矢作川研究所日記

2022/10/23

広沢川で川づくり学習会(第2回)を行いました

 猿投山を源流とする広沢川では、2020年度から住民と行政の共働による「ふるさとの川づくり事業」が行われています。今年5月に行った第1回川づくり学習会に続き、2回目の学習会を行いました。今回も猿投町まちづくり協議会、猿投町子ども会役員の皆さん14人にご参加いただきました。
 今回は、夏の出水を経た広沢川の堆砂状況等の変化を確認し、草刈りや浚渫などの維持管理の工夫について学びました。川の流れの緩急や深さ・浅さにより多様な環境を用意すること、水際の草を刈り残すことで生き物の隠れ場所を確保することなど、生き物のすみやすい環境づくりを意識していただく機会となりました。


水際の水の流れを学びました

 また、学習会後半では、農業用堰堤の堰板を取り外し、堆積していた土砂を下流に押し流しました。参加者のお一人に農業委員会の方がいて、その場で堰板を外すことを、了解を得た上で実施することができました。参加者の皆さんが自ら率先して行動していただき、大変実りある学習会となりました。(金田 修)


堰板を外して土砂を流しました



2022/09/25

矢作自治区水辺愛護会活動地で植物観察会

当研究所は、各水辺愛護会が今までの活動をふりかえり、今後の活動を展望する「管理・活動計画」づくりのお手伝いをしています。今年度は矢作自治区水辺愛護会でこの計画を作りますが、そのためのワークショップに先がけて、植物観察会を行いました。

笹戸温泉対岸の下流側にある矢作自治区水辺愛護会の活動地には、「川坊主公園」という名前が付けられています。ここはかつて川の中州で、大きな淵があり、川坊主と呼ばれる大きな鯉がいたという伝説があります。この川坊主は心優しく、たびたび大男の姿に化けて村の仕事を手伝っていたそうです。

川坊主公園ではミゾソバやミズヒキ、ヤブミョウガといった秋の花を観察することができました。ヤマグワの葉がたくさんの健康改善効果を持つお茶になることや、ヤブカンゾウが葉だけではなく花やつぼみもおいしく食べられるお話をしました。一方で、特定外来生物のアレチウリも広がってしまっており、結実前の駆除が望ましいことをお伝えしました。

参加者は昔イタドリや桑の実を食べた思い出話をしたり、百々水辺愛護会で行われているニホンミツバチの養蜂に関心を示されたりしていました。また、川坊主公園を訪れる人が増え、関係人口(特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人)、ひいては小原地区に移住してくる人も増やせないだろうかという夢を語られました。(洲崎燈子)


活動地のようす

参加者の皆さん

ヤブミョウガの花



2022/09/23

学会(ELR2022つくば)に参加してきました

9/20~9/23(9/20はエクスカーション)の日程で、つくば国際会議場において開催された学会「ELR2022つくば」に参加してきました。ELRとは、応用生態工学会、日本景観生態学会、日本緑化工学会の英語表記の頭文字を取ったもので、4年ごとに行われる三学会合同大会のことです。対面形式を含む学会開催(WEB形式とのハイブリッド開催)は久々でした。研究所からは、内田さん、吉橋さん、小野田の三名が参加しました。

私は久々の(対面での)口頭発表ということに加え、発表順が最終日の最後(9/23の12:15-30)だったこともあり、(普段以上に)最後まで「緊張感」を持って学会参加することができました。口頭発表では、矢作川中流の「ソジバ」での巨石投入実験を活用したアユの採餌場所の選択要因についての研究成果を紹介しました。発表後には、結果の一般性や今後の調査アイデアなどについて討議することができ、有意義な時間を過ごすことができました。ランチタイムにもかかわらず、熱心に聴いて頂いた聴衆の皆さんには、感謝しかありません。

三学会合同大会だったので、他学会の研究内容にも触れることができました。たとえば、外来種のセッションでは身近なススキにも近縁な外来植物との競合関係があるという研究発表があり、新鮮な印象をもって聴講しました。一方で、対象生物や着眼点は異なっても、研究デザインなどは共通部分があるなあと感じました。ポスター会場でも、多様な研究内容が並び興味深く見ました。お目当ての研究発表だけでなく、その近くにあるポスターを見ながら関連研究についての情報収集を効率的にできる面白さがあるなと思いました(ウェブショッピングではなく、本屋で実物を見て書籍を購入する時の楽しさに似ている気がしました)。
現地参加だったので、かつての職場の同僚や研究仲間とも会えました。矢作川研究所に所属が変わったばかりなので、名刺を渡しつつ近況を報告するなど「ロビー活動」も行うことができました。ちょっとした雑談から、新たな研究アイデアや共同研究の話に発展することもあり、これこそ学会の醍醐味だと感じました。やっぱり、対面式の学会は良いですね。
(小野田幸生)


