2024/05/24
今年もカワヒバリガイ広域調査を愛知工業大学と共同で実施しました。矢作川の上流、黒田ダムの下流から米津橋までの間に15調査地点を約2日で駆け巡る調査です。今日は、五月晴れ気温30℃越えで、汗がにじみました。(内田)
2024/05/20
このたび,ダム工学会から「石礫の露出高の簡易予測モデルを用いたダム下流の河床環境評価手法の開発」について,令和5年度技術開発賞をいただきました.土木研究所自然共生研究センター時代の研究成果に対するもので,矢作川水系で行った精度検証の研究成果も含まれています.
「簡易予測モデル」を開発した宮川幸雄さん(現:リバーフロント研究所)が代表受賞者であり,連名者としては私(小野田幸生)のほか,末吉正尚さん(現:国立環境研究所),堀田大貴さん(現:建設技術研究所),中村圭吾さん(現:土木研究所流域水環境研究グループ長)といった,当時の研究仲間などが名を連ねます(嬉しいお知らせを皆で共有しました!).
技術の詳細については,土木研究所自然共生研究センターのHP「ダム下流の環境評価ツール」をご参照下さい.なお,豊田市矢作川研究所の季刊誌Rio(No.226, 2023)では,露出高の特集を組んでおり,宮川さんには「簡易予測モデル」の紹介記事を書いてもらいました.改めて読んでいただければ幸いです.(小野田幸生)
2024/05/20
5月中旬、研究所の敷地内に生えたヤツデの葉の裏に、扁平で不思議な形をした生きものを見つけました(写真1)。大きさは3~4mmくらい。一枚の葉にいくつか付着していました。葉の一部を切り取って実体顕微鏡で観察すると、体全体が葉裏に密着しており、動く気配はありません。ピンセットを使って体を裏返してみると、もぞもぞと動く3対の脚を確認できました(動画)。体の尾端が中央に向かって深く切れ込んでいるなどの特徴から、カメムシ目カタカイガラムシ科の仲間であることが分かりました。大きさと形態から雌成虫と分かりましたが、残念ながら種まで同定することは出来ませんでした。
この時期は産卵期のようで、雌成虫の近くに孵化して間もない幼虫も確認できました(動画)。幼虫の大きさは約0.3mmと非常に小さいですが、1対の眼と触角や3対の脚が明瞭で、成虫に比べると昆虫らしい姿をしています。小さいながらもヒョコヒョコと歩き回る姿はとてもユーモラス。自由に動き回ることができるのは若齢幼虫の時期(「歩行幼虫」と呼ばれる)だけで、いい場所を見つけて定着するとほとんど移動しなくなるようです(写真2)。
ヤツデの葉裏で見かけた雌成虫の中には、背中の一部が黒くなっている個体が含まれていました(写真3)。シャーレに入れて実体顕微鏡で観察していると、雌成虫の背中に丸い穴があき、中から小さな蜂が!(写真4)。カイガラムシには様々な種類の寄生蜂が報告されており(例えば立川、1957)、出てきたものは寄生蜂の一種と考えられますが、その正体は謎のままです。蜂が出てきた雌成虫は死んでしまいましたが、裏返すとおなかにはたくさんの卵と幼虫を抱えていました。寄生した蜂は最終的に雌成虫を殺してしまいますが、繁殖には影響を及ぼしておらず、そこにはなにやら複雑な関係が存在しているようです。
カイガラムシの仲間は国内で約400種が記録されており(河合、1980)、様々な植物で見ることができる身近な生きものです。見た目だけでなく生態もかなり不思議で、雌は他のカメムシ目と同様に蛹にならずに翅を持たない成虫になりますが、雄は蛹になって翅を持つ成虫になります。しかし、雄が見つかっていない種もたくさんいるようで、それぞれの種の繁殖生態は、害虫とされる種を除くとよく分かっていないのが現状です。まずは同定作業を進めながら、孵化した幼虫がどのように成長していくのか、寄生蜂との関係がどのようになっているのか、雄成虫は出現するのかなど、今後も観察を続けてみたいと思います。(浜崎健児)
【参考資料】
河合省三(1980)日本原色カイガラムシ図鑑.全国農村教育協会.
立川哲三郎(1957)日本産Coccophagus クロヤドリコバチ属(新称)とその寄主.日本応用動物昆虫学会誌.1(1):61-64.
2024/05/18
河畔の維持管理活動をしてくださっている水辺愛護会の多くが、会員数の減少や後継者不足の問題を抱えています。そんな中、外部ボランティアの力を借りて活動の活性化を図っている愛護会が複数おられます。中越戸水辺愛護会には年1回、住友ゴム名古屋工場(豊田市新生町)の皆さんが活動のお手伝いに訪れています。その様子を取材しました。
当日は晴れわたった空の下、朝8時に住友ゴムの社員35名の方が集まり、愛護会がお釣土場水辺公園の上流側に設置したウッドデッキをベースに、公園下流側で愛護会員が伐採した竹や低木を運ぶ作業に汗を流しました。長い竹は3人がかりで運搬。運ばれた木竹は一箇所に集積され、愛護会員が運びやすい長さに玉切りしました。
住友ゴム名古屋工場は地域貢献活動として、年に豊田市内の10の市民活動団体に支援を行っています。中越戸水辺愛護活動への支援は、同社のOBだった愛護会長の森和夫さんの働きかけにより、2019年に始まりました。ボランティア活動に参加する社員の皆さんは、会長はじめ愛護会員の皆さんの人柄に触れ、交流するのを楽しんでおられました。
また、一昨年の明治用水漏水事故の際には、工場も操業停止を余儀なくされ、あらためて矢作川がいかに重要な存在なのか認識し、川に恩返しできる活動に意義を感じるようになったとのお話もうかがいました。
この日は30℃近くまで気温が上がりました。活動は11時過ぎに終了し、おむすびと、愛護会の皆さんお手製の絶品の豚汁を頂いて閉会。愛護会員の飼い犬くんもおさまった最後の記念写真では、みなさんの笑顔と達成感の表情が印象的でした。(洲崎燈子)
2024/05/09
4月に発行したRio 231号「川の小さな藻、もっともっと知って欲しいな」を見たのでと、藻のサンプルを携え、市民の方が研究所を訪ねてくださいました。
早速、小瓶にはいった藻を顕微鏡で観察しました。拡大された微生物をモニターに映すと、たくさんのアオミドロが現れました。サヤミドロも混在しているのがわかりました。アオミドロは、リボン状の葉緑体が螺旋になっていることで同定できます。サヤミドロは、頂帽とよばれるネジのような筋が入った細胞があります。
しばらく観察していると、何か、忙しそうに動いている動物もいました。ワムシの仲間です。彼らは藻や細菌などを食べていました。このように、小さなメダカ池であっても生物たちが繋がっているのです!
依頼者は、「増えて迷惑だなと思っていた藻でも、顕微鏡で観察してみると、少し可愛く、愛着が湧いてきました」と感想を聞かせてくださいました。
藻は皆さんの身近な場所にも生息しています。「これ何かな?」を見つけたら、わずかな量でOK、ジャムの空き瓶やジッパー付き袋などに入れて研究所へお出かけください。お待ちしています!