季刊誌RIOから 【川と流域を学ぼう】

川と流域を学ぼう!本の紹介


ダムと環境の科学 III エコトーンと環境創出
谷田一三・江崎保男・一柳英隆 編
京都大学学術出版会
4,860円
ISBN: 978-4876983803
352pp, 2014/12/1

 みなさんはダム湖にどのような印象を持たれているでしょうか?自然の湖と同じような朝靄がかかる幻想的な風景や鏡のような湖面にカルガモやオシドリが浮かぶ姿など静的なイメージがわく方も多いかと思います。実際のダム湖は河川という流水環境から湖という止水環境へ大きく変化し、加えて水需要に伴う人為的な水位調節により、日々、陸域と水域を行ったり来たりする動的な場所なのです。
 本書ではこの水位変動帯を新たに創出されたエコトーン(移行帯、環境が連続的に変化する場)ととらえ、物理環境、生物生息空間、物質循環の観点から水位変動帯についての研究成果が紹介されています。ダム湖岸やダム湖上流端の水位変動帯は動植物にとって過酷な場所でありながら、豊かで、複雑な生態系が築かれている事実を随所で解き明かしています。日本全国の様々なダム湖の事例が紹介されていますので、矢作川を始めとするダムありきの多くの河川において、河川環境の再生を考える上で手がかりになる書だと思います。
 さらに近年、減少の一途をたどっている湿地の代替として、ダム湖岸の陸域─水域エコトーンが注目されています。ダム湖エコトーンの研究が進むことで、このような失われつつある生態系の回復につながることも期待します。(白金晶子)