三学会のメンバーが揃った公開シンポジウムのパネルディスカッション


ポスター発表会場の様子



2022/08/04

外来種ツヤハダゴマダラカミキリの調査を行いました。

 ツヤハダゴマダラカミキリは中国~朝鮮半島が原産のカミキリムシで、アメリカやヨーロッパなどに分布を拡大しており、「世界の侵略的外来種ワースト100」に選出されています。日本では、2002年に神奈川県で発見されて以降、兵庫県や愛知県など8県で確認されており、街路樹のアキニレなどで多発しています。本種は在来種のゴマダラカミキリよりも高い場所に産卵する傾向があり、幼虫は幹に食い入って木を枯らすことから、折れた幹や枝の落下による人的被害が懸念されています。
 豊田市内では、国道248号沿いに植えられた街路樹のアキニレで2021年に発見されていることから、他の場所にも分布していないか把握するため、矢作川河川敷のヤナギを対象に調査を行っています。この日は、職場体験でやってきた足助中学校2年生の生徒とともに、荒井公園の川沿いで調査しました(写真左)。7本のヤナギのうち5本で15個体の本種成虫が見つかり、多数の産卵痕(産卵のために幹をかじったあと)も確認されました(写真右)。一方、在来種のゴマダラカミキリは1個体も確認できませんでした。本種は在来種と非常によく似ていることから、気づかないうちに在来種から外来種へ置き換わっているのかもしれません。今後、矢作川沿いの公園や河川敷でも調査を行い、分布の状況を明らかにしていきたいと考えています。(浜崎健児)


写真左:ヤナギの幹や枝先に成虫がいないか探している様子。黒い棒は枝先の成虫を叩き落とすための長竿。写真右:幹を歩くツヤハダゴマダラカミキリ。矢印の先にある黒く丸い部分が産卵痕。



2022/07/31

広沢川で川遊び!(ふるさとの川づくり事業)

猿投町を流れる広沢川で、地域の親子を対象にした川遊び体験会「広沢川で川遊び!」が行われました。

広沢川は「ふるさとの川づくり事業」の対象河川で、土砂が溜まりにくく、生き物がすみやすく、親子が遊びやすい小川として再生・維持することを目指しています。

この川遊び体験会は、その一環として、ふるさとの川づくり事業に研究所と共に取り組んでいる猿投町まちづくり協議会によって主催され、猿投自治区が共催、猿投町子供会が協力して開催されました。

実は、広沢川での川遊び体験会の企画は一昨年、昨年とあったのですが、新型コロナウィルスの流行により中止になっていました。3度目の企画で実現した今年は、地域の皆さんの想いが盛り込まれた「広沢川の未来希望図」が完成しており、丸子橋付近では溜まった土砂を減らす工事と多自然の川づくり(石組み)が既に実施されているため、今回の川遊び体験会は川を知っていただくいいチャンスとなりました。

40人を超える親子の皆さんは、「丸子橋」付近では笹船を流して、石組みによって多様になった流れを確認しました。川に降りやすい「めがね橋(畑中橋)」付近ではタモ網を使ってガサガサをして生き物を探しました。
広沢川で親子の皆さんが生き生きと遊ぶ姿をまちづくり協議会の方々が見守っていました。

その後、みんなで捕まえたホトケドジョウ、カワムツ、ヤゴ(オニヤンマやコオニヤンマ、ダビドサナエなど)、ナベブタムシなどを水槽やトレーに移し、「広沢川水族館」ができました。子どもたちは熱心に研究員の解説を聞いていました。

アンケートでは、「楽しかった」「水深が浅くて安心して子どもと遊ぶことができた」「いろんな生き物がいること、意外と遊びやすいことを知った」などの回答がありました。

真夏の日差しが降り注ぐ中でしたが、川づくりによって変化しつつある広沢川を存分に体感していただけた時間になったと思います。

ふるさとの川づくり事業の今後の予定として、川づくり学習会の2回目が、10月に行われる予定です。
(1回目の様子はこちらです↓)
広沢川で川づくり学習会 (第1回の様子)