矢作川研究所日記

2024/11/13

籠川(かごがわ)でお魚観察会を行いました!

2024年11月10日(日),矢作川学校の一環として籠川の中流域でのお魚観察会を行いました.可児市めだかの楽校のメンバー6名を対象に,タモ網を用いたお魚とりの方法を2種類(「ガサガサ」と「クイクイ」)伝授しました.ガサガサは水辺の植物に隠れた魚を上流から足で追い込んで下流に設置した網に追い込む方法で,クイクイは石の上流側に胴長の靴先を入れ込み石の下に流れを送り込むことで,石の下に隠れた魚を下流に追い込む方法です(詳しくは季刊誌Rio No.228を参照下さい).

今回の採集区間では,昨年の私の調査(1人×30分×3地点)で12種類の魚が確認されており,できるだけ多くの種類を揃えたいとの目標を立て,1時間のお魚採集を行いました.皆さん,魚の色々な隠れ場所を想像しながら,夢中で採集されていました.
残りの1時間で捕れた魚の確認作業を行いました.昨年の調査と同様に確認された種は9種(カワヨシノボリ,カワムツ,ホトケドジョウ,カダヤシ,ニシシマドジョウ,アブラハヤ,オイカワ,ギギ,ヌマチチブ)で,今回確認されなかった3種はギンブナ,ニホンウナギ,アユでした.一方,今回の調査区間で初めて確認された種は4種(カマツカ,ウキゴリ,タモロコ,ブルーギル)で,前2種は参加者の方(永井裕子さん)によって採集されました.人数をかけた集中的な採集の威力を思い知る結果となりました.

今回は,事前の魚類調査結果を活かした学習教材(その場所で採集された魚種の写真一覧やイラストを用いたカード図鑑など)を初めて配布してみました.参加者の方は興味深そうに見ていましたが,どのような印象を持たれたのかが気になるところです.

また,今回は学習教材の作成を手伝ってくれている事務員さん2名も飛び入り参加してくれました.バケツを覗いてみると,多くの魚が捕れていて安心するとともに,魚とりの面白さを感じてもらえたようで嬉しく思いました.(小野田 幸生)


採集の様子1


採集の様子2


採集生物のバット写真の一例

採集されたウキゴリ

学習教材(左:魚種一覧,右:カード図鑑)

終了後の記念撮影



2024/10/29

河川愛護活動視察研修会を実施しました

2024年10月29日、水辺愛護会・河畔林愛護会の会員を対象とした
「河川愛護活動視察研修会」があり、12団体17人が参加しました。
この研修会は、河川環境を守る人材育成と、河川愛護活動についての知識向上のため、
豊田市河川課が毎年開催しているもので、研究所員も同行しました。

今年の訪問先の一つ目は、豊田市の下山エリアにある「下山バークパーク」です。
下山バークパークを運営している株式会社鈴鍵は、近自然工法を用いた河川整備、
ビオトープづくりを行っています。
その実例を見ることで、生物がすみやすい川辺づくりの参考にするため、訪問しました。


下山バークパークでは、樹木廃棄物である木くずをチップにしています。
チップは発酵させて堆肥にしたり、降雨時の土砂流出を防ぐために、
工事直後の法面に吹き付けたりして有効活用しているそうです
(「ウッドチップリサイクルシステム」)。
このような、環境に配慮した複数の取り組みについて説明を受けました。


スライドで説明を受けている様子


積み上げられたチップ


ビオトープは心地の良い林で、池と小さな流れがあり、地面には柔らかなコケが生えていました。
参加者の皆さんは、水辺の生物への興味から、水中のカワニナを見つけて、
ホタルの飛翔の有無を職員の方に尋ねたりしながら、散策しました。


ビオトープの散策


開けた場所で説明を伺う


昼休憩時に河川課と研究所から以下のお知らせをしました。
豊田市には矢作川の整備計画があり、エリアによって、
自然環境の保全と河川空間利用のバランスを考えた整備イメージが設定されています。
研究所では、この「整備計画」よりさらに細やかに、愛護会の活動地を対象に
それまでの管理を振り返り、研究所の知見も反映させてその後の方針を打ち出す
「管理・活動計画」の作成を愛護会に呼びかけてきました。
これまでに7団体が取り組み、今後も作成を希望する愛護会を募集していることをお知らせしました。


