矢作川を知ろう 【矢作川と人】

<風景と、誰かと遊んだ記憶がまちに人を呼び戻す>

澤田恵雄さん(縄文の里水辺愛護会会長(肩書きは取材当時))



豊田市下川口町は、赤い加茂橋で足助と結ばれ、水汲遺跡があるまちです。秋には天神社の大イチョウと、まちの人達が整備をしてライトアップしている大沢池の紅葉が人々の目を喜ばせてくれます。この下川口町の川辺で活動しているのが縄文の里水辺愛護会のみなさんです。

2016年3月に開催された、上流域の水辺愛護会の活動報告会で「次世代がまちに帰ってくるためによい景観を守っている」と発表された方がいらっしゃいました。愛護会の会員がどのような思いで活動しておられるのかに興味があった私は、その言葉に強い積極性を感じました。その発表をなさったのが縄文の里水辺愛護会の澤田恵雄さんでした。もっと思いを聴かせてくださいとお願いし、ご快諾いただきました。澤田さんは、水辺愛護会の活動とまちの将来を想うこと、自分自身を探求することを一連なりに捉え、伝えてくださる方でした。
(聴き取り 吉橋久美子2016年4月11日、12月14日)
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心に残るのは「景観」と「誰かと遊んだこと」

この地域に生まれた子たちが、帰ってくるようにするためにはどうしたらいいだろう?そう考えると、どこへ行っても、ふるさとがいいものだと思うには、いい景観が一番だね。その映像がきれいなものであれば、一生きれいな思い出とともにやれるわね。
それから誰と遊んだか。自由に遊ぶってことは学校で勉強するよりも大事。
活動の大きな夢は、僕たちが子どもの頃に遊んだような環境を作るっていうことだね。昔は川で良く遊んだ。上級生が面倒見てね、泳ぎを覚えさせてくれた。わざと溺れさせたりしてね。危険から遠ざける方が却って危ないんじゃないかな。

苦労の中に価値が生まれる

世の中結果主義で簡単なものをありがたがるけど、手に入りにくいものに価値がある。愛護会活動ならば作業の苦労の中に価値が生まれてくる。汗を流して手に入れた、前と全く違う風景に価値を感じるのは、活動した人の特権だよね。
愛護会の総会の時も何をするかっていうことよりも、なぜするかっていうことをいつも話す。自分達の利益になるんだっていうことをちゃんとわかった人がやるとおもしろいなーと思うしね。
最近は、「このまちは良いまちだと思っている」とまちの人から聞くし、大沢池のライトアップも自分たちも楽しもう、という感じに変わってきた。大変だけどね。お客さんとコミュニケーションとるのが楽しいよ。
僕たちが今、誠実に地域を愛して、良くしようと思ってると、何十年か先に、価値が出てくると思う。
そういう価値観を共有できるようになって初めてね、まちの活性化ができるかなあと思う。この地区は28戸で昔からそう変わらない。価値観が共有できるっていうすごい力がある。

自分を問いながら

愛護会の活動を「単なる作業」としてイヤイヤやってて、怪我したりしたら最悪だね。でもそうじゃなくて僕はいつも自分ってなんだろうと問いかけながら思考する時間にしている。自分自身を知るということが人生の幸せにつながると思うから。
それに何回も草を刈っていると生えてくる草が変わってくる。やればやる程地球が応えてくれる。

望んだイメージになっている

いろんな人が、ここで車を停めてはのんびりしていくので、かなりいい線きてるね。当初望んだとおりのイメージになっている。
あと、ベンチやウッドデッキなんかを作ってみたいなあ。お弁当持ってこの辺で食べていただけたらと。後ろの山の整備もしてるから、この地域に合った木とか花とかをみんなで考えて植えてね、川を見て、ふっとふりかえったらきれいな山が見える、となるといいね。






<食べて遊んで勘考(※1)して>

牛田朝見氏(豊田市議会副議長)71歳(年齢・肩書きは当時))



               (2016年7月13日、8月22日 聴き取り 吉橋久美子)

田代川(小原地区)から矢作川へ
 小さいころは田代川の下仁木、上仁木の辺までが「縄張り」でね(笑)。中学生ぐらいになったら矢作川へ行った。矢作川にはいろんな種類の魚がおるもんだからね。

川の恵み…「食」
 カエル、ツボ※2、川の魚、動くものはほんとに何でも食べたね。他にたんぱく源なかったもん。釣竿なんてあらへんくて、川の中入って横にある穴探すんだね。その中に手を突っ込んで、アカモト※3だとかオイカワだとかそういうの手掴みにするんだわ。オイカワはうまいよ、骨が柔らかいから。
 それからイシャンコ※4ね。割りばしの先に木綿針を二つつけて糸で巻いてしばって、水中メガネやっとって突くんだ。あれピッピッてこんぐらい(10数㎝)しか動けへんもんね。ほれを突いて、佃煮にするんだけどね。うまかったなあ。いっぱいおったよ。あのころは。

川の恵み…「遊び」
 遊ぶもんもなかったもんでねえ、ほんとに。夏はもう、学校から帰ったらすぐ川。僕なんかカバンをほのまんま傍に置いといて(笑)。石を集めちゃあ堰を作ってね。水の中だと石が軽くなるもんで。みんなで協力して。で、川をちょっと深くしてそこで泳いだもんで(笑)。唇が紫色になるぐらいやーっと※5入っとった。
 田代川には木を渡しただけの橋があって、そういうとこからみんなダーンと飛び込んだ。おもしろかったねえ、川遊びは。



田代川の今。コンクリート二面貼りに。

川でみんなで「勘考する」
 メダカもよう摑んだね。メダカはね、帽子を下へ入れといて、すーっと上に抜くだがね(笑)。生活の知恵でね、みんな勘考するがね。あれがええとかこれがええとか。今の子はすぐタモ与えちゃう。昔の人は、そう親にあれ買ってくれこれ買ってくれって言えへんもんだから自分たあ※6でできるもんで、魚を捕まえる方法を考えたりね。昔の人の方が遊ぶことは上手だったかもしれんね。

体験することで
 やっぱり川に入ればどんな魚がおるかということね、こんな色だったあんな色だった、あれはヒゲがあったけどこれはなかった、そういうことが分かると思うんだけどね。うまい魚がどれかっていうことも(笑)。
 けがもしとったけど、「どうするとけがをするか」がわかる。薬になる草も知っとった。
先輩がなんでも教えてくれた。

※1.よく考えること。当地方で日常的に使う  ※2タニシ  ※3.カワムツ  ※4.ヨシノボリ ※5.長い間 ※6.自分たち