2025/11/09
トヨタ自動車に勤務し、寮生活をしている社員の皆さんで構成される寮生会は、有志による社会貢献活動を行っており、その一環として2022年から年に1回、百々水辺愛護会の活動を支援されています。今年の支援活動は11月9日(日)に実施されました。
当日はあいにくの雨天となってしまいましたが、それでも例年の半数ほど、約50人の寮生の皆さんが集まりました。まず水辺愛護会の今井会長からあいさつと感謝の言葉、活動の説明があり、続いて研究所の洲崎が河畔林についてのお話をしました。その後愛護会員と寮生の皆さんは4班の混成グループに分かれ、散策路沿いの竹の伐採と2mの長さの玉切り、運搬を行いました。
雨のため活動時間も短縮し、いつもの昼食会も残念ながらとりやめとなりましたが、配られた雨合羽を着て声を掛け合い、元気に活動する若者たちの姿に心励まされました。参加者には竹を伐るボランティアにやりがいや楽しさを感じる方が多く、この活動をきっかけに自身が住む寮の近くの川で護岸整備ボランティアを実行する人も出て来ているそうです(研究所ニュースレターRio No.234参照)。今度はぜひ、ヤブツバキが満開になる冬や、竹林の内外に野の花が咲き乱れる春の晴れた日に現地を訪れて頂きたいと思います。(洲崎燈子)
百々水辺愛護会 今井会長のあいさつ
雨の中でも元気に活動
2025/10/09
2025年10月9日、水辺愛護会・河畔林愛護会の会員を対象とした「河川愛護活動視察研修会」があり、10団体19名が参加しました。この研修会は、河川環境を守る人材育成と矢作川の河川環境に関する見識を深めるために豊田市河川課と豊田市矢作川研究所が毎年開催しているものです。
今年度は、改めて川について学ぶためのダム見学と、ハチクの開花が見られる有間竹林愛護会の活動地訪問をすることになりました。
まず、矢作ダム管理所(国土交通省中部地方整備局矢作ダム管理所)を訪問しました。矢作ダムは豊田市と岐阜県恵那市の境界に位置する放物線アーチ式コンクリートダムで、高さ100m、堤頂長さ323m、今年は完成から54年となるそうです。
矢作ダム管理所では、矢作ダムの5つの役割(洪水調整・農業用水の補給・工業用水の補給・上水道用水の補給・発電)についてのビデオを視聴しました。その後、職員の方からフェンスや選択取水による濁水流出防止対策、25年前に発生した東海豪雨の被害とその後の対応などについて説明を受けました。また、この日見学できなかった堤体内トンネルの様子も画像で紹介して頂きました。参加者の皆さんからは揚水発電やダム湖内の堆砂の処理、ダム操作やダムの寿命、堤体内で貯蔵・熟成されている日本酒などについての質問が矢継ぎ早になされ、関心の高さがうかがえました。その後、ふだんは入れないダム操作室も見学させて頂きました。
次に、ダム管理所の入り口付近でダムの放流を見学しました。微細な水しぶきが見学場所まで届き、迫力がありました。その後、ダム湖面が見える位置に少しだけ移動して、洲崎研究員が2000年に起きた東海豪雨の被災について解説を行いました。山崩れにより、矢作ダムには約110万㎥の土砂(平年値の10年分)と、3万7千㎥(同40年分)の流木が流れ込み、流木は湖面を埋め尽くしました。しかしこれらの被害を繰り返さぬよう、合併前の豊田市が上流の水源林を“自分たちの手で”管理するスタンスをとるようになり、市民ボランティアによる人工林の間伐などの取組も活発化しました。最後に、洲崎研究員は「川を間近で見続けている水辺愛護会の皆さんに、魅力だけでなく脅威も含め、川の大切さを伝える“伝道師”役を担って頂きたい」という願いを述べました。
旭地区の「しきしまの家」での地元産の米や野菜を使ったおいしいお昼をとった後、有間(あんま)竹林愛護会の活動地であるハチクの竹林を訪問しました。活動地の広場に行くと、これまでの活動紹介パネルがきれいに並んでいました。写真を多用したわかりやすいパネルに、参加者の皆さんは釘付けでした。
