今年度のシンポジウムは「矢作川の“水”を考える-良い水のものさしとは-」というテーマで2月14日(土)にJAあいち豊田ふれあいホールで行われました。基調講演では環境ジャーナリストの保屋野初子氏よりEU主導で行われている国境を越えた最新の河川再生の事例について、「緑のインフラ(自然が持つ多面的機能を活用したインフラ)」をキーワードにご紹介頂きました。続いて矢作川などの水質の変遷、現在の矢作川の水環境について、そこから見えてきたダムや取水、土地利用の影響による矢作川の課題を矢作川研究所の白金が報告しました。
パネルディスカッションでは保屋野氏に加え、梅村錞二氏(豊田市自然愛護協会顧問)より逢妻女川における昭和35年から現在までの魚類相の変化について、BODが5 mg/l以下で魚類相が回復してきたこと、鈴木輝明氏(名城大学特任教授)からは国内産のアサリの6割が三河湾で生産されており、その生息環境の保全には矢作川の水量、水質、土砂供給が非常に重要であること、コーディネーターの谷田一三氏(矢作川研究所顧問)からは水生昆虫のトビケラが水質浄化の一翼を担っており、緑のインフラとして機能していることをご紹介頂きました。最後に矢作川、三河湾にとっての「水のものさし(環境指標)」として、水質に加えて水量、土砂移動、生物、河川景観(リバースケープ)など立体的な指標が必要であること、その指標づくりを流域住民との協働で行ってみてはどうかという提案もなされました。矢作川に生息する生物、そしてその恵みを頂く私たちにとって欠かせない矢作川の“水”について、広範なアプローチで議論され、考えることができたシンポジウムでした。