矢作川研究所日記

2023/03/09

有間竹林愛護会の活動に大和ハウス工業株式会社豊田支店が参加しました

矢作川研究所では、河畔林を整備する水辺愛護会の活動に対して、多くの外部ボランティアの方に参加してもらうためにどうすればよいかについて、調査をしています。人手不足の水辺愛護会の活動に、ボランティア実施先を探す企業が参加することで、河畔林の保全が進みます。このような協力体制が、都市部と山間部をつなぐ中間支援組織「おいでん・さんそんセンター」の仲立ちにより実現し、継続されている現場にお邪魔しました。

この日は、旭地区の矢作川の川辺を整備する有間竹林愛護会の活動に、大和ハウス工業株式会社豊田支店の社員25名の方が参加しました。ボランティア休暇制度を利用して自主的に参加した、20代から50代の皆さんです。この活動は2017年からほぼ毎年行われており(コロナ禍で中止になった2021年を除く)、参加者のほとんどが経験者でした。研究所からは2名が参加し、活動前に、河畔竹林整備の意義と市内の水辺愛護会の全体像についての解説を行いました。
有間竹林愛護会の原田茂男会長から、竹を伐る際に跳ね返ることがあるので顔を近づけないことなど、作業上の注意があった後、参加者は、「準備体操」として既に伐られていた竹を片付けのため移動させました。その後、3つのエリアに分かれ、伐るべき竹としてビニール紐が巻かれた竹を間伐しました。お昼を挟み、伐った竹を2m程度の長さに刻みました。後日、車で運び出して処理するためです。
この日は4月並みの陽気となり、竹を伐るのも運ぶのも汗をかきながらの活動でしたが、その甲斐あって、竹林に光が入り、すっきりしました。

参加者に感想をお聞きすると、「あまり地域の人たちと交流することがなく、他の部署の人ともこういう時しかしゃべらないので良い機会になっている。自然体験ができるのがいい。」とのことでした。また、継続して参加している方からは「景色が変わってきて(竹林が良い状態になり)、やりがいを感じる」「愛着が湧いてきた」などの感想をいただきました。参加者のほとんどが県外の出身で「なかなか来ることのなかった地域に来る機会になっている」「ボランティアの後に立ち寄れる観光地を紹介してもらえるといい。またこの地域に子どもを連れてくることもできる」というお声もあり、外部ボランティア誘致のヒントを頂きました。「河畔竹林整備の意義を教えてもらったのでやる気が3倍4倍5倍になりましたよ!」と教えていただいたときは、研究員として嬉しく感じました。 



参加者の向こうに見える竹林がすっきりしました



2023/02/14

水辺愛護会・河畔林愛護会交流会を開催しました。

水辺愛護会・河畔林愛護会(以下、愛護会)の方を主な対象とした交流会を実施しました。16愛護会に加え、春に愛護会となる2団体や、関係機関の方も含め、47名がご参加くださいました。

愛護会は、矢作川などの豊田市を流れる河川の水辺の竹林間伐、草刈りなどを行って、川面が見える景観づくり、川に近づくことの出来る空間の維持、河畔林の生物の多様性の向上などを目指しています。これまで、お互いの愛護会を知る機会が毎年ありましたが、2020年度からはコロナ禍により、愛護会連絡会が開催できず、研修会も2020・2021年度は実施できませんでした。今回の交流会は、この間に新たな愛護会が発足したことや、豊田市山村条例が制定されて、都心地域と山間地域が互いに協力しあう方針が打ち出されていることを受け、改めて愛護会が一堂に会して情報を共有し、交流することを目的に開催されました。

まず、研究所より、愛護会の全体像と、愛護会に向けた研究所の取り組み(「会員が参加してのワークショップによる管理・活動計画の作成支援」、「川辺の恵みの活用」、「企業ボランティアとのマッチング」)をご紹介しました。


愛護会に向けた研究所の取り組み紹介


次に、全22愛護会の紹介タイムを持ちました。
特色ある活動をしておられる有間竹林愛護会、猿投台地区水辺愛護会連絡会(8愛護会+1団体)、百々水辺愛護会、梅坪水辺愛護会、初音川ビオトープ愛護会には、各会長より具体的な活動事例についてご発表いただきました。



*有間竹林愛護会…ハチクのタケノコ活用。私有地に東屋を建築。


*猿投台地区水辺愛護会連絡会…毎月、集まって情報の共有と問題の協議を実施。地域全体で川辺の散策路を整備。


*百々水辺愛護会…流れ橋跡の周りの竹林を間伐。ニホンミツバチの養蜂を実施し、採蜜会に地域の親子を招待。


*梅坪水辺愛護会…小学生がごみをテーマとし、愛護会とともに清掃や啓発を実施。 企業の補助金で機材購入。


*初音川ビオトープ愛護会…活動地をゾーニングし、計画を立てて植生を管理。


各愛護会が持ち寄った資料を見られるように休憩時間を長めにとり、その後に意見交換を行いました。


愛護会の資料を閲覧する様子


梅坪愛護会の展示(子ども達が描いた、ゴミの持ち帰りを促すポスター)


