矢作川を知ろう 【矢作川と人】

川辺の恵みを活かす~水辺愛護会活動地の幼竹を食べる試み~

梅村守久さん、澤田洋子さん、月山正己さん(大河原水辺愛護会)
梅村康子さん(大河原町在住)(足助地区)

 矢作川研究所は、市内の川辺を整備する「水辺愛護会」(22団体)の活動を、川辺環境を改善し、住民が川とふれあう場をつくる大切な活動として支援しています。その一環として活動地の自然の恵みを楽しもうと呼びかけています。

 2021年度の取り組みとして、多くの活動地に生えており、間伐対象となっているマダケの幼竹を使ったメンマ作りを大河原水辺愛護会(以下「水辺愛護会」)に呼びかけて、ご快諾いただきました。
 無事にメンマが完成してから約半年後、メンマ作りに携わった方々にお話を伺いました。
(聞き取り:吉橋久美子 2022年1月19日@大河原ふるさと館)



【メンマ作りについて】
 2021年6月9日、朝8時に水辺愛護会会員と地域の方、他地区でモウソウチクからメンマを作っている方、研究所員の計8人が活動地(※1) に集合しました。50~100cmに育ったマダケの幼竹を鎌で切り、皮をはぎ、節などの固い部分を除けて茹でました。食べてみると、アスパラガスやブロッコリーの茎のような食感でした。
 試行ということで、茹でた竹約8キロを三つの樽に分けて、それぞれ竹の重さの20%、25%、30%の塩をまぶし、呼び水を入れ、重石をしました。「メンマにしないで茹でるだけでもいいね」「(間伐のため)倒すだけだった竹を食べられておもしろかった」という感想がありました。
 その後、樽は澤田さんのお宅の蔵で預かっていただきました。澤田さんが度々樽をチェックして、メンマを作った方々にも声をかけて見てもらい、約一ヶ月後に竹を樽から引き上げ、天日干しや扇風機によって一週間弱乾かして完成となりました。


※1:豊田市大河原町の矢作川沿いにある活動地は、かつて竹を扱う業者によって整備された竹林で、子どもたちの遊び場でもあったそうです。対岸にあるお店まで泳いでアイスを買いにいったという思い出も、たびたびお聞きしました。しかし、川と人の暮らしが遠のく「川ばなれ」の時代を経て、川辺には竹が密生し、人が川辺に行けない状態となっていました。そこで、良い景観を取り戻そうと、大河原町の住民により結成された水辺愛護会が竹を伐り、道を均し、整備をしてこられました。






<塩漬けは「心配しいしい」だったが労力はそれほどではなかった>

吉橋:去年ここ(ふるさと館)でメンマを塩漬けしてから、澤田さんのお蔵で管理していただきましたね。
梅村(康):一人にお願いして申し訳なかったね。
澤田:申し訳ないことない。自分は楽しみながらやったので。ただ、心配しいしいだったけどね。せっかくみんなで刈った竹がパアになっちゃったらいかんという思いで。樽に黒いのが浮いてきたとか、重石が白っぽくなってきたとか、水の色が変わってきたとか、そのたびにこう、匂いを嗅いで。でもなんかあったときにはすぐ研究所に連絡したりとかして聞けたから、まあ、安心してできた。
(注:これらの状況に対して、浮いてきたものを取り除いたり、重石を洗ったり、食用アルコールで消毒したりした。)



塩漬け中の澤田さんの記録(澤田さん撮影)


天日干しの様子(澤田さん撮影)


<ちょっとこわいところもあるが、おいしい>

梅村(康):メンマ食べたら、こわかった(※2)んですよ。
澤田 :うんうん、こわいのはね、やっぱり竹が真っ青、みたいな部分。次回やろうと思ったら最初から除けたほうがいい。
梅村(守):マダケ使うなら穂先の方にして、緑色のところはやめた方がいい(笑)。
月山 :あれはちょっと無理だね。
吉橋:ささゆりの会 (※3)で地域の方に食べてもらって「おいしい」という感想をもらったそうですね。
澤田:お世辞で言ってもらったかも(笑)。
梅村(康):おいしいはおいしかったよ。ちょっとこわいのはしょうがないね。

※2:固い
※3:主に65歳以上の大河原町の住民により構成され、会食などで親睦を図る


研究員がいただき、麺つゆで味付けしたメンマ


<竹の性質と手入れ>

梅村(守):竹を伐採するじゃん。春から夏にかけて。タケノコ出てくるとやっかいだから。どんどんどんどん伐っちゃうんだけど、あれやると竹の性質がわかるよね。竹って、最初太いのが出てきて、それ伐るとだんだん細くなってくるよ。で最後、季節外れて、夏過ぎにピロンとしたのが出てくる。これ全部、あいつらが生きてくためにやってるんだけど。竹の性質みたいなものはこうやって遊んどるとよくわかってくるよ。
吉橋 :今、研究所で竹林整備のガイドブックを作っているんですけど、1年生から4年生までの竹をちゃんと管理しておけば、次にいい竹が出るっていうやり方もあるようで。
梅村(守):昔の竹やぶは竹屋さんがそういう管理をしてた。今年は何年ものを伐る、って、4年物の何寸、っていう直径の太さまで決めて伐っていく。次の年またいい竹が生えるっていうことをしていたんだけど、今やらないからね。
梅村(康):竹屋さんがいらんもんね(笑)。困ったもんだね(笑)。プラスチックなんかでやらんで竹でやってくれたらいいのにねえ。


<地元で手に入るもので、みんなでおもしろいことを>

梅村(守):タケノコ採るところから、漬けるところ、干すところ、そんなに大変な仕事ではない。ただ、それが楽しめるかどうかっちゅう話だね。
澤田:みんなでやるのはおもしろくない?
月山:みんなでワイワイガヤガヤは非常にいいと思うよ。行事が無くなったからね。集まって楽しいことやるって、いいとは思うけど。
梅村(守):ただただ愛護会で労働してるだけじゃばかばかしいし、嫌になっちゃうもんで、なにか、おもしろいことをやってみたいね。
梅村(康):地元で手に入るものでやれるものがあれば、活用するっていうのはいいことだと思うけどね。


***
 メンマ作りにご参加くださった皆さんのおかげで、おいしいメンマができました。また、竹の青い部分は除く、塩漬けが負担になるようであれば茹でるだけで完成とする、塩分は30%がよさそうだ、などの改善点もわかりました。研究所では、今回の結果を活かし、他の水辺愛護会でもマダケの幼竹利用を楽しめるよう、引き続き取り組みを進めます。

梅村守久さん(72歳)、澤田洋子さん(64歳)、月山正己さん(71歳)、梅村康子さん(79歳)
                                  (年齢は取材当時)