い状態になっています。また、活動地には若い木があまりなく、世代交代が難しい林になっているため、今後はこれらの対策を練っていく予定です。
古鼡水辺公園は地区内外の多くの人が利用し、「矢作川筏下り大会」の出発点や矢作川「川会議」の会場としても人々の思い出に残る光景が重ねられてきた場所でしたが、一方で課題もありました。地区外からの利用者のマナー(大音量で音楽をかける、バーベキューごみを置いていくなど)が長く問題となっていたのです。現在、活動地は地域住民の憩いの場として位置付けられています。
今後は水辺愛護会の皆さんと研究所で現地を見て植生管理について考えたうえでもう一度ワークショップを行い、将来像を描いていく予定です。