【矢作川を知ろう】

地域ぐるみで、企業もともに川辺を整備する

森 和夫さん:中越戸水辺愛護会会長(1948年生まれ)

中越戸水辺愛護会:会員数15人。越戸公園近くの矢作川散策路において、竹伐り、草刈り、遊歩道の整備作業を行っている。



 豊田市の猿投台地区では、住民が自然を満喫し、交流できるよう、矢作川沿いの散策路を整備することが地域全体の取り組みとして位置づけられています(「猿投台地区まちづくりビジョン・実施計画」(猿投台地域会議※1発行(2016年))。散策路整備を進めるために5つの団体が組織され、当初は豊田市の補助制度「わくわく事業」※1を活用して整備を進めてきました。2020年度からはそのうち4団体と、新たに組織された1団体が水辺愛護会となり、猿投台地区に以前からあった2つの水辺愛護会も含めて7団体が連携して活動しています。

 竹林に遮られ、堤防や散策路から見えなかった矢作川が今では見通せるようになり、散策路を歩く人の数は明らかに増えたとのこと。活動の中心人物のお一人である森和夫さんにお話を伺いました。
(聞き取り:吉橋久美子・洲崎燈子 2022年7月6日@豊田市矢作川研究所)

<昔の景観を取り戻そう>
 我々の小さい頃の矢作川のあの辺(越戸公園付近)のイメージというのは、畑があって、川岸は竹がなくて、白い砂浜だったよね。砂を採って生活を立てとった人もいてね。それが、長年手をつけずに竹ボウボウになっちゃって川が見えんくなった。それで、平成27(2015)年に自分が区長になったときに、昔の景観を取り戻そうということで地域会議で話をして、矢作川の散策路整備を猿投台全体でやることになった。翌年から「わくわく事業」で川沿いの竹伐りを始めたんですよ。


活動前の越戸公園の様子。竹林の向こうに矢作川があるが、見通すことができない。中越戸の運動会にて。(2015年5月)*(*印は森和夫さん提供)


現在の越戸公園の様子。竹藪が切り開かれ、対岸が見えている。(2022年8月)


2019年の活動の様子。公園の横を通る散策路沿いに竹が密生している。(2019年10月)*


現在の散策路の様子。竹が伐られ、矢作川(右手)が見えるようになっている。(2022年8月)


<竹伐りと草刈りを、安全第一で楽しみながら>
 中越戸水辺愛護会の活動は4月から9月までは草刈り、10月から3月までは竹伐り中心。竹を伐るなら、チェーンソー使える人は使って、使わない人は伐った後、運んでまとめる人と、燃やす人と。安全第一で作業するのが徹底条件だもんで、そのへんはしっかり考慮して人員配置してるつもりだよ。

 夏は暑いで15分で笛鳴らして休憩する。農家の人が多いもんで今日はスイカ持ってきたっちゅうと休憩時間に食べましょうとかね。作業はまあ厳しいんだけど、楽しくやって、健康な汗をかいて帰るという、そういうスタイルを私はとってます。

 活動の様子は「中越戸だより」(地区の広報誌)に必ず載せてますよ。地域のなかでやっているわけなんで。いろんなところで話が伝わっていくもんで、例えば七夕用に、こども園や老人ホームから竹もらえんかなという連絡も来るよ。


2019年5月*


2019年5月*


2020年1月*


<愛護会同士と地域ぐるみの連携が猿投台の強み>
 猿投台の水辺愛護会会長連絡会っちゅうのが平成28(2016)年から今日まで7年続いてます。あそこの愛護会が、人手が足りなくて苦戦しとると聞けば、じゃあ、応援行くかとか、そんな話を月1回、木曜日の6時からして、その後の7時からの地域会議に反映させる。地域会議は水辺愛護会のない自治区も含めて11自治区から来とるから、そこで話すと全自治区から応援の人が来てくれる。大勢の人を投入する体制を未だに堅持しているわけ。地域会議が水辺愛護会の本体のようなもので、猿投台は非常に結束しとって連携体制をとれるのが強みだね。

 猿投台の体制を豊田市全体に展開したらどうだっていうのが私の考えなんですわ。市長が猿投台の懇談会に来たときに、私は地域間交流をもっと大々的に進めるべきだと話した。困っている愛護会があったら、どこでも行くよという話でね。


<企業からも力を借りて>
 活動を始めた頃に川辺を回ったら、苦戦しそうなところが幾つかあって、じゃあ、どう人を集めようかと。要は、支援体制だわね、人を集めて一気にやってしまおうという考え方。会長連絡会で情報交換しながら、住友ゴム、トヨタの寮生会、トヨタすまいる、中部電力、いろんなとこに話を持ってって、猿投台に竹伐りに来てもらっとる。

 中越戸は住友ゴム名古屋工場と提携しておるけど(「住友ゴムCSR基金」の補助制度を活用して物品を揃え、社員ボランティアの派遣を受けている)、自分はOBでね、11年前、現役の頃にCSR第一号※2に関わった。でもまさか自分が地元でやるとは思ってなかったね。

 わくわく事業が終わるときに、4年間の活動写真を住友ゴムに持ってって、こういうメンバーでこういう活動してますよ、これを完成させるためにぜひ力を貸してくださいというお話をした。社員も「GENKI活動」といってボランティアをすることになっているので「今度はいつやる?」と乗り気だよ。

 年末には愛護会の活動で伐った竹や枝下町(猿投台地区内)の竹を使って、住友ゴムの人と一緒に門松を作る。工場の近くの公民館や神社に提供しとるんですよ。お世話になっている地元に貢献するという趣旨でね。


2019年9月*


<次の目標を常に描いて>
 やっぱり、次の目標、次はこう行くぞ、常にそれを描いておかないと。今の目標は、竹藪を伐り開いた景観を来年も取り戻すことだね。来年5月6月7月、またタケノコが生えてくるから、集中して伐って、今のような状態に戻す。それがみんなの強い願い。
                             
※1.「地域会議」、「わくわく事業」は「地域課題解決事業」(2021年度まで「地域予算提案事業」)とともに豊田市の「地域自治システム」を構成する仕組み。地域会議は市内に28あり、地域課題やまちづくりについて話し合う審議機関。わくわく事業は地域住民による地域づくりに補助を行う事業。「地域課題解決事業」は、地域課題の解決を市の施策に反映させる事業。
※2.旭地区にある「お須原山」の一部を「GENKIの森」として整備している。