Rio 2025年夏号で、約120年周期に起こるハチクの開花について紹介しました。今回は、その後の竹林がどのように再生するのかについて、近年の研究で分かってきたことを紹介します。
植物の再生には、大きく分けて①種子による再生(有性生殖)と②地下茎による再生(無性生殖)の二つの方法があります。開花したハチクについても、種子から新たな竹林が形成される場合と生き残った地下茎から再生する場合の二つの可能性が考えられます。
これまでの研究から、ハチクは開花しても成熟した種子をほとんどつくらない(例えば、1本の竹から数粒しかつくらない)ことが知られています(坪井,1908;原,1912;農林水産省,2021)。近年みられる開花でも、種子の形成が確認されていません(Yamada et al., 2023;郡,2024)。したがって、種子から新たなハチク林が形成されることは極めてまれと考えられています。実際、そのような事例は長い間知られていませんでしたが、最近になって種子から形成されたハチク林の存在が初めて報告されました(小林,2025)。とはいえ、ハチクの再生において種子が果たす役割は、それほど大きくない可能性があります。矢作川においても種子らしきものを確認しましたが、成熟には至っていません(関連記事:矢作川の生き物-ハチクの花)。
一方で、ハチクは開花後も地下茎の一部が生き残り、そこから小型の竹が発生することが知られています。ところが、ハチクが開花した場所で発生した小型の竹の多くは、約1年以内に枯死することが報告されています(Yamada et al., 2023)。そのため、「地下茎が生き残れば竹林はすぐに回復する」とは言い切れない状況です。
中国各地で報告されたさまざまなタケの開花や再生の事例を整理した研究によると、開花後の竹林では、生き残った地下茎の芽から小型の竹が発生し、それらが地下茎を伸ばしながら次世代の小型個体を生み出すことで、徐々に竹林が回復していく可能性について言及されています(Zheng et al., 2020)。この過程では開花している竹の割合が次第に減少し、開花していない竹の割合が増加していき、最終的には通常の竹林へ戻るとされています。
ただし、この回復には長い年月が必要です。ハチクについての事例はありませんが、ハチクと同じマダケ属の竹であるマダケでは7~10年程度、その他の竹でも少なくとも10年程度を要した事例が報告されています。また、施肥などの管理によって生育条件を改善することで、回復が早まる可能性も示されています(He et al., 1994)。
ハチクの開花後の再生過程には、まだ分かっていないことが数多く残されています。前回の大規模な開花は明治末期の1908年頃とされており(Kawamura, 1927)、その後の竹林がどのように回復したのかを詳細に記録した資料はほとんど残されていません。また、成熟した種子がほとんど作られないにもかかわらず、ハチクは蓄えている栄養の半分ほどを花の形成に使うことが分かっています(Kobayashi et al., 2022)が、なぜそのような性質が維持されているのかについても、十分には解明されていません。
約120年に一度しか起こらない現象であるため、研究者にとっても現在進行中の開花は極めて貴重な観察の機会となっています。
枯れて色褪せた竹とまだ生きている青々とした竹(野田撮影:豊田市有間町)
河川沿いの竹林は、景観管理や安全確保の観点から伐採・管理が行われる一方、護岸の役割のほかタケノコ利用や竹資源の活用など、地域との深い関わりも持っています。現在進行している竹の開花は、人の世代を超えて繰り返される貴重な自然現象です。開花した竹林が今後どのような変化をたどるのか、その再生過程を見守ることは、地域の自然を理解するうえでも重要な機会になるでしょう。
竹の資源利用の取り組み
・川辺の恵みを活かす~水辺愛護会活動地の幼竹を食べる試み~
・「地域ひっくるめて」の竹林再生を目指すメンマづくり