矢作川を知ろう 【矢作川と人】

自然の恵みをかたちに ~つばき油を搾る~

このページは、矢作川に関わりのある方々にお話を伺い、「語られたままの言葉」を生かして川と人とのつながりをご紹介することを目的として作成しています


松原孝史さん(1951年生まれ)
「手作り工房」主宰


 豊田市内の矢作川や支川などで、ボランティア団体「水辺愛護会」が地元の川辺の整備を行っています。矢作川研究所は、その活動に川辺ならではの「恵み」を取り入れることで活動の楽しみが増えるとよいのではと、「川の恵み」を探しています。
 そんななかで、女性を中心に老若男女が集まる「つばき油搾り」の体験ワークショップを開いているという松原孝史さんを知りました。
 ヤブツバキといえば、川辺の林が明るくなると元気に成長し、花を咲かせ、実をならせる、川辺の整備のシンボル的な存在です。その油が多くの人の関心を呼んでいるということで、「川の恵み」のヒントをいただくためにお話を伺いました。(聴き取り:洲崎燈子・吉橋久美子 2018年12月11日(火) 松原さんのご自宅兼事務所にて)



<つばき油を絞っています>
 10年ほど前から、自宅のある碧南市や高浜市などの民家、お寺などにあるヤブツバキの実を採らせてもらってつばき油を搾っています。ピークの時は一年で40リッターぐらいとれたかな。でも今は藪が減ってヤブツバキも減って、それほど採れなくなりましたね。
 つばき油を始めた直接のきっかけは、2009年に始まった「豊森(とよもり)なりわい塾」※1です。「田舎に住むためのなりわいをさがそう」「人がやっていないことをやってみよう」ということでつばき油を搾ることにしたんです。


<つばき油絞りの一年>
 ヤブツバキは3月に花が咲いて、9月の終わりから10月ごろに実ができる。それをなるべく木の上にあるうちに高枝バサミでとります。落ちてしまったのも拾いますが、古いものが混じっていたり汚れていたりするのでね。
 これを集めるのに10月まるっとかかります。
 外側の殻から実を外して天日干しで一週間ほど乾燥させます。その実を鉄の棒で叩いて皮を外し、中身を砕きます。それを袋に入れて圧搾(あっさく)機の筒に入れて絞るんです。最後に炭のフィルターでろ過して完成。非加熱・低圧搾です。「家内工業的」でしょう。
 この圧搾機はオリジナル。鉄工所を営む友人に作ってもらっています。





<ヤブツバキでいろいろなことができる>
 つばき油はオレイン酸を多く含んでいて、髪の毛にも肌にも良く、マッサージなどに使われています。リップクリームや石鹸もできます。
 油のかすは「サポニン」という成分が含まれているので畑にまくとネキリムシなんかの対策になるそうですよ。葉はお茶にもできます。木は炭にすると火持ちが良くて煙も出にくい。灰は釉薬にできて草木染の定着剤にもなるんです。


<実を集めるのが大変>
 実を集めるのが一番大変です。ヤブツバキの実を持ってきてもらったら、つばき油と交換をしたり、買い取らせてもらっています。外の殻ごとで6kgぐらい持ち込んでもらうと、圧搾する実は2kgほどになり、約800ml程のつばき油がとれます。



<つばき油搾り教室を開催>
 小型の搾り器を作って、5年ほど前からつばき油搾りワークショップも開催しています。豊田で開催されている体験型プログラム「とよたまちさとミライ塾」への参加も3年目ですが3回来てくれた人もいますよ。友達連れてね。喜んでもらえるとやっててよかったと思います。