河辺と水源の調査

よりよい川辺管理のあり方を提案しています
Suggesting desirable management of riparian vegetation
生き物を調べることから始めました
It began with an understanding of local biota

 川辺の林や草地は護岸や水質の保全に役立つだけでなく、水中と陸上の野生生物の生息場所として、地域には景観資源として大切です。矢作川が豊田市内を流れる区間で陸上の動植物の調査をおこなったところ、オシドリ・ハタネズミ・シデコブシなどの稀少種を含む多様な生物の存在が明らかになりました。一方で、護岸(水防林)として植えられたはずの竹が管理されなくなったことで、鬱蒼とした竹林が広がっていることがわかりました。これは水量の安定によって流路が固定され、河川敷に土砂の堆積が進み、環境が安定したためと考えられます。また市街地では、広場・運動場など多目的に河川敷を利用するため、高い頻度で刈り取られる芝生や裸地が広がり、生物相が単純化した植生が広がっていることも明らかになりました。
 そこでよりよい野生生物の生息空間と河川景観の回復をめざして、ニレ科(エノキ・ムクノキ・ケヤキなど)やブナ科(コナラ・アベマキなど)の落葉広葉樹林、草地、砂地、水たまりなどの止水環境の保全、川の中の倒木や落葉落枝を含んだ植物の保護、1㎡あたり2本の本数密度を目安とした竹林の間伐、草地の昆虫類が一掃されないように刈り残すトラ刈り方式の草刈りなどを提案しました。こうした提案は豊田市による河川整備や愛護会の川辺管理に生かされています。



まちの中の水と緑のネットワークづくりをめざしています
Building an ecological network in our town
矢作川の自然を、まちにとりこむための提案をしました
Introducing the nature of the Yahagi River into the town


 市街地の川や自然緑地は大気の浄化や防音・防風の効果を持ち、ヒートアイランド現象を抑制するだけでなく、住民が心を癒し、野生生物とふれあえる場となっています。豊田市の中心市街地で矢作川を生かしたまちづくりを進めるため、自然環境の現状と歴史、市民意識の調査をおこないました。
 豊田市中心部の地形は矢作川の氾濫により形成された低地と、それを囲む台地からできており、全域で市街化が進んでいますが、小規模な自然緑地が矢作川と枝下用水・根川用水沿いに分布しています。こうした緑地の多くに、里山に多いコナラなどの「どんぐりの木」を主体とした広葉樹林が社寺林などとして残されています。調査地ではクワガタ類など森林性の昆虫やチョウなど花の多い草地を好む昆虫、魚を餌とするササゴイやフクロウの仲間のアオバズクのような鳥類、ドジョウやメダカといった魚類など、予想を超える多様な野生生物が見つかりました。豊田市で矢作川を生かしたまちづくりを進めるために、現在残されている自然林や草地を参考にした緑化と都市河川の水質浄化と自然な地形の回復が必要と判断し、いくつかの具体的なまちづくりの提案をおこないました。



川の水をはぐくむ水源林のあり方を調べています
Study on function of water conservation forest
川を守る水源林
Artificial forest in water resource area


 源流域の森林、水源林は土壌に雨水を貯えてからゆっくり流出させることで川の流量をならし、大雨の後に鉄砲水や濁水が発生するのを抑えたり、はりめぐらされた植物の根で土砂の流出を抑えています。水源林の土の表層にどれだけの水が浸み込むのか(浸透能)を調べたところ、常緑針葉樹と広葉樹の混交林では、広葉樹の比率が高くなるほど浸透能が高くなることが分かりました。一方、他の樹木の混交率が低い常緑針葉樹の人工林では、他種の樹木の混交率に関わらず浸透能が低いことがわかりました。
 矢作川流域の森林率は約7割ですが、森林のほぼ半分がヒノキやスギの人工林で、その多くは間伐されていないため本数密度が高く、土の表層を守る落ち葉を敷き詰める広葉樹や、草や低木の被覆率が低いのが現状です。この状況を改善することが、矢作川流域の水源林の最大の課題と言えるでしょう。