古鼡プロジェクト

 本流に7つのダムがある矢作川には、ダム直下での流量の減少、氾濫の減少と規模の縮小、土砂が流れにくいためにおきる川底の低下や固化といった問題があります。そのためカワシオグサのような特定の生物が大発生し、魚類の生息環境を悪化させるような川の生態系のバランスを崩す事態につながっています。
 矢作川が抱える問題を総合的に研究するため、生物学、工学、社会学の研究者たちが地元住民、行政、民間企業との協働により、中流のダム直下の古鼡水辺公園周辺を主な調査地として、通称「古鼡プロジェクト」をおこないました。
 高度経済成長期以降、水利用の集約化や生活様式の変化、川の横断面の形や景観の変化などが互いに作用しあい、矢作川は川辺の人々から物理的にも精神的にも遠ざかり、川の生物も変わってきました。そこで川と人とのつながりを再生するため、アユ釣りが生業の一部として成立していた1950年代頃までの矢作川をひとつのゴールイメージとして設定しました。川の内外にすむ生物や川と人との関係の中で失われてきたものの内で、何をどう取り戻すのか、その復元作業と竹林や樹林で活動するタヌキなどの川にすむ生物の保全は両立できるのかを見きわめ、川といかにつきあっていくのかを考え、川づくりをしていくことが大切です。


1950年代(上)と2000年代(下)の古鼡水辺公園周辺の景観。流路が下がる一方で河川敷への土砂の堆積が進み、竹林と樹林が広がってきている。


古鼡プロジェクトの概要