2025/12/20
お釣土場水辺公園 管理・活動計画作成ワークショップの第1回を2025年11月15日に、第2回を2025年12月20日に行いました。
研究所では、川と関わり、自然と触れ合える地域づくりを目的に、水辺愛護会とともに会の活動についてふりかえり、目指す姿を描く「管理・活動計画」を作成してきました。これまでに7つの水辺愛護会が計画を作成してきましたが、今年度は中越戸水辺愛護会と下越戸水辺愛護会の皆さんと共に、お釣土場水辺公園についての計画を作成することになりました。
お釣土場水辺公園は、矢作川の中流部右岸、越戸町の川辺に位置し、中越戸水辺愛護会の方々が草刈りや間伐などの整備をしてくださっていました。今回、矢作川研究所が、隣接する下越戸水辺愛護会エリアも含めて豊かな植生を守るべく、一体的に考えたいと両愛護会に呼びかけてワークショップを開催しました。
第1回は、両愛護会から11人が参加し、お釣土場水辺公園で植物を観察しながら、植生管理方法案(研究所作成)を現地で確認しました。管理方法案は「親水性、良好な景観の維持」と「生物多様性保全」の両立をめざすものです。方針の一つに、「河畔林を代表するエノキ・ムクノキの世代交代を目指し、若木を育てる(生物の多様性の保全)」があるため、研究員が樹皮や葉の形によるエノキ・ムクノキの見分け方を説明しました。参加者からの意見としては、良好な景観の維持のため、川への見通しを確保したいという声が上がりました。
その後、下越戸自治区区民会館でこれまでの愛護会活動のふりかえりを行いました。
まず、堤防道路から川方向を見た過去と現在の写真を見比べ、川が全く見えない状況から、活動によって現在の川を見通せる景観へと変貌した様子を確認しました。この眺めが維持されていることは大きな成果で、散歩する人が明らかに増えたそうです。会員同士の親睦が深まっていることも成果として挙げられました。
今後の取り組みとしては若木の育成、住民向けの植物観察会の実施、草が繁茂している下流側の草地に一部川辺を歩ける空間を作る、などの案が出ました。活動の安全性への配慮についても話題になりました。
第2回は、両愛護会から15人が参加し、中越戸公民館において将来像などを考えました。
まず、前回のワークショップをふりかえった後、お釣土場付近の思い出を共有しました。川の将来像を考える際、川の歴史やこれまで人々がその川とどのように関わってきたかを共有することが重要であると考え、これまでの管理・活動計画作成においても毎回お聞きしています。学校にプールがなかったころ、子どもたちは矢作川で遊んでおり、下越戸では対岸まで泳いでよかったが、中越戸では禁じられていたことや、「見張り小屋」で親が見守りをしていたことなどが挙げられました。災害については、47(よんなな)豪雨(1972(昭和47)年)でこの地域が浸水して人々がボートで移動する光景が見られたこと、東海豪雨(2000年)では「堤防から手が洗える」ほど矢作川の水位が上がったことなどが語られました。続いて研究所から、さらに時代を遡り、かつて舟運が盛んだったことや、昭和から令和に至る河川整備方針の変遷について説明しました。
次に、前回の意見を反映した「植生管理区分案」を見ていただき、賛同を得ました。活動内容によるゾーニングの変更、地域にとって価値のある植物(七夕行事に使う竹など)の保全などが加わりました。
最後にお釣土場水辺公園の将来像などを考えました。自生する植物群を守ること、安全に歩ける散策路づくり、地域の方々にお釣土場水辺公園の良さが知られている状態(そのために㏚する)などのイメージが出されました。
管理・活動計画は、案を最終形にまとめたものを確認する会を経て、今年度中に完成する予定です。
2025/12/19
2025年12月19日,内田朝子研究員が,第47回東海陸水談話会(於 椙山女学園大学教育学部)の演者として,「川の『健康診断』の新技術」と題した講演を行いました.これは,内田研究員が2025年9月にLimnology and Oceanography Methods誌に発表した「River metabolic rates measured using a transparent tunnel」という論文内容の紹介を中心に,川の「健康診断」の基盤となる光合成と呼吸を測定する技術に関して話題提供をしたものです.