有間竹林愛護会の原田茂男会長からの活動報告では、竹が密生した状態から、まずは10年計画で間伐を進め、活動地を二分して5年ずつ整備したこと、その後一度活動の区切りをつけ、再度会員を募って再始動したこと、タケノコを水煮にして出荷したこと、地域の園児にタケノコ掘りに来てもらい、小学生には竹馬づくりなどを指導して交流したこと、学生や企業ボランティアを受け入れてきたことなどが紹介されました。地元の木材を使って、会員である棟梁が指揮して立派な「竹林ふれあいの小屋」も建築されています。
続いて洲崎研究員から、ハチクの生態についての解説がありました。ハチクは全国的に120年程度に一度と言われる開花時期を迎えて枯死(こし)しつつあり、有間竹林愛護会の活動地でも竹林全体が茶色に変色しています。洲崎研究員は、「この状況は大変残念なことですが、120年に一度の開花という神秘的な現象にめぐり合うことができたと捉え、その過程を見届けましょう」と呼びかけました。
参加者の皆さんからは、少人数で約6haの竹林の良好な景観を維持されてきたことへの感嘆やねぎらいの言葉、ハチクの生態に関する質問などが次々に上がりました。
研修を終えてのアンケートでは、「矢作ダムの役割、管理の重要性が良く分かった」「竹林(管理)の活動と竹の生命周期について、初めて聞くことが多く興味が持てました」などの回答をいただきました。
この研修会によって、川への理解が深まり、今後の水辺愛護会活動への活力のもととなることを願います。
(吉橋久美子・洲崎燈子)
2025/09/30
2025年9月30日に平井小学校2年生(40人)が岩本川で川学習を行いました。
今年6月の川学習は雨により室内学習でしたが、今回は念願の現地での学習となりました。岩本川で草刈りなどをして川に入りやすい空間を維持している岩本川創遊会の小野内康伊会長と、岩本川で遊んで育ってきた大学生のKさん、研究所がサポートしました。
まず、小野内会長が川に入るときの心得を、Kさんが生き物の捕り方を説明しました。
その後、2年生の皆さんは岩本川に入り、ガサガサを行って生き物を採集しました。川幅は、片足のつま先にもう片方の足のかかとをつける形で歩いて測り、川の深さは自分の足のどの辺まで来るかで測り、川の流れの速さは、ひもを付けたペットボトルを一定区間流すやり方で測りました。皆さんは川を楽しそうに行き来しながら「この辺に魚いそう!」「ここ結構深いよ」などと声を掛け合い、生き生きと川学習に取り組んでいました。
教室に戻った後は、研究所の山本大輔研究員から生き物についての解説がありました。岩本川で採れた生き物の動きを画面上で観察するとともに、『岩本川生き物図鑑』※も活用しながらの学習でした。ヤゴの多様な形態や、オイカワとカワムツの見分け方、ニシシマドジョウとホトケドジョウで異なる口の位置など、一つ一つの生き物をじっくり見ていきました。
山本研究員からは、「岩本川では、好む場所が違う多様な生き物が採れるが、それは多様な環境がある証であり、その環境を岩本川創遊会が守ってくれている」というお話もありました。そのため、質疑応答では「アメリカザリガニはどういうところが好きですか」といった、生き物が好む場所についての質問が複数の児童から出されました。
暑い一日でしたが、2年生の皆さんは岩本川の魅力を味わってくださったと思います。(吉橋久美子)
※発行編集:一般社団法人ClearWaterProject 監修:豊田市矢作川研究所 協力:豊田市立平井小学校、岩本川創遊会、TOTO水環境基金
2025/09/21
2025年9月21日,籠川の青木橋付近でお魚観察会を行いました.前夜に雨が降りましたが,水位も通常とそれほど変わらず,水の濁りもほとんど無く,無事に実施することができました.
私も籠川でよく魚類採集をしており,30分間の採集結果を所報にまとめたので(小野田,2025),12名の参加者の方にも同じ条件で採集してもらいました.最も多くの種類を捕った方は10種(※コイ科稚魚を除く)で,私よりも多くの魚種を採集していました.聞けば,採集歴11年の猛者とのことで,その結果にも納得です.
