2025年2月25日(火),矢作川の下流域(葵大橋の上流側)でウツセミカジカを採集し,写真を撮影しました.以前から,秋のアユの産卵場調査で水中観察している際に,ウツセミカジカっぽい魚がいるなと思っていましたが,私が矢作川で採集・撮影したのは今回が初めてでした.
よく似た種に「カジカ」がいるのですが,頭部に暗色模様があることや胸鰭の軟条(鰭にある線)の本数が多いことから(中坊,2013),「ウツセミカジカ」であると確認しました.
ウツセミカジカとカジカは,見た目によく似ているのですが,採集場所でどちらかを予想することができます.下流側(中・下流域)ならウツセミカジカ,上流側(上・中流域)であればカジカと見当をつけられます.
下流側にすむウツセミカジカは,卵が小さいため孵化した後,海などで浮遊生活をして成長し,大きくなった後に川に戻ってきます(両側回遊性).一方,上流側にすむカジカは,卵が大きく,孵化した時により成長した状態で生まれるため,海での生活を必要としない河川陸封型です.ウツセミカジカは海などを必要とするため,下流側に分布しているというわけです.(ただし,荒尾(2019)や向井(2019)の指摘にあるように,人為的な移動によってウツセミカジカが山間部の河川でも見られることもあるようで,注意は必要ですが….)
図鑑でウツセミカジカの生態を調べると,繁殖期は2月下旬~5月上旬(川那部ほか,1989)あるいは3~5月(細谷,2019)とあります.今回,短時間で多くの個体が採集されましたが,繁殖期(近く)だったために石の近くに集まっていたのかもしれません.もしも,石をめくっていたら,石の裏面に小さめの卵塊を見つけられたのかなとも思いました….
参考文献:
・ 中坊徹次(2013)日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.
・ 荒尾一樹(2019)矢作川水系で採集されたカジカ類.矢作川研究,23:31-32.
・ 向井貴彦(2019)岐阜県の魚類 第二版.岐阜新聞社.
・ 川那部浩哉ほか(1989)改訂版 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚.山と渓谷社.
・ 細谷和海(2019)山渓ハンディ図鑑15 増補改訂版 日本の淡水魚.山と渓谷社.
撮影地:矢作川・葵大橋上流
撮影日:2025-02-25
作成者:小野田幸生