河床の付着藻類などによる光合成量は,一次生産と呼ばれるもので,川の「健康」状態を知るうえで基本的な情報となります.光合成量は,光合成の際に産出される酸素量の増加を計測することで,推定します.これまで,様々な方法で光合成量が推定されてきましたが,「明暗瓶法」や「袋法」(※文末の図解参照)では瓶や袋に水と付着藻類を閉じ込めてしまうことで,自然とは異なる(例えば,流速条件や水交換の条件が異なる)状態での光合成量の推定とならざるを得ませんでした.
この問題は,水の流れる普通の河川で溶存酸素の変化を計測し,光合成量を推定する「オープンメソッド(マスバランス法)」であれば解決できます.ただし,大気と(河川)水との間の酸素移動を推定し,計測値から計算する必要があるため,精度に課題がありました.その課題を解決するため,透明シートを用いた水中トンネルを作成し,大気と(河川)水との間の酸素移動がない状態で溶存酸素の変化を計測することで,より正確な光合成量を測定できる「透明トンネル法」を開発したことが評価され,論文として掲載されました.
談話会では,透明トンネル法の着想にいたる経緯や技術開発での気づきなど論文に記載されたこととされていないことを合わせた情報提供がなされ,質疑応答も大変盛り上がりました.「オープンメソッドで光合成量を評価できない場合の解決策になりそう」との感想も聞かれ,新技術「透明トンネル法」に対する期待の高さがうかがえました.
実際の論文を見てみたい方は,内田研究員(uchida@yahagigawa.jp)まで,是非お問合せを!
明暗瓶法.明条件(光合成と呼吸)と暗条件(呼吸のみ)の瓶の中に付着藻類を入れて,呼吸量を除去した光合成量を推定する方法.
袋法.現地の付着藻類を石ごと袋に入れて,透明の袋(明条件)と黒い袋(暗条件)とを比較することで,呼吸量を除去した光合成量を推定する方法.
講演タイトルの図.画面の真ん中に透明トンネルが確認できる.
透明トンネルの紹介.写真を撮影する参加者も見られた.
2025/12/11
オオカナダモは外来生物法で要注意外来生物に指定されており,日本の侵略的外来種ワースト100にも入っている水草です.
オオカナダモが川底を覆っていた頃の様子(2012/9/13撮影)
矢作川では1990年代中盤にオオカナダモが見られるようになったとの報告があり,2000年代にはその群落が目立つようになってきました.2011年に国土交通省豊橋河川事務所が行った分布調査では,矢作川中流で大規模な群落が広域で確認されました.その後も矢作川漁協,矢作川の環境を守る会,矢作川研究所で調査を継続し,2017年頃まで広い範囲で確認されていましたが,2018年に分布域が大きく減少しました.2018年以降は小康状態が続いています(詳しくはこちら).
ドローンで川面を動画撮影している様子
オオカナダモの分布調査は水位が安定し,濁りの少ない冬の時期に,矢作川中流の平戸橋下流から久澄橋下流までを対象に行っています.以前はアユ釣り舟に乗せていただき,船上から分布状況を確認していましたが,ここ数年はドローンで上空から川面を撮影し,確認しています.
今年も内田研究員とともにドローンを飛ばして調査したところ,分布域は一段と縮小し,ある程度まとまった群落は下の写真の平戸橋下流で見られたのみでした.
外来生物は突如として現れ,爆発的に増加することがよくありますが,その後,衰退してほとんど見られなくなる種,レギュラーとなりいつでも見られるようになる種,優占種となり続ける種など動向は様々です.