所報で作成した「籠川の魚類の絵合わせ図鑑」を使って,採集された魚類等の同定作業にも挑戦してもらいました(16種類 ※重複,底生動物も含む).魚種名の多くを正解できていて,魚類の同定に絵合わせ図鑑が役立ちそうという手応えを得ることができました.驚いたのは,1問以外すべて正解したお子さんがいたことです.彼は毎日のように図鑑を見ているらしく,そのことも好成績につながったようです.
その後は自由にお魚捕りを楽しむ時間としましたが,お昼を過ぎても採集を続ける参加者が続出するほど盛り上がり,遅い昼食を食べることになりました・・・.(小野田 幸生)
2025/09/17
2025年9月17日に、滋賀県立大学より上田洋平先生(専門:地域文化学・地域学)をお招きして、矢作川研究所セミナーを公開で開催しました(22名参加)。上田先生は多世代の住民が共に「ふるさと絵屏風」を創り、活用するまちづくりの手法を開発され、四半世紀にわたる取り組みによってその輪は滋賀県を中心に約60地域に広がっています。
ふるさと絵屏風は春夏秋冬、生老病死、冠婚葬祭などの構造を持ち、主に昭和30年代の暮らしが描きこまれています。そしてその絵の一つ一つに物語が込められています。例えば、琵琶湖の浜に打ち上げられた木の枝を拾う人々の絵から、かつて木の枝は「ごみ」ではなく、「焚きもん(焚き物)」として喜んで拾いに行くものだったことを「絵解き」(解説)をしてもらうと、木の枝の価値の変化に気づかされます。
講演では、このふるさと絵屏風づくりを軸として、地域の記憶を未来につなげる方法、地域の捉え方などについてお話してくださいました。まず「絵解き」として上記のような物語の数々が紹介され、ふるさと絵屏風の制作に関わった方々の体験が生き生きと伝わってきました。上田先生の語り口も魅力的で、ウィットに富んだ言葉選びに会場では笑いも起きていました。
ふるさと絵屏風の制作は(1)五感体験アンケート(2)聞き取り(3)絵図の制作(4)絵図の活用の各段階から成り、この一連のプロセスを「心象図法」と呼ぶそうです。制作過程の写真からは、多世代の住民が楽しく熱心に関わっている様子がわかりました。この取り組みの背景には、次のような、上田先生の地域への温かい眼差しがあります。
・地域においては「ここで・ともに・ぶじに・生きる」ことを願い、継続するための暮らし方や仕組み、「無事の文化」があった。これをビジネスモデルならぬ「ブジネスモデル」として尊重する。
・ふるさと絵屏風は庶民の暮らしを描く「絵画ドラマ」であり、体験からくる「身識(みしき)」を素材として描くものである。
・「ふるさと絵屏風」の制作および活用は暮らしや文化、地域資源の再発見と再評価などにつながるまちづくりである。
これらの深い考え方が背骨となり、ふるさと絵屏風づくりを支えていることがわかりました。
講演の後、参加者が「五感アンケート」に記入して共有するグループワークの時間があり、ふるさと絵屏風の制作過程を疑似体験しました。よく練られたアンケートで、各グループで話に花が咲いていました。とても興味深い講演やグループワークであったことから、講演終了後も上田先生と話し込む参加者の姿が見られました。
アンケートでは、上田先生への感謝の言葉と共に「地域の方とつながりたい、地域にもっと目を向けたい、いろんな興味がわいてきました。絵屏風つくりたくなりました!」「私の祖父・祖母にも五感アンケートをやってもらおうと思いました。」などの感想をいただきました。
講演で触れられた、「近江のブジネスモデル」の「山里の守(もり)をする」感覚は、矢作川の管理を行う人々にも共通すると感じました。また、懸念される「地域の記憶の空洞化」は、矢作川流域に住む人々にとっても課題であると考えます。研究所においても矢作川について語り合う場を設けていきたいと思いました。(吉橋久美子)