No.146 早春の人里植物

 日差しが強くなり、木々が芽吹き始める頃、定期的に刈り取りが行われる草地で、いち早く花を咲かせはじめる人里植物の一群があります。

・トウカイタンポポ … 萼(がく)に見える部分が反り返っていないことで在来のタンポポと分かります(外来のタンポポやその交雑種は反り返ります)。若葉は食用に、根はコーヒーの代用飲料に、乾かすと健胃や解熱の作用がある漢方薬になるなど、意外に用途の多い植物です。
・ホトケノザ … 写真の中央と左側で、赤紫の細長い唇形花を咲かせているのがホトケノザです。茎をぐるりと取り巻く円形の葉を仏の座に見立てた名です。ややこしいですが、春の七草の「ホトケノザ」は本種ではなく、タビラコという植物です。
・オオイヌノフグリ … 日本の植物学の父と言われる牧野富太郎が名付けた植物です。秋に芽生え、翌年夏まで生育する越年草です。人目を引く冴えた青紫の花は、さわるとすぐにばらばらになってしまいます。
・ヒメオドリコソウ … 小さなピンクの花よりも、赤紫色をしたビロードのような質感の葉が目立つ植物です。これもオオイヌノフグリと生育期間の似た越年草です。
 
 はじめの2種は在来種で、あとの2種は明治期にヨーロッパから入ってきた外来種です。外来種とは言え、在来種とともに足下からちいさな春を告げるおなじみの姿を見ると、身近な場所にある自然のありがたみを感じます。(洲崎燈子)


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