矢作川のオオカナダモについては,現在矢作川中流であまり見られなくなっていますが,再び増加傾向に転じるかもしれません.オオカナダモが大繁茂していた時期には「アユの釣り糸にオオカナダモが引っかかる」,「景観が損なわれる」などの問題があり,駆除活動も行われていました.
今後も注意深くオオカナダモの動向を見守っていきたいと思います.
2025/11/30
2025年11月30日、矢作川の中流部の川辺を整備する「下越戸水辺愛護会」(会員28名)の活動に、地元の中学生団体「ジュニアクラブ」のメンバー12名と保護者5名が参加しました。その様子を、後日、会長の川崎学さんに伺いました。
当日は作業に先立って、中学生に対して活動の趣旨と「身近な自然を大切にしよう!」「地域の活動に参加してみよう!」「小さな行動が未来の環境を守る力になります!」というメッセージを伝えたそうです。その後、3年生がリーダーシップを発揮して、事前に伐採されていた竹や刈られた草を一輪車やリヤカーで集積場まで運びました。意欲的に活動する中学生の姿に触発され、愛護会の会員もより積極的に作業に取り組めたとのことでした。
中学生は「大変だったけど楽しかった」「こういう機会があったらまた参加したい」「(ふるまいで出た)豚汁がおいしかった」などの感想を述べたそうです。
本活動は、下越戸水辺愛護会の前身である「下越戸竹伐り隊」が活動をしていた2016年から毎年実施されており(コロナ禍の時期を除く)、継続して中学生が参加していた歴史があります。この実践は、多世代での、川の整備を通じた地域交流の好事例でもあると思います。
2025/11/26
2025年11月26日に平井小学校4年生(46人)が岩本川で川学習を行いました。
今回の川学習は、川岸の土を削ったり、石の配置を変えたりすることで、生物にとってのよりよい環境づくりおよび人にとっての安全性の向上を目指す内容でした。今年5月の「岩本川のこれまでについての学び」、6月の「岩本川の変化の観察会」※1を経て、「岩本川のために何ができるか」について検討を重ねてきた4年生の皆さんの実践となりました。
この実践は、住民団体「岩本川創遊会」も行っている「水辺の小さな自然再生」※2の活動と言えるでしょう。今回も岩本川創遊会の小野内会長と矢作川研究所の山本研究員が学習をサポートしました。
活動範囲の下流側の橋の付近では、以前あった水路が埋まり、水が淀んでいたところに再び水を通すために土を削ったり、岸を削って川幅を広げたりしました。中間地点では、石を両手で運んだり転がしたりしながら移動させてアーチ状の石組みを作ったり、石を流れに沿って並べてみたりするなどして、川の流れを変えました。上流側の橋の付近では、中州によって二股に分かれた水路のうち、水が通っていなかった水路に水を通すために中州と水路の底を削りました。
シャベルやスコップなどを使って土を削ったり、石の配置を変えたりすると川の流れはみるみるうちに変わっていきました。4年生の皆さんからは「超楽しい!」「疲れたけどまだやりたい!」という声が聞こえてきました。水が冷たい秋の活動でしたが、お天気に恵まれ、やりがいのある活動だったと思います。
最後に山本研究員が、4年生の皆さんに「川はどんどん変わっていきます。みんながやったことがどうなっていくか、川に観察に来てください」と呼びかけました。自分たちが手を動かして変化させた川が、生物にとってよりよい環境になっていくか、人にとっての安全性も向上していくか、これからも関心を持って注目してもらえると嬉しいです。
(吉橋久美子)
※1.岩本川について平井小学校の4年生が学びました | 矢作川研究所
※2.多様な主体が連携し、地元住民が主役となって、日曜大工感覚で川の自然再生を目指す活動。
水辺の小さな自然再生 Collaborative Nature Restoration | 「小さな自然再生」研究会(サイト運営)、日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)(サイト管理)
(同ホームページの岩本川の事例紹介 事例紹介 岩本川)