【矢作川を知ろう】

「地域ひっくるめて」の竹林再生を目指すメンマづくり

このページは、矢作川の流域に関わりのある方にお話を伺い、「語られたままの言葉」をできるだけ生かして、川と人とのつながりをご紹介することを目的として作成しています。

山岡真人(まこと)さん(1976年生まれ)(「竹々木々(ちくちくもくもく)」(アドバイザー))
野田侑希さん(1986年生まれ)(同 共同代表) 

 近年、山間部や川辺に見られる荒廃した竹林をなんとか生かそうという動きが各地で起こっています。豊田市旭地区でも、「地域を担う人材創造拠点」として立ち上げられた施設「つくラッセル 」(注1)のグループ「バンブーチャイルド」が2018年に竹林再生を目指してメンマづくりを始めました。
 そのメンマづくりの中心人物だったのが旭で生まれ、矢作川を遊び場として育ち、今も投網(網を投げて、潜って押さえる)でアユをとっては家族にふるまう山岡さんです。高校時代やご結婚当初の一時期以外はずっと旭に住んでおられます。
 今年のメンマづくりの中心となるのは野田さんです。「竹好き」で知多半島の竹林整備に携わっておられましたが「山に住みたい」と旭に移住。「日用品のほとんどは竹でできる。ずっと使えないからこそまた竹は伐られ、循環していく」と、竹の可能性を追求し、竹細工を習い、竹行灯ワークショップなどを企画しています。
 「竹々木々」は「バンブーチャイルド」が発展したもので、竹だけでなく旭の地域材をもっと利用しようと2019年4月1日に発足。その翌日にお話を伺いました。
(聴き取り:洲崎燈子、吉橋久美子 2019年4月2日 「つくラッセル」にて)





<タイミングが重なってメンマづくりがはじまった>

山岡:4年ぐらい前に、なんかふと、竹でメンマ作れんのかなあと思ったことがあって。自分そんなラーメン好きじゃないけど(笑)元々料理人でいろいろ作るの好きなんで。自分とこも山持っとるんで竹はね、ずっとあったんで、なんとかできないかなあと。
(先進事例である)天竜のメンマづくりのことは、雑誌(注2)で見てて 。で、矢作川研究所のシンポジウム(上記のメンマづくりを企画し、雑誌記事で紹介された曽根原宗夫氏の講演が行われた)に参加した「本気部」(注3) (地域情報誌の企画)の仲間に誘われて、去年の4月に天竜に視察に行って。で、「つくラッセル」のグループでやったら面白いんじゃない?ということで、いろんなタイミングが重なって始まったんです。愛知学泉大学の学生さんや愛知県(行政)の人も手伝ってくれました。


<メンマづくり、試行錯誤の一年>

1.タケノコを伐る
 有間竹林愛護会(注4) の竹林と築羽(つくば)自治区の竹林で、去年は主にハチクのタケノコを伐りました。2mぐらいのタケノコでいいんだけど、鎌で伐れる堅さのところを伐る。無理しんでサクッと伐れる感じのところ。
 みんな去年は「初」でわからんし、強引に伐れば伐れちゃうもんで、無理くりね(笑)、メンマにしちゃって後で繊維が出て食べれないっていうのもあって。戻してみたら筋張ってて食べれん。やってて悲しくなってね。自分のようにやっとると経験上ね、これは食べれるとこだなってわかるんですけど。





2.茹でて、塩漬けする
 えぐみが出るんで節をとって、茹でてから塩漬けします。メンマって、ちゃんと発酵されるとすごい美味いんですよ。アミノ酸がすごい出るんで。うちは発酵食品、乾燥食品で作りたかったんで、ちゃんと乳酸発酵させて、天日干しで。
塩分濃度はうちは10%にしたんですよね。一か月ぐらいでちゃんと繊維もほどけて。夏越すならもっと塩分濃度高めて20%とか。塩分濃度が高いと乳酸発酵は遅れます。



(竹林で竹を伐り、カットして茹でるまでの4枚の写真は竹々木々提供)