意見交換では、多岐にわたる意見が出ました。近年、企業が社会貢献の場を求めているため、愛護会と企業ボランティアのマッチングの可能性があること、草刈りの負担を軽減する一つの策として、草刈りをする場所と刈り残す場所をゾーン分けしてメリハリをつけること、若い会員を増やすには地域活動に関心を持つ若者を「一本釣り」すること、活動に楽しく取り組むには活動後にみんなで美味しいものを食べることなど、愛護会同士や、愛護会と研究所等の意見のやりとりで、あっという間に時間が過ぎました。



参加者アンケートでは、「他の愛護会のことがわかってよかった」、 「愛護会の全体像が見えた」などのご意見をいただきました。また、もっと知りたいこととして、「伐った竹や刈った草の活用方法」、「竹伐り・草刈りの植生管理の方法」、「安全管理」などの項目が挙がりました。今後はそうしたより具体的なテーマで会を開き、じっくり話し合えることができるとよいと思います。(吉橋)



2022/12/21

研究は“段取りが命”

年の瀬も押し迫った12月下旬のある日、研究所の奥の部屋からガチャガチャと音が。
行ってみると、内田さんと濱野さんが何やら工作中で、よく見ると金属の繋ぎ手にネジを入れ込んでいます。実はこれ、川に透明水路を作って川底の付着藻類の光合成量を調べる研究の“下ごしらえ”で、透明水路のフレームの部品の準備風景の一つでした。


作業中の濱野さん(奥)と内田さん(手前)


透明水路のフレームの概念図


水量の安定しやすい冬季に実験を実施するのですが、かじかんだ手でも水中でパイプをつなぎやすいようにあらかじめネジを少し入れ込んでおくとのこと(少し浮いたネジは手抜きというわけではありません!)。その工夫に感心していると、内田さんからさらに追い打ちが。赤く塗られた繋ぎ手を見せて、「上下方向が分かるように目印も入れている」とのこと。現場での作業を極限まで効率化する努力に驚くばかりでした。


少し浮いたネジ


目印で上下も分かりやすくする工夫


作業中に「料理の下ごしらえと似ている」との話になり、内田さんから「研究は“段取りが命”!」との名言をもらいました。こういう地道な作業も研究の大切な一部だな~としみじみと思いました。 (話し手:内田朝子、聞き手:小野田幸生)



2022/12/20

ドローンを用いた外来水草オオカナダモの分布調査


今年も外来水草オオカナダモの分布をモニタリングする時期になりました。今年は頼みの綱であった船頭さんのご都合が悪く、調査対象の全区間をドローンで確認することになりました。研究所の熟練ドローン操縦士の指導を受け、ドローン操縦に挑戦しました。


スタートさせたドローンは、4つのプロペラを高速回転させ、草や枯れ葉を蹴散らして勢いよく上空に舞い上がりました。手に汗を握り、心に「良い仕事をするんだよ、無事に戻ってくるんだよ」と念じつつ操縦しました。矢作川の水面、岸辺の様子、ドローンに驚く水鳥たちなどなど、モニターに次から次へと上空からの川の情報が映し出されました。まるで自分自身が川の上空で旅しているような、そんな感動を味わうことができました。



将来、スマホでドローン操作ができる時代も到来するのでしょうか。そうなると、ドライブ気分で川に出かけ、車窓から放ったドローンで川の様子を確認し、調査のタイミングも容易に図ることができそうです。夢は膨らむばかりです。

なお、矢作川のオオカナダモの分布変化(2011年~2021年)は令和5年1月1日発行の矢作川研究27号に紹介しました。是非、ご覧ください。



2022/11/04

河川活動現地研修会を開催しました

2022年11月4日、水辺愛護会・河畔林愛護会の方を対象とした河川活動現地研修会を実施し、関係者を含め30名程度が参加しました。愛護会活動と関連の深い、除草や伐竹に取り組む豊田市の2つの団体(めぇープルファームと竹々木々[ちくもく]工房)を視察しました。

めぇープルファームの代表である鈴木光明さんから、ヤギを活用した「ヤギ除草」についてのお話を聞きました。持続可能な社会の実現に向けてヤギ除草の活用が注目を集めていますが、除草効果だけでなく、イベントなどでの集客効果も大きく、若い世代から活動の支持を得られるといった相乗効果も期待できることが分かりました。



竹々木々工房の共同代表である大山侑希さんは、親子参加型の竹林整備メニューを開発して多くの人を巻き込んだ竹林整備を実践するとともに、幼竹をメンマ等に活用することで竹林の再繁茂の抑制までを視野に入れた活動をしています。経験に裏打ちされた、美しい竹林を保つための取組みとそのコツについて、先進的な取組みが紹介されました。地元の有間(あんま)竹林愛護会にはメンマの加工時に協力してもらっているということで、講義後のコメントからは、竹林管理の同志として一体となって活動していることが感じられる一面もありました。



コロナ禍による中断で3年ぶりの研修会の実施となったため、愛護会の近況報告や愛知県・豊田市等からの情報提供もあり、関係者同士の交流や理解を深める機会にもなりました。たとえば、梅坪愛護会の方からは、企業の基金や社会貢献活動を活用して新しい草刈り機材を導入したり人手不足を補ったりする戦略的な取組みが紹介され、持続可能な愛護会活動に役立ちそうな情報提供などもありました。



参加された愛護会の方から多くの質問やコメントがあり、討議も大変盛り上がりました。事後アンケートでも、参考になったとか、今後の活動に活かしたいという意見が多く寄せられました。今後の愛護会の活動のヒントになったようで嬉しく思います。

(豊田市役所河川課 中園・小野田)