矢作川を知ろう 【矢作川と人】

ヤギが草刈りをお手伝い

めぇープルファーム:鈴木光明さん(会長)(1952年生まれ)・鈴木康生さん(事務局長)(1970年生まれ)

 豊田市で河畔林を整備する住民団体「水辺愛護会」の重要な活動が草刈りです。しかし、どこの愛護会でも人手不足が課題であるとお聞きします。そんななか、豊田市新盛町(足助地区)にある「めぇープルファーム」がヤギによる除草事業を行っているということで、お話を伺いました。ヤギ除草はコストの削減を主な目的として既に各地の河川堤防などで行われています(井上・宝藤,2020)。
(聴き取り:洲崎燈子・吉橋久美子 2020年11月6日 「めぇープルファーム」にて)



写真:左から、鈴木康生事務局長、鈴木光明会長、会員の貞島容子さん

 めぇープルファームは耕作放棄地が増える山里の景観をヤギとともに守ること、住民とヤギのふれあいの場をつくることを目的に2016年に発足しました。聴き取り当時7頭(2021年2月には子ヤギが生まれ9頭)のヤギが飼育され、除草では一か月単位、イベントでは一日単位でレンタルできます。
 ファームを訪れると、丘の上で草を食んでいた放し飼いのヤギたちが走り寄ってきました。とてもなついています。敷地の一角にはめぇープルファームの会員たちが建てた丸太組みの「ヤギ小屋」があります。





<ファームの変化>
鈴木康生:始める前は、ここは雑木やら竹やらがいっぱいだった。それをまず切り倒したじゃんね。それからヤギが入ってこの状態(草丈が低く抑えられている)。新しく雑木が生えてきたりとかはない。生えれば食べる、生えれば食べるで。
鈴木光明:ヤダケがずーっと生えてたんだけど、育つ暇がない。タケノコも食うもんでね。

<ヤギをレンタルしたい場合は>
光明:冬に荒れたところを刈っておいて、春先に一か月ぐらい一回ヤギにきれいに食べさせて、夏と秋にも一か月ぐらい、食べさせるといい。つまんで千切れるぐらいの柔らかいのじゃないと食べないんで。

ヤギの送り迎えは自分たちができれば一番いいんだけど、人員が今いないので、軽トラで迎えに来ていただけると助かる。

逃げ出さないようにするには、杭でつなぐやり方があるけど、地面にロープ張って、リード付けて移動できるようにしていただけると一番いい(図)。斜面でも、縦でもいい。あとは柵で囲うという手もあるけど大変だもんね。



図:地面に張ったロープとリードでヤギをつなぐ方法。

日差しと、夜露がしのげればほとんど大丈夫です。だけどあんまりほったらかしとくといじけるんで。無視されたと(笑)。だから一日に一回は顔見せたほうがいいかなと(笑)。杭の場合は日に最低2回ぐらい見てもらわんと、つくなっとる※1ことがある。あと太い草が生えとると草を巻いて動けなくなる。


<ヤギもそれぞれ>
康生:ヤギはすぐ慣れる。でも最初に会長のところに行った一頭が慣れなくてね。
光明:もう今は大丈夫。いやあ、それぞれね、個性がある。一番ビビリだったやつがね、今一番冒険心がある。あいつが先頭に立ってどこへでも行っちゃう(笑)。

<2年目には成果が>
光明:昔はこの辺でもヤギ飼っとったよ。お乳と草刈りの両方で。ヤギを入れればね、1年目は厳しいかもしれんけど2年目になれば、もうこのファームみたいになるもんね。
洲崎:(食べられていない草がわずかに残っているのを見て)おもしろいですね、チカラシバだけ残ってて。嫌いなんですかね。
光明:それね、食べないんだわ。葉の細いものと茎の硬いものはどうしても残すね。花の咲く前なら食べちゃう。秋にここまで伸びると固くて食い千切れないんだよね。





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めぇープルファームの風景はヤギの仕事ぶりがよく分かるものでした。豊田市藤岡町の緑が丘西公園で2021年4月にめぇープルファームのヤギたちによる除草の実証実験が行われる予定だそうです※2。

井上勇樹・宝藤勝彦(2020)ヤギを活用した堤防植生管理の効果 -BACIデザインに基づく現場除草実験・結果分析から―.河川総合研究所報告、25:21-33.
※1.つくなっとる…「つくなる」。ここでは、杭にリードが絡まってヤギが身動き取れなくなってしまっている状況。
※2.矢作新報2021年2月26日