稲武地区は豊田市の北東に位置し、長野県と岐阜県に接する自然豊かなエリアです。
温泉を併設した道の駅として有名な「どんぐりの里いなぶ」のすぐ近くに、明治時代に建てられた民家を移築した「豊田市稲武体験交流施設どんぐり工房」があります。どんぐり工房は、豊田市と合併した2005年から、農林業、食、工芸などの体験プログラムの拠点として多くの人に親しまれています。その体験プログラムの一つに「川遊び」があると知り、活動の核になっておられる村瀬登美さんにお話を聴かせていただきました。
(聴き取り 吉橋久美子2015年10月6日 どんぐり工房にて )
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プールとは違う楽しさがある
―川遊びならではの良さってなんでしょう?
やっぱりプールとは違うじゃん?川に入ってみて、冷たいことがわかる、流れるのもわかる、岩は滑るところもあるし、それから急に深くなったりもする。
子ども達にはライフジャケットつけてもらってね、時間内で自由にやりたいことをして遊んでもらう。川上に向かって泳いで行って、川の流れに身を預けて下る子がいたり、タモ持ってバケツ持って、ずっと魚摑みやってる子もいるし、植物をとりたければ延々草むらを探っちゃあ(笑)バケツに入れる子がいたり。箱メガネで川の中をずっと見ている子もいる。親と一緒に来ているちっちゃい子は親と一緒にしりもちついてみたり石運んでみたりねえ。
子ども達は唇が紫になってガタガタ震えてても「まだ遊びたい!」って。それだけ楽しいんでしょうね。もちろん「あがらなきゃダメ」って言うけどね(笑)。
危険だから全部シャットアウト、じゃなく
―川は楽しいけれど事故が心配でもありますね。
やっぱり自然は危険と背中合わせ。私たちも最初は不安で、専門家にいろいろ教えてもらった。川は危険だから全部シャットアウト、じゃなくってどうやったら安全に遊べるのかっていうそういうことを知ってもらえたらいいな。
プログラムの最初に、「みんなににこにこして帰ってもらうためにね、大人の言うことは聞いて下さい、笛が鳴ったらどんなに楽しくてもやめて、ここに集まってね」とか約束してもらう。無事に帰るまでこっちもどきどきするけどね、やっぱり子ども達はすごいいい顔して「楽しかった!」って帰っていくので、やってよかったなあと思う。それの繰り返しだわね。
地元の子ども達に川を体感してほしい
都市部の親子の参加が多かったんだけど、あるときふと気づいたら地元の稲武の子どもたちが川に入れないの。いや、入れるんだけどものすごいこわごわ入るの。「うっそお(笑)」と思って。こんなに近くに川があるのに。こんなことではいかん、稲武のこと、全然思い出にならんって思ったの。実際にふれて体感しないと感じないし愛着もわかない。だから稲武の子ども向けプログラムもやっています。
昔、プールが無い時代は夏休みに入ると大人の人達が川をせき止めてくれるわけよ。そこへ子ども達みんなで、浮き輪とか持って、タオルかけて遊びに行くわけ。上級生が下級生見ながら遊んでたし、時間になると、ちゃんと家に帰って来てたし、そういうことがやっぱり当たり前にできるようにならないといけないかなあとすごく思いますね。
最近、地元の30代40代の人たちのなかに、自分の子どもやその次の世代に引き継いでいける川や山の姿がないとだめという想いを持っている人達がいることを知り、考えさせられたし、嬉しいなあと思います。
(写真は同日稲武地区大野瀬町にて撮影)