矢作川を知ろう 【季刊誌RIOから】

イモハチポン【矢作川のことば】

 矢作川と人との関わりについて調べていたところ、「イモハチポン※」というおもしろい言葉に出会いました。イモ=自然薯、ハチ=クロスズメバチなどの蜂の子、最後の「ポン」は「ぽんつく=魚とり」のポン。獣や野鳥などの狩猟(鉄砲も「ポン」となる)、キノコや山菜採りを含め、生業ではないけれども、その収穫がお腹を満たし、いくらかの収入にもつながるこれら「遊び仕事」に精を出す人々のことを「イモハチポン」と呼ぶそうです。
 本気で自然に向きあい、恵みを受け取るイモハチポンの人々。彼らがしてきたことを見つめなおすことが、河畔林整備をしている団体の励みになり、川と人との距離を再び近づけることになるのでは…。詳しい方にお話を聴かせていただきたいと思っています。
(吉橋久美子)



※『環境民俗学―新しいフィールド学へ』 p202「イモハチポン」古川彰(山泰幸、川田牧人、古川彰編 昭和堂)
 『月刊矢作川1979年10月号(第31号)』 p18「クマンバチ」新見幾男



王滝渓谷【矢作川の魅力発見!】

 矢作川最大の支流、巴川に流れ込む仁王川流域には王滝渓谷と呼ばれる場所があります。仁王川は旧豊田市内で最高峰となる焙烙山や六所山に源を発し、流路延長6.5km、流域面積13.6km2の小河川で、王滝渓谷はその下流部1.8kmに位置し、急落差で流れ下っています。写真は6月1日の朝に撮影しましたが、渓谷沿いに足を踏み入れると、もののけ姫の世界を彷彿とさせるような苔むした奇岩や怪石が見られ、ひんやりとした空気が漂っていました。渓谷の上流部には砂防堰堤によってせき止められた王滝湖があり、当日は貯水量がかなり減少していましたが、流れ込みや湖内にはコイに加えて、カワムツ、カマツカなどたくさんの魚が泳いでいました。この辺りは夏になると表紙の写真のように多くの人々が訪れ、子ども達は川で泳いだり、魚捕りをしたりして賑わっています。秋には紅葉も美しく、四季折々の景色を堪能できます。渓谷の中ほどには「八大竜王宮」と刻まれた巨岩があり、その辺りは蛇淵と呼ばれています。その昔、仁王川流域で毎年のように鉄砲水や山崩れを起こしていた白い大蛇が、美人の娘さんとなって自らの罪を悔いて現れたという言い伝えが残っているそうです。
 渓谷沿いには散策路が整備され、周辺には園地や展望台などもあり、水遊び、巨石巡り、ハイキング、野鳥や植物観察など様々に楽しめます。これからの季節、涼を求めてぜひ足を運んでみて下さい!



川と流域を学ぼう!本の紹介


ダムと環境の科学 III エコトーンと環境創出
谷田一三・江崎保男・一柳英隆 編
京都大学学術出版会
4,860円
ISBN: 978-4876983803
352pp, 2014/12/1

 みなさんはダム湖にどのような印象を持たれているでしょうか?自然の湖と同じような朝靄がかかる幻想的な風景や鏡のような湖面にカルガモやオシドリが浮かぶ姿など静的なイメージがわく方も多いかと思います。実際のダム湖は河川という流水環境から湖という止水環境へ大きく変化し、加えて水需要に伴う人為的な水位調節により、日々、陸域と水域を行ったり来たりする動的な場所なのです。
 本書ではこの水位変動帯を新たに創出されたエコトーン(移行帯、環境が連続的に変化する場)ととらえ、物理環境、生物生息空間、物質循環の観点から水位変動帯についての研究成果が紹介されています。ダム湖岸やダム湖上流端の水位変動帯は動植物にとって過酷な場所でありながら、豊かで、複雑な生態系が築かれている事実を随所で解き明かしています。日本全国の様々なダム湖の事例が紹介されていますので、矢作川を始めとするダムありきの多くの河川において、河川環境の再生を考える上で手がかりになる書だと思います。
 さらに近年、減少の一途をたどっている湿地の代替として、ダム湖岸の陸域─水域エコトーンが注目されています。ダム湖エコトーンの研究が進むことで、このような失われつつある生態系の回復につながることも期待します。(白金晶子)