午後は松平地区の「太田川(だいたがわ)」に向かいました。
太田川を維持管理している「太田川河川愛護会」は、
ちょうど昨年度、「管理・活動計画」を作成しました。
その計画図を見ながら現場を視察すると共に、計画立案の有効性を感じていただきたい
という思いで訪問先としました。

太田川は豊田市が初めて近自然工法による改修を行った川で、
季節の花が咲き、夏には親子連れが水遊びをする、親しみやすい川です。
管理・活動計画づくりの話し合いを経て、ホタルが成虫になる時期に
水際の草刈りを控えるようになりました。


上流をのぞむ


質問に答えてくださる平松会長


会長の平松清文さんによると、活動地は現在約500m、会員は10人で月1回、
草刈りとごみ拾いを行っています。2人いる女性会員はごみ拾いの担当だそうです。
毎月の活動によって、太田川は法面の草丈が低く抑えられ、人が入りやすい川となっています。

困っていることは、イノシシに地面を荒らされることで、
一月ほど前に企業ボランティアが地面を均しましたが、
再びイノシシに掘られてしまったそうです。

他にも、水際のヨシがすぐ大きくなって刈りにくいことや、
水際にある石の間の草刈りをする際に足下が見えにくく危険であること、
高齢化と人手不足が課題だと述べられました。
外部からのボランティアはありがたく、
草刈りをしてくれる人が増えると、よりありがたいとのことでした。

同じ愛護会の活動地とあって、参加者は平松さんに質問をしながら、興味深そうに見学しておられました。

雨模様のお天気でしたが、愛護会同士の交流の場ともなった研修会でした。(吉橋久美子)



2024/10/27

一ノ瀬川の昔の思い出を語る会を実施しました

矢作川研究所では、地域の方々と地元の川について語り合い、将来像を描き、それをもとに川を守り育てていこうという「ふるさとの川づくり事業」を行っています。これまで実施した岩本川(豊田市扶桑町・百々町)、広沢川(猿投町)に続き、今年度から、石野地区の一ノ瀬川での取り組みが始まっています。

今回の会に先立ち、8月17日に「一ノ瀬川で遊ぼう」と題して、親子を中心とした地域の方々と生き物探しを行いました。



そして今回、10月27日に寺下公民館にて、「一ノ瀬川の昔の思い出を語る会」を実施しました。2歳から93歳まで、32人の方がご参加くださいました。



最初に最年長の3人の方々から、次に、3人より15歳ほど年下という3人の方々から、昔の一ノ瀬川のことを教えていただきました。昔の一ノ瀬川の姿、川での遊び、生き物を採ったこと、農業の変化や下流の地域との関係など、さまざまなお話を伺うことができました。




昔の一ノ瀬川は今のように、コンクリートで護岸されておらず、子どもでも飛び越えられそうな細い川だったそうです。寺下には大小の水車が二つあり、ゴトン、ゴトンと米をついていました。

一ノ瀬川沿いに生えている草は、かつては重要な資源で、牛の餌用に100m単位で入札が行われたそうです。牛は、昭和20年の終戦直後から田畑を耕すのに飼育されるようになり、昭和30年ごろには一家に一頭ぐらいの牛を飼っていたそうです。その餌として、村では、一ノ瀬川沿いに生えている草を100m単位で入札していたそうです。農業のやり方が変わり、かつては冬も水を張っていた田んぼに水を張らないようになったことで魚が少なくなったのではという言葉もありました。

子どもの頃は、夏休みといえば川。毎日一ノ瀬川で遊び、魚を追ったり、水遊びをしたりしたそうです。細い川だったこともあって、規模の大きな矢作川での思い出でよく耳にする大人の見守りはなく、子どもたちだけで遊んだそうです。
プールがなかった時代、小学校の体育の授業では通称「どんどん」(落差があってどんと水が落ちている、深みのある場所)と呼ばれる場所で泳いだそうです。70代の住民は、中学校でプールができる前に卒業した方、できた後に入学した方がいます。小学校にプールができたのは中学校の後だそうです。

生き物としてはウナギ、フナ、オイカワ、カニ、ツボ(タニシ)などの名前が挙がりました。コンクリート護岸がなかった頃、岩場の穴に手を突っ込んで「アカジジ」(婚姻色の出たオイカワ)を掴んだというお話もありました。

水車の写真付きの説明資料を持参してくださった方は、子ども向けに、「水車の目的はなにか?」という三択クイズをしてくださいました。多くのお子さんが「精米するため」という正解に手を挙げていました。

