矢作川研究所日記

2021/08/24

スッポンの卵が孵化しました!

 2021年の7月中旬、豊田市の南西部を流れる猿渡川(さわたりがわ)でミシシッピアカミミガメの防除活動を行っているときに、護岸下の岸辺の土砂の中に産み付けられたスッポンの卵を見つけました(写真1)。直径は18mmくらい。全部で10個を確認しました。研究所に持ち帰り、湿らせた砂に埋めて冷暗所に置いていたところ、8月19日から23日にかけて5個の卵が孵化しました(写真2)。孵化したばかりのスッポンはとても小さく、甲羅の大きさは10円玉とほぼ同じくらいでした(写真3)。
 イシガメやクサガメ、ミシシッピアカミミガメなどの場合、孵化したばかりの個体には、鼻先に卵歯(らんし)と呼ばれる卵の殻を破るためのトゲのようなものがあります。しかし、スッポンにはそれが見当たりませんでした。カメの専門家である愛知学泉大学の矢部隆教授にお伺いしたところ、孵化する前のスッポンは卵の中で体を前後にかがめて丸まった状態になっており、これを平たく伸ばす筋力によって殻を破り、這い出てくるそうです。
 しばらく様子を観察したら、猿渡川に返すことにしています。(浜崎健児)


写真1 スッポンの卵。丸い形をしています。


写真2 孵化したばかりのスッポン。


写真3 甲羅も丸く10円玉とほぼ同じ大きさ。



2021/07/21

逢妻女川・男川で水生生物調査を行いました

豊田市南西部を流れる境川水系逢妻女川・男川でたも網、かご網、さで網、投網などを用いて魚類、エビ・カニ類の調査を行いました。





今年度は7月13,14日に逢妻女川、20,21日に逢妻男川を調査しました。逢妻女川の竹橋付近は三河湾から30 km程離れていますが、海岸近くでよく見られるスズキの幼魚や、海と川を行き来するアユ、ゴクラクハゼ、ヌマチチブ、ウキゴリ、テナガエビなどが採集されました。


スズキ


アユ


ゴクラクハゼ


テナガエビ



また、逢妻女川・男川ともに下流側の地点では、「クロコ」と呼ばれるひょろひょろとしたものから、体長50 cmくらいまでのウナギが採集されました。


ウナギ



外来種では体長65 cmのカムルチーや、ブルーギル、アメリカザリガニ、カワリヌマエビ属、ウシガエルの幼生などが採集されました。


カムルチー



2021/06/28

糸状緑藻の流程分布調査

 地元でアオンドロと呼ばれている糸状藻類の流程分布調査を6月28日から3日間連続で行いました(写真上・中)。矢作川の流れに沿って小渡、富田、広瀬、古鼡、豊田大橋の5箇所で調査しました。糸状藻類が最も多く生えていた場所は、富田と古鼡でした。極めて多く発生すると、川底全面を覆うまでになりますが、今年はそこに達しない状況でした。
 広瀬ではアユの友釣りが解禁になっていましたが、釣人の姿はみられません。しかし、瀬の水しぶきの音がする中、岸辺のヨシ原では、無数のオオシマトビケラが羽を休めていました(写真下)。侵入者である私に驚いたのか、顔や体にバシバシと体当たりしてきます。水面では、羽化したての水生昆虫を求めてツバメたちが低空飛翔し、あっという間に上空に舞い上がっていきます。ツバメのアクロバット飛行は一見の価値があります。初夏の矢作川は生物たちで賑わっていました。(内田朝子)






2021/05/15

古鼡水辺公園愛護会の「管理・活動計画」が完成しました。

 昨年10月の「研究所日記」で経過をご紹介したように、昨年度は河畔林の整備団体「水辺愛護会」の一つ、古鼡(ふっそ)水辺公園愛護会と研究所でワークショップを行い、「管理・活動計画」を作成しました。「管理・活動計画」とは、水辺愛護会の活動地の自然や川辺の恵み、愛護会の現状に即して、活動地をどんな場所にしたいか、どう使いたいかを整理し、これからの管理方法や活動の仕方などをまとめたものです。
 この地域は、かつて川が生業や暮らしと密接に結びついていました。そこで、活動テーマは「歴史ある川辺を子どもたちに伝える」になりました。また、現在、短く草を刈りこんでいるエリアは、今後は花が咲き、虫が来るような草丈のある草原とする、木が生長して少し暗くなっている広場や、堤防の法面などは、茂りすぎた木の下枝を払う、などの管理方針を立てました。下枝を伐ることについては即座に実施されました。



 5月に入り、資料として完成した「管理・活動計画」を持参して、会員の皆さんにお会いし、改めて内容を確認しました。今後も共働で、あるべき川の姿を考えていくことになっています。
 「管理・活動計画」は今年度も1団体で作成を予定しています。




2021/04/11

百々水辺愛護会活動地で植物観察会

 当研究所は、市民による水辺愛護会活動の活性化に向けたさまざまな支援を行っています。百々水辺愛護会では愛護活動活性化のツールとして2017年度からニホンミツバチの養蜂を行っており、研究所はそのお手伝いも行っています。その一環として、活動地に蜜源植物や有用植物、特徴的な植物があることを知っていただこうと、愛護活動の後に植物観察会を開催しました。2年前に同様の観察会を行ったときよりはるかに多い10人ほどの会員さんが参加してくださいました。




 まずは、活動地入口の広場に咲く花々のご紹介をしました。在来種のトウカイタンポポが多いことや、ホトケノザ、クサイチゴ、キランソウなどについてお話ししました。会員さんたちからは「こんなにいろいろな花があったんだな」「全部刈ってしまっていたな」との声が聞かれました。



       ウラシマソウの花


 愛護会の皆さんは、矢作川中流の明るい竹林内に見られるウラシマソウの名前の由来である花の形を観察したり、ヤブカンゾウが山菜であることやオニグルミの実が食用や油の原料になることを学んだり、上流に生えているタラヨウの葉に文字を書いてみたりしながら、春の日差しの下で植物観察を楽しみました。「年間を通じて活動地にどんな花が咲いているか分かる資料を作って欲しい」との声も上がりました。活動地の植物やその利用について、会員の皆さんの関心が深まってきたという手応えを感じることができました。(洲崎燈子)