矢作川研究所日記

2023/11/10

水辺愛護会の現地研修会を行いました

 豊田市河川課と矢作川研究所は、川辺の保全活動を行ってくださっている水辺愛護会の皆さんの知識向上をはかるための現地研修会を年1回行っています。今年度はあいにくの雨天となってしまいましたが、碧南海浜水族館と、初音川ビオトープを見学してきました。

 碧南海浜水族館は三河湾や矢作川のほか、日本沿岸の魚類を中心に約260種類の生き物を展示しています。また、カワバタモロコやウシモツゴなど、絶滅のおそれがある日本産希少淡水魚の調査や保護、展示も行っています。矢作川の上流から下流にかけての環境がジオラマで再現されており、愛護活動をしている水辺の先にある川の中にどんな生き物がいるかを学ぶことができました。バックヤードツアーでは、大水槽を上から見たり、餌づくりの様子や、大きな冷凍庫に保管された標本を見せて頂くことができました。4年前に完成した屋外のビオトープでは、生息する動植物を紹介する看板などをボランティアの方が工夫をこらして作っていたのが印象的でした。


碧南海浜水族館のビオトープ


 初音川ビオトープでは副会長さんが、この日のために特別に掲示板を立てて活動紹介をして下さいました。参加者の皆さんは、企業ボランティアも巻き込んで実施している外来種の駆除や、きめ細かく計画を立てて植生管理を行っている話に耳を傾けておられました。往復のバスの中では「百々水辺愛護会の養蜂を見学したい」といった声が出るなど、今年新しく立ち上がった会も含め、愛護会同士の交流が進んだ手ごたえも感じることができました。(洲崎燈子)



2023/09/29

アユと水生昆虫の調査をしました

友釣りの時期も終わりに近づいてきましたが、矢作川中流ではまだまだアユのハミアトはたくさん見られ、潜水ではアユの姿も見られました。

ハミアトはアユが石に付いた付着藻類を食べる時に付く痕跡なのですが、魚類以外にも多くの水生昆虫が付着藻類を食べます。中でもヤマトビケラ類はアユと餌を取り合うだけでなく、ヤマトビケラ類がたくさんいる川底ではアユが減っているとの報告もあります。近年、矢作川中流の石の上にもたくさんのヤマトビケラ類が見られるようになり、釣り人からもヤマトビケラ類がたくさんいる時期にはアユが釣れないとの話しをお聞きしました。


アユ


アユのハミアト


ヤマトビケラ類は細かい砂粒を利用してドーム型の巣を作り、その中に入って生活します。幼虫はその巣を背負いながら石の上の付着藻類を食べて暮らし、蛹になると一カ所に集まって固着することが多く、その後成虫となり陸上へ飛び立ちます。


ヤマトビケラ類の巣と幼虫


今回はこのアユとヤマトビケラ類の関係を調べるため、平成記念橋周辺で調査を行いました。ヤマトビケラ類は石の表面だけでなく、側面や下面にも生息しており、多い時は一つの石に数十個体も確認されました。


川底を歩くと,砂や有機物などが舞うため、餌を食べに魚類が集まってきます。調査の際にはアユに加え、スゴモロコ属、オイカワ、アカザ、カマツカ属、カワヨシノボリなど多くの魚類が見られました。


スゴモロコ属やオイカワ


カワヨシノボリ



2023/07/20

矢作川水源の森づくり合同研修会に参加しました

矢作川流域の約7割は森林に覆われており、そのおよそ半分の面積を人工林が占めています。スギやヒノキといった、水消費量が多い常緑針葉樹で構成される人工林は、適正な間伐が行われないと、水源かん養機能や土砂災害抑制機能が劣化することが指摘されています。
人工林の間伐が進まない原因の一つが、林業現場技術者の減少であり、背景には林業の労災発生率の高さがあります。労働者千人あたりの死傷者数は全産業平均が2.7なのに対し、林業は24.7と、9倍以上になっています(2021年)。

林業の現場で労災を減らすには、従来の「親方の背中を見て学べ」式ではない、系統立った技術教育が必要です。豊田森林組合は2021年度から新入職員に、科学的で安全な林業技術を学ばせることに力を入れてきました。その技術教育を含めた人材育成方法を矢作川流域内で広めるため、根羽村森林組合(長野県根羽村)、恵南森林組合(岐阜県恵那市)、岡崎森林組合(岡崎市)と合同で、初めての「矢作川水源の森づくり合同研修会」が開催されました(主催:矢作川流域圏懇談会山部会)。

午前中は座学で、豊田森林組合が人材育成のため、豊田市、岐阜県立森林文化アカデミーとの連携協定を締結したことや、人材育成にあたる総合職の枠を7人分設けたことが紹介されました。この7人は、林業技術者のリーダーを育てるトレーナーズトレーナーの第一人者の元で学び、新入職員の指導にあたっています。
午後は、林業の現場を再現した訓練ができる伐倒練習機(MTW-01)を使って、各森林組合の職員が日頃の伐倒の技を披露し、豊田森林組合の担当職員が、安全で確実な伐倒を行うための詳細な助言をしました。

この研修会では、立ち位置や体勢といった体の使い方、正しい道具の使い方を身に付けるのは決してむずかしいことではなく、それらに習熟することで、林業の現場の安全性が確実に高められることが共有されたと思います。参加した豊田市森林課長の、「森づくりには流域単位の連携が必要。この流域が森づくりの視点で日本一注目されるようになるといい」という言葉に共感しました。(洲崎燈子)





2023/06/07

市役所南庁舎2階で標本などの展示をしています


6月7日(水)~6月27日(火)の期間限定で、外来生物の標本、はく製、写真などを展示しています。場所が、市役所の南庁舎2階のため、土日を除く平日の午前8時30分から午後5時15分までの間に見ていただくことができます。
 この展示は、外来生物法の改正により6月1日からアカミミガメとアメリカザリガニが特定外来生物になったことを啓発する目的で行います。標本などの展示資料は、(仮称)豊田市博物館、豊田市環境政策課、矢作川研究所が部局の垣根を越えて準備をしました。
 この期間中に、市役所に御用の方や近くにお越しの方は、ぜひご覧ください。





2023/04/11

河川敷のたまりに取り残されたフナ類とコイ類を見つけました

 4月11日、矢作川の河川敷にできた「たまり」で、体長35cm前後のフナ類31匹(写真左)と、体長65cm前後のコイ類4匹が泳ぎ回っているのを見つけました。
 フナ類やコイ類は春を迎えると、ヨシなどの植物が生えた岸辺の浅瀬で産卵することが知られています。そこで「たまり」に沈んでいた落葉落枝をよく観察すると、おびただしい数の卵が付着しているのを確認することができました(写真右)。この場所は冬には水が全く無い窪地だったのですが、4月7-8日の雨で増水・冠水したタイミングでフナ類やコイ類が入り込み、産卵したと考えられます。その後の水位の低下で「たまり」に取り残されてしまったようでした。
 「たまり」は普段、矢作川本流の水域から切り離された池のような環境です。水位の低下によって干上がってしまうこともあれば、増水によって年に数回ほど本流と繋がることもあります。このような環境の変化の中で、成魚や卵たちは無事に生き延びることができるのか、観察してみたいと思います。(浜崎健児)


写真左:たまりの浅瀬で休むフナ類。写真右:落葉や落枝に付着した卵(直径1.5mm前後)。