水車は「ヨンナナ災害」と呼ばれる昭和47(1972)年の水害で壊れてしまったとのことでした。道路も田んぼも水浸しになり、土砂崩れも起きたそうです。その後の復旧工事によって、一ノ瀬川の形が一変したとのことでした。




今回、一ノ瀬川のたくさんの思い出を、小さなお子さんと保護者もいらっしゃる場で共有できたのはとてもよかったと思います。次回は、一ノ瀬川の将来像について考えていきます。今からとても楽しみです。(吉橋久美子)




2024/09/28

2023年に発足した水辺愛護会を訪問しました

豊田市には、矢作川をはじめとする川辺で竹伐りや草刈りなどを行い、景観や、川辺まで人が近づける空間を維持する「水辺愛護会」が25団体あります(2024年現在)。
そのうち3団体は、昨年4月に発足した新しい団体です。この3団体をご紹介するため、お話を伺いに、活動日に訪問しました。発足のきっかけや成果、課題などを、お話をしてくださった方の言葉としてご紹介します。(吉橋久美子)

***【大見川河川愛護会】(準用河川大見川:豊田市大見町)***

古川利孝会長にお話を伺いました。

「2009年に大見町の有志で立ち上げた、ふれあい道路や通学路、ウォーキングコースなどの草刈りをする”大見町を愛する会”が母体です。

水辺愛護会発足の背景には、ホタルをシンボルとした様々な生き物がすみやすい環境を守りたいという思いがありました。大見川ではゲンジボタルもヘイケボタルも飛びます。同じ益富地区の樫尾川で活動する益富蛍友会の方と一緒に矢作川研究所にホタルのことを聞きに行った際に、水辺愛護会の存在を知り、それぞれの川で設立することにしました。会員は昔からこの地区に住む皆さんで、農業をしている方が大半なので草刈りは慣れています。

一年半、草刈りをしてきて、環境を守るという会員の意識は高まったと思います。皆さん協力的で、活動日に出られない人は事前に草を刈ってくれたりします。課題は高齢化ですね。70代の方が多いです。ただ、50代の方も5、6人います。

毎年6月に益富地区で「ホタル観賞会」があり、樫尾川と大見川の2コースが設定されています。大見川でもカワニナはいますが、小学校でもカワニナを育てており、小学生も関心を持ってくれています。ホタルの出る時期には草刈りを控えるなどの配慮をしています。大見川にホタルを見に来てくれるのが嬉しいです。

大見川は昔から、ドジョウやフナなどの魚がいます。大見川は大見という町の名前がついていて、町の人にとって愛着のある川です。」


川の法面の草を刈る。2024年9月28日撮影

川の中からも法面の草刈りをする。2024年9月28日撮影

田んぼや里山のわきを流れる大見川。2024年6月11日撮影

***【樫尾川水辺愛護会】(準用河川樫尾川:豊田市古瀬間町)***

会員の末永義博さんにお話を伺いました。

「20年以上、ゲンジボタルの飼育を支援する活動をしている「益富蛍友会」(※1)が母体です。
この川辺は住民が散歩する川でもあるので、ホタルのためだけではなく、景観の面でも草ぼうぼうではいけないと、草刈りをしています。会員は地元の人ですが、生まれ育ちは地方の人が多いです。課題は高齢化ですね。30代の会員が一人いますが、60過ぎ、70過ぎの人が多いです。

草刈りは、ホタルのことを考えて控える時期があります。水中で生活するホタルの幼虫が上陸して蛹になるころまでは、川の中はできるだけさわりません。ホタル観賞会後は川の中や堤防沿い、それからホタルの幼虫が上陸しやすいように護岸に多孔質の溶岩パネル(※2)を貼ったところもきれいにします。

活動自体は蛍友会の時とあまり変わりませんが、一年半、水辺愛護会としてやってみて、意識が変わってきたと思います。ホタル小屋で飼育するだけじゃいけない、樫尾川をきれいにしてホタルを飛ばそうと。ゲンジボタルの餌になるカワニナなども含めたいろいろな生き物が育つ、そういう川の環境をつくらないといけない(※3)。人間の手がすごく加わった「きれいさ」ではなくて、自然豊かな、という意味での「きれいさ」を目指したいです。」

※1.益富地区では、1987年からゲンジボタルの飼育が行われている。その支援をするために、2001年に益富蛍友会が発足した。
※2.溶岩パネル:多孔質であることで、コケ植物が付着しやすく、ホタルの幼虫が移動しやすい。
※3.蔦(2007)は、草刈りをせずに水中に日差しが入らなくなった水路において、カワニナの稚貝がいなくなり、ゲンジボタルが発生しなくなった例をあげ、草刈りなどの「農家が常日頃行う水路の管理」が「ホタルを象徴とする人と自然が共生する身近な自然の生態系を維持する作業」だとしている。
蔦 幹夫(2007)ホタルの移植と生息地管理方法 ~米沢市小野川の事例.全国ホタル研究会誌,40:19-21.


