2026/02/07
2026年2月7日に,豊田産業文化センターの小ホールで,「未来を育む川での学び」をテーマに豊田市矢作川研究所シンポジウムを行いました.今回のシンポジウムは,未来を担う「こども」に着目して,こどもの自然体験の価値について共有することを目的の一つとしました.さらに,川での自然体験を行う際の課題を明らかにすることで,川での学びの継続的な実施や支援についても考えました.
まず,吉冨友恭先生(東京学芸大学環境教育研究センター教授)から「河川の自然体験と地域が支える学び」と題して講演をして頂きました.川は魅力的な学びの場であり,こどもにとっても発達段階に応じた学びが可能で,学びの広がりや深まりも期待できるという内容を聴いて,研究所で実施している川の観察会の意義を再確認することができました.また,豊田市の岩本川で実施した「ふるさとの川づくり」も学びの事例として話題に上げられ,地元の児童たちの川学習が,「気づく→習得する→使う」という深い学びにつながっていることが紹介されました.さらに,川での学びの実践のためには,多くの主体が関わることを踏まえ,地域の専門家が多岐に渡って関わっていくことが望ましいとのメッセージもあり,矢作川研究所に求められる役割は大きいな~と感じました.
その後,矢作川研究所の取組について3題報告しました.
「未来の矢作川を良くするために」と題した内田研究員・白金研究員からの報告では,ふるさとの矢作川に親しむ観察会として「矢作川学校」の取組が紹介されました.矢作川学校は,川遊びを通して元気なこどもを育てることを目的に2002年に開校され,昨年度末までで約660件の講師派遣数,3万人を超える参加者数を有する実績を持ちます.最近では,未来の矢作川を良くするために研究から見える矢作川の実態を伝えたいと,未来の担い手であるこども達に,矢作川を五感で感じてもらう(例:ダム下流の安定化した河床に多い「カワシオグサ」の”ゴワゴワ”した触感)深掘り型の観察会を行ったことも報告されました.
「こども×ガサガサ ―川での楽しい自然体験と学びの一つとして」と題して私(小野田)も報告しました.ガサガサとは,石や草むらに潜む魚を足で驚かして網に追い込む漁法ですが,単に楽しいだけでなく,学びにもつながることを紹介しました.たとえば,魚をたくさん捕るには魚の習性を知る必要があり,捕った魚の名前を知るためには見分け方も学ぶ必要があります.さらに,身近な川に多くの種類の魚がいることを体感すれば,生物多様性への気づきやその保全に繋がることも期待でき,矢作川学校等で行うガサガサは未来を育む川での学びにピッタリなのでは・・・という考えを紹介しました.
「川の学びでこどもの認識はどう変わる?―小学生を対象にした調査から」と題した吉橋研究員からの報告では,岩本川における小学生の川学習(生きもの採集を含む)の効果を分析した結果が紹介されました.川学習の前後で児童が描いた川の絵を比較した研究では,「生きものが草むらに隠れている状況」が絵に描かれるようになり,生きものの生息場利用への理解が深まった事例などが報告されました.また,アンケート調査を用いた研究の紹介では,捕獲などの体験によって生きものへの関心が高まる傾向についても報告されました.
最後のパネルディスカッションでは「川での学びを続けるために」をテーマに討論が行われました.パネリストは吉冨友恭先生のほか,谷口隆さん(小学校教員),山口健一さん(市民ボランティア),矢部ユカさん(日本カメ自然誌研究会)の計4名で,コーディネーターは山本研究員が務めました.
まず,実態として豊田市内の小学校の約半数が授業で川に行っている一方で,行っていない小学校も約半数あるという調査結果が共有されました.川での体験型学習ができない理由も共有されましたが,そのうちの「教え方が分からない」などの理由は,矢作川学校に講師を依頼される小学校の先生からもよく聞かれるもので,納得のものでした.ただし,パネリストの方からは「まずは川に行って,楽しむことが大切!」や「教えすぎず,感じてもらうことも大切!」という意見が出され,川の生きもの採集などで楽しんだ経験を持っているパネリストならではの積極的な意見だと感じました.
川の学びを続けるためには,先生などの指導者に「川に行って楽しんでみよう!」という気持ちを持ってもらうこと,それを実行へと促す誘導が重要なのだと知りました.そのためには,指導者の方に川の生きもの採集などを通じて,川の魅力や楽しさを体感してもらう必要があると感じました.(私の経験と反省として・・・)ついつい教えすぎてしまうこともありますが,こどもも大人も含めて参加者自身で川の楽しさに気づいてもらうよう,見守る姿勢が大切なんだな~としみじみ感じたシンポジウムでした.