No.168 ヒメトビケラの一種

顕微鏡下で矢作川の水中に生えているコケ植物を同定していると、しばしば写真のトビケラに出会います。おそらく、コケ植物群落内を生息場としているのでしょう。小さな体につぶらな瞳、とても愛らしいですね。ヒメトビケラ属は中流の流れの緩やかな場所に生息しているそうです。サイズが小さいのでヒメが名前に入っているのでしょう。横の長方形をしたものは、トビケラの巣、つまりお家です。丹精込めて造られたであろうこの巣もなんとも可愛らしい。ヒメトビケラに詳しい伊藤富子さんの論文では、巣作りは4、5齢に成長したころにはじめ、自分の脚で糸状藻類やデトリタスを掻き寄せて巣にするとあります。1時間ぐらいの作業で自分の体半分を覆い、半日もすれば巣の形が完成するそうです。可愛いだけでなく、仕事の早い働き者でもあるようです。ちなみに、この巣の素材は糸状藍藻です。ヒメトビケラの日々の暮らしに思いを馳せると、矢作川の水中の世界も、まだまだ知られていないことだらけだろうな、とつくづく思います。(内田朝子)

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