【矢作川を知ろう】

豊田大橋と釣り人


2019年9月30日撮影



百々町から越戸町を望む


2020年2月28日撮影



霧がかかった矢作川の夕景

2020年6月26日撮影



水辺愛護活動の安全性を高める

平松清文さん(1954年生まれ)(太田川(だいたがわ)河川愛護会会長) 

<「多自然型工法」で改修された太田川>
 豊田市の松平地区を流れる準用河川太田川は1990-1999年度に河川整備事業がおこなわれた川です。当初は圃場整備に伴ってコンクリート護岸が計画されていましたが、途中で多自然型川づくり工法(近自然工法)に変更され、コンクリート護岸よりも自然の川の姿に近く、かつ、災害に強い形に整備されました。
 そして2000年、地元住民による「太田川河川愛護会」が発足し、これまで20年の長きにわたり、草を刈り、ごみを拾い、太田川を守ってきました。
 先日、会長の平松さんから、活動をするうえで改善してほしいことがあると連絡をいただき、お話を伺いました。今回は草刈りの安全性について的を絞り、対策を講じた写真とともにご紹介します(複数回の聞き取りをもとに構成しました)。
(聴き取り:吉橋久美子、高橋啓太。2020年1月21日(吉橋)、4月22日(吉橋、高橋))



<斜面の草刈り>

(斜面を歩きながら)ここはもう足場がないようなところで草を刈ってるんですけれども。これで自分の体重支えながら刈るんだもんね。すごい不安定。それで草刈り機持って。ずり落ちると危ないんですよ。
 で、どうやってるかというと、自分で真ん中に10センチぐらいの足場を作ってるじゃんね、作業用の。そうすると、すごい楽に草が刈れる。これだけでえらい違いだ。平らな所を歩くのと斜めのところを歩くので全然違うんだ。
 草刈り機で草が刈れるのは半径2メートル程度。だから、草刈りが必要な場所から2m以内に安全な足場を確保したい。




対応>>斜面に小段を入れる工事が行われました(写真右)


<地面がイノシシに掘られる>

 今一番いかんのはイノシシが地面を全部掘って、足場がすごく悪い。草刈りの時に掘られたところに足を取られてバランス崩したりするんですね。うまく刈れないですし。




対応>>イノシシに掘られた地面の整地をしました(写真右)。


<石張りの護岸部分の草刈り>

 岩があると大水の時、岸が削れんでいいというのはありますよね。だけども、岩を組むと結局草が生えてきて、木も生えてくる。だからみんな、ずり落ちるような斜めのところで一歩一歩、確認しながら、草刈り機を持って草を刈ってて。
 草刈り機が届く範囲のところでやっぱり段を作って足踏ん張って刈れるような形にしてくれないと、管理するのが怖い。




対応>>河川が曲がっている部分(約50m)では、大水が出た時の洗堀を防ぐために石が張ってあります。そのため、整地や小段設置が困難であり、今後は業者の方に頼んで草刈りをしてもらうことになりました。 
写真左)2000年10月31日 写真右)2020年5月20日 石張りの間から草が生えている


<管理する側の視点を今後に生かしてほしい>

 太田川自体の対応も大事だけど、新しく整備するところについても管理する人のことを考えて管理しやすいように作ってほしいな。「自然のイメージ」や景観だけじゃなくて。それに、ここは高齢化しているけどそういう所は他でも多い。ボランティアの人に頼むことになるにしても、危ないと頼めないよね。

<子どもたちに川で遊べる楽しさを>

 僕はやっぱり子どもたちに川で遊べる楽しさをと思ってやってるんですけども実際にこの自治区の子たちはほとんど来ません。まずお父さんたちが川に連れて行かない。
 よく来るのは名古屋の人たちで、ここはきれいだねと言って、特に夏休みになると多いですね。草を刈ってあるところにタープを張って遊んでいきますよ。三面張りで梯子をかけないと降りられない川も多いけどここはどこからでも降りられる。亀の甲みたいに石が組まれているところは子どもたちが岩の上から飛び込んで、すごい喜ぶ。

<ボランティアが来てくれると嬉しい>

 川だけじゃなく、集落のお役の草刈りもあるし、自分の畑や田んぼの草刈りもあるし、かといって活動の回数を減らすと後々大変。草が大きくなりすぎるし、洪水があった時に草が寝ちゃったりして草刈り機では刈れなくなっちゃいますし。
 今はできる範囲で続けていこうと思います。草刈り機を持ち込んで一緒になってきれいにしてくれるボランティアがいると嬉しいんだけど。地域貢献したいっていう人がいると思うんだけどね。

参考文献
*矢作川研究所「RIO」への平松清文さんの寄稿 「太田川河川愛護会 ―10年後・20年後をめざして!―」「RIO N0.34」(2001年2月号)。
*矢作川研究所による太田川の生物モニタリング調査結果
・内田朝子編集「太田川多自然型川づくり~第一回モニタリング調査を終えて~」「RIO No.38」(2001年6月号)
・内田朝子・洲崎燈子・山本敏哉・白金晶子・藤井泰雄(2004)準用河川太田川自然環境調査報告―多自然型川づくりを用いた河川整備の評価―。矢作川研究、8:187-218。



1953年の久澄橋と木除杭


2019年8月の「広報とよた」の「豊田時間旅行」コーナーに矢作川の写真が掲載されていました。1953(昭和28)年の撮影で、楽しそうに水しぶきを上げて遊ぶ子どもたちと、久澄橋が写っています。 
久澄橋の橋脚の向こうに見慣れない構造物が見えます。「これはなんですか?」と市民から問い合わせがあったと、広報を担当する市政発信課から連絡がありました。
橋の架け替えに伴う工事用の構造物でしょうか。調べてみましたが、この頃の架け替えはなかったようです。では橋の脚元が掘られるのを防ぐためのもの?それならば、こんなに高さがなくてもいいはず。悩んでいたところ、研究員の一人が「木除杭(きよけぐい)」だろうと教えてくれました。洪水時、流木が橋に衝突したり、溜まったりすることを防ぐために、橋脚の上流に設けられる杭だそうです。高さがあるのは増水に備えているためなのだなと納得しました。