草刈りを行い、花壇の土を整えた。2024年9月28日撮影


川の中の様子。2024年9月28日撮影


上流から下流を見る。右手には住宅団地がある。2024年6月11日撮影


***【池田川水辺愛護会】(池田川:豊田市池田町) ***

天野泰弘会長にお話を伺いました。

「池田川は左岸に竹が多く、右岸にある部落放送の電線が倒れた竹で切れてしまったことがあります。竹はどんどん攻めてきてどうしても倒れてくるし、イノシシも出るので、竹を伐って緩衝帯を作ろうということと、桜も植えてあるので美観のこともあって、水辺愛護会を設立しました。会員は町の有志です。水辺愛護会の存在は、前区長が区長会の際の紹介で知ったそうです。

去年は8回ほど活動し、竹伐りや草刈りをしました。課題は高齢化ですね。人員不足というか。多世代で住んでいる家が少なくなりました。美観的にはそれなりにきれいになったと思います。積み重ねですかね。たくさんは活動できないですから。部落放送の電線も切れずに済んでいます。草は本当によく伸びますし、竹は一年で大人になるので伐っても伐ってもきりがありませんが、皆さん協力的に活動してくれています。

55年から60年ほど前でしょうか、小学校にプールがなくて、池田川や鞍ヶ池がプールがわりでした。活動地の上流の方、家が建てられていないあたりで、流れを堰き止めて子どもたちは遊んでいました。なかなか、今の状況では子どもは遊べないですね(川の中に草が生い茂る様子を見ながら)。」


左岸で草刈りを行う。2024年9月28日撮影

活動を終えてしばし談笑。2024年9月28日撮影

田んぼと林の間を流れる池田川。2024年6月11日撮影



2024/09/28

太田川河川愛護会の活動をトヨタEX会が支援しました

豊田市の松平地区を流れる太田川(だいたがわ)では、市が1990~99年度に近自然工法(動植物の生息空間と自然景観に配慮した工法)による河川整備をおこないました。2000年には地元住民による「太田川河川愛護会」が発足し、24年間川辺の管理活動を続けておられます。ただ太田川では近年、イノシシによる川辺の掘り返しが頻発し、管理活動の妨げになっています。同愛護会が昨年度、活動の今後を展望するために作成した管理・活動計画でも、「長靴を履かずに一周できる平らな散策路を確保」するという目標が掲げられました。

7月にトヨタ自動車の生産物流支部 製造技術職場EX会の方が、有志で地域住民の活動のお手伝いを通じた社会貢献をしたいと「おいでん・さんそんセンター」に相談されました。センターから当研究所に水辺愛護会での受け入れが可能か打診してくださったことで、EX会による太田川河川愛護会の活動支援が実現しました。
湿度の高い薄曇りの天候となった活動日、愛護会の皆さんがヒガンバナの咲き始めた活動地の上流側で草刈りをされるかたわら、12名のEX会の皆さんが右岸の全域で、スコップを使ってイノシシが掘り返した地面を平らにする作業にいそしみました。2時間の活動が終わる頃には、活動地の通路は平らに均され、安心して歩けるようになりました。

会長さんからはEX会の皆さんへの感謝の言葉と、生き物の豊かな太田川への思い、今後の活動の展望が伝えられました。研究所からは、太田川は愛護会の皆さんが管理してくださっているおかげで冬(シキザクラ:エドヒガン系栽培品種)と春(ソメイヨシノ)の桜、夏のホタル、秋の紅葉と四季折々の自然が楽しめ、川に子どもが入って遊べる環境であること、この活動をきっかけにぜひ身近な川の良さを知り、楽しんで頂きたいとお伝えしました。EX会の皆さんからは、またぜひ活動のお手伝いをしたいとのお言葉を頂くことができました。(洲崎燈子)


活動前のミーティング


地面を均すEX会の皆さん