No.196 ヒメクグ

ヒメクグは、7月から10月にかけて金平糖のような丸い穂をつけるカヤツリグサ科の植物です。
ひざ丈ほどの高さで群生し、比較的湿った場所を好むため、田んぼ道や公園の日陰の草むらなど、身近な場所でも見かけることができます。
ヒメクグのほかにも、イヌクグやウシクグ、オニクグなど「クグ」が付く植物がいます。
















ヒメクグは漢字で「姫莎草」と書きます。この「莎草」という字が気になって調べてみると、思いがけず古い文献をたどることになりました。

莎草という字は、平安時代に編纂された書物『倭名類聚抄』に見られます。この書物は、当時の中国で使われていた漢字に日本での呼び名(和名)を添えたもので、莎草の項目には「具々」という草名が記されています。つまり、中国由来の「莎草」という植物名に、日本では「具々(クク・クグ)」という植物名を対応させていたことがうかがえます。
さらに、江戸時代の書物『東雅』の莎草の項目では、「クグ」というふりがなが添えられ、その由来を「茎(クキ)」に関係する言葉ではないかという考えが紹介されていました。ただし、その由来については、はっきりしたことは今も分かっていません。

身近な植物の名前をたどってみると、中国から伝わった漢字と、日本で昔から使われてきた名前が一つになっていることが分かります。普段何気なく目にする植物にも、千年以上前から続く言葉の歴史が隠れているのかもしれません。

〇平安時代の書物
 倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう):貴族・歌人・学者である源順が記した、物の名前を分類してまとめた辞書
  源順 撰『倭名類聚鈔 20巻』[10],那波道圓,元和3 [1617]. 国立国会図書館デジタルコレクション
  https://dl.ndl.go.jp/pid/2544225/1/47
〇江戸時代の書物
 東雅(とうが):儒学者・新井白石が著した、日本語の語源解釈を記した辞書
  新井白石 編 ほか『東雅 : 20巻目1巻』3(巻之12-16),吉川半七,1903. 国立国会図書館デジタルコレクション
  https://dl.ndl.go.jp/pid/993110/1/59

撮影地:豊田市平戸橋町
撮影日:2026-07-08
作成者:野田顕

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