3.干す
 乾燥は天日だけだったら3,4日あればカリカリぐらいに。そうしとけばその後は一年中いつでも戻していいですよっていう状態にしとけれる。

4.水で戻して調理する
 成形調理の前日に水で戻す。戻し方もコツがあります。塩抜きと兼ねてるわけで、戻し過ぎるとうまみも全部出ていっちゃう。流水でやっちゃうと抜け過ぎちゃうんで、できればためた水で入れといたほうがいい。
 でカット成形して調理ですね。サイズは細かいと乾燥工程が大変になっちゃう。今年はもうちょっと大きくやろうと。
 味付けは築羽の梅とネパールのスパイス。化学調味料は使わないで、ほんとに酒と、みりんと醤油、スパイスで、しかもこだわったものを使っとるだけで。ほんとはアユ味を作りたい。「アユチョビ」(山岡さん手作りのアユの塩蔵品。「アンチョビ」に似せた名で呼んでいる)を使ってやると絶対うまい。

<5.販売する>
 去年は11月に販売したけど(75g800円。100袋を製造し、1か月ほどで完売)、寒いと香りが立たないんですよね。本当はタケノコが出た時期に仕込んで、そのまま流れで夏に販売できると一番売りやすい。今年はこの辺の夏祭りで売りたい。



<旭全体で盛り上げたい>

野田:今年は地域の人から竹を買い取ります。厚みのあるモウソウチク限定で、「朝どれ」がポイントで(注5) 。すべての工程に地域の人が関わってくれるといいなと思うので、ワークショップとかでやれたら。地域ひっくるめてやりたいので。

山岡:旭全体で盛り上げたいんですよね。ちゃんとできるようになれば買い取りは一本300円じゃなくて500円ぐらいまではいけるんじゃないかなあ。要は、みんなの仕事を作りたいんですよ。プチ仕事でもいいんで主婦層、女性陣、じいちゃんたちも、それで興味が湧けば多少竹林に手を入れるかなと思うんですよ。
 旭も昔は竹を扱う人が一つの集落に一人はいましたね。自分が子どもの頃も農機具屋の人がやっていた。まだ道具はあるって言ってましたけど、継ぐ人がいないんで。道具だけでもレスキューできるといいんですけど。
 うちの親父は「こんな(大きな)タケノコとっていいんか」、っていうけどそれがいいんだよって。昔はねえ、旭でも、大きいタケノコにして取っとった地区とかもあるんですよ。戦後の食糧難の時代。そういう面でもおもしろい。昔の竹利用とかね、聴いときたい。竹だけじゃなくていろんなことがね、まだまだ、聴けてない話が多いと思うんです。


(注1) 「平成24年3月に137年の歴史に幕をおろした旧築羽小学校を再活用した地域を担う人材創造拠点。」(つくラッセルfacebookページでの紹介文)。2018年オープン。
(注2) 雑誌では、長野県飯田市の舟下り会社に所属する船頭である曽根原宗夫氏を中心に立ち上げられた、川沿いの放置竹林を間伐し、その竹を燃料として燃やしたり、筏、メンマ等に加工して活用する「鵞流峡復活プロジェクト」が紹介された。プロジェクトの過程で地域のつながりも生まれているという。雑誌『BE-PAL』(2018年2月号「地方創生時代の歩き方 ルーラルで行こう!」No.33)。
(注3)地域情報誌『耕ライフ』誌上で一般に参加者を募り、「当たり前のように購入していたものを作ることにより、作り手や大地の恵みへの感謝の心をはぐくみ、知識や技術を身につける」ことを行う企画で、メンマづくりは「ラーメン」作りの一つとして実施された。
(注4)矢作川の川辺の竹林を保全する地元団体。
(注5)「長さ1.8m、直径13cm以上の朝どれ孟宗竹のタケノコを1本300円で限定100本買取します」(「つくラッセル news 2019年4月号より」)。「朝どれ」に限定しているのは、時間が経つとえぐみが出るため。