2025/09/30
2025年9月30日に平井小学校2年生(40人)が岩本川で川学習を行いました。
今年6月の川学習は雨により室内学習でしたが、今回は念願の現地での学習となりました。岩本川で草刈りなどをして川に入りやすい空間を維持している岩本川創遊会の小野内康伊会長と、岩本川で遊んで育ってきた大学生のKさん、研究所がサポートしました。
まず、小野内会長が川に入るときの心得を、Kさんが生き物の捕り方を説明しました。
その後、2年生の皆さんは岩本川に入り、ガサガサを行って生き物を採集しました。川幅は、片足のつま先にもう片方の足のかかとをつける形で歩いて測り、川の深さは自分の足のどの辺まで来るかで測り、川の流れの速さは、ひもを付けたペットボトルを一定区間流すやり方で測りました。皆さんは川を楽しそうに行き来しながら「この辺に魚いそう!」「ここ結構深いよ」などと声を掛け合い、生き生きと川学習に取り組んでいました。
教室に戻った後は、研究所の山本大輔研究員から生き物についての解説がありました。岩本川で採れた生き物の動きを画面上で観察するとともに、『岩本川生き物図鑑』※も活用しながらの学習でした。ヤゴの多様な形態や、オイカワとカワムツの見分け方、ニシシマドジョウとホトケドジョウで異なる口の位置など、一つ一つの生き物をじっくり見ていきました。
山本研究員からは、「岩本川では、好む場所が違う多様な生き物が採れるが、それは多様な環境がある証であり、その環境を岩本川創遊会が守ってくれている」というお話もありました。そのため、質疑応答では「アメリカザリガニはどういうところが好きですか」といった、生き物が好む場所についての質問が複数の児童から出されました。
暑い一日でしたが、2年生の皆さんは岩本川の魅力を味わってくださったと思います。(吉橋久美子)
※発行編集:一般社団法人ClearWaterProject 監修:豊田市矢作川研究所 協力:豊田市立平井小学校、岩本川創遊会、TOTO水環境基金
2025/09/21
2025年9月21日,籠川の青木橋付近でお魚観察会を行いました.前夜に雨が降りましたが,水位も通常とそれほど変わらず,水の濁りもほとんど無く,無事に実施することができました.
私も籠川でよく魚類採集をしており,30分間の採集結果を所報にまとめたので(小野田,2025),12名の参加者の方にも同じ条件で採集してもらいました.最も多くの種類を捕った方は10種(※コイ科稚魚を除く)で,私よりも多くの魚種を採集していました.聞けば,採集歴11年の猛者とのことで,その結果にも納得です.
所報で作成した「籠川の魚類の絵合わせ図鑑」を使って,採集された魚類等の同定作業にも挑戦してもらいました(16種類 ※重複,底生動物も含む).魚種名の多くを正解できていて,魚類の同定に絵合わせ図鑑が役立ちそうという手応えを得ることができました.驚いたのは,1問以外すべて正解したお子さんがいたことです.彼は毎日のように図鑑を見ているらしく,そのことも好成績につながったようです.
その後は自由にお魚捕りを楽しむ時間としましたが,お昼を過ぎても採集を続ける参加者が続出するほど盛り上がり,遅い昼食を食べることになりました・・・.(小野田 幸生)
2025/09/17
2025年9月17日に、滋賀県立大学より上田洋平先生(専門:地域文化学・地域学)をお招きして、矢作川研究所セミナーを公開で開催しました(22名参加)。上田先生は多世代の住民が共に「ふるさと絵屏風」を創り、活用するまちづくりの手法を開発され、四半世紀にわたる取り組みによってその輪は滋賀県を中心に約60地域に広がっています。
ふるさと絵屏風は春夏秋冬、生老病死、冠婚葬祭などの構造を持ち、主に昭和30年代の暮らしが描きこまれています。そしてその絵の一つ一つに物語が込められています。例えば、琵琶湖の浜に打ち上げられた木の枝を拾う人々の絵から、かつて木の枝は「ごみ」ではなく、「焚きもん(焚き物)」として喜んで拾いに行くものだったことを「絵解き」(解説)をしてもらうと、木の枝の価値の変化に気づかされます。
講演では、このふるさと絵屏風づくりを軸として、地域の記憶を未来につなげる方法、地域の捉え方などについてお話してくださいました。まず「絵解き」として上記のような物語の数々が紹介され、ふるさと絵屏風の制作に関わった方々の体験が生き生きと伝わってきました。上田先生の語り口も魅力的で、ウィットに富んだ言葉選びに会場では笑いも起きていました。
ふるさと絵屏風の制作は(1)五感体験アンケート(2)聞き取り(3)絵図の制作(4)絵図の活用の各段階から成り、この一連のプロセスを「心象図法」と呼ぶそうです。制作過程の写真からは、多世代の住民が楽しく熱心に関わっている様子がわかりました。この取り組みの背景には、次のような、上田先生の地域への温かい眼差しがあります。
・地域においては「ここで・ともに・ぶじに・生きる」ことを願い、継続するための暮らし方や仕組み、「無事の文化」があった。これをビジネスモデルならぬ「ブジネスモデル」として尊重する。
・ふるさと絵屏風は庶民の暮らしを描く「絵画ドラマ」であり、体験からくる「身識(みしき)」を素材として描くものである。
・「ふるさと絵屏風」の制作および活用は暮らしや文化、地域資源の再発見と再評価などにつながるまちづくりである。
これらの深い考え方が背骨となり、ふるさと絵屏風づくりを支えていることがわかりました。
講演の後、参加者が「五感アンケート」に記入して共有するグループワークの時間があり、ふるさと絵屏風の制作過程を疑似体験しました。よく練られたアンケートで、各グループで話に花が咲いていました。とても興味深い講演やグループワークであったことから、講演終了後も上田先生と話し込む参加者の姿が見られました。
アンケートでは、上田先生への感謝の言葉と共に「地域の方とつながりたい、地域にもっと目を向けたい、いろんな興味がわいてきました。絵屏風つくりたくなりました!」「私の祖父・祖母にも五感アンケートをやってもらおうと思いました。」などの感想をいただきました。
講演で触れられた、「近江のブジネスモデル」の「山里の守(もり)をする」感覚は、矢作川の管理を行う人々にも共通すると感じました。また、懸念される「地域の記憶の空洞化」は、矢作川流域に住む人々にとっても課題であると考えます。研究所においても矢作川について語り合う場を設けていきたいと思いました。(吉橋久美子)
2025/09/06
2025年9月6日,ポートメッセなごやにおいて開催された動物学会のミニ講演会でガサガサ(足で川岸の植物などをガサガサして魚などを取る方法)の魅力について紹介しました(山本大輔研究員,吉橋久美子研究員との共同発表).
まず,矢作川学校で実施しているガサガサの写真を用いて,魚の習性を理解して行う「正しいガサガサ」について説明しました.覚えておきたい魚の習性は,①魚は石や草の陰に隠れるのが好き,②流れの変化に敏感である,③物や壁などに沿って逃げる,の3点です.それを理解すれば,「水面に張り出した奥行のある草の陰を狙い,川岸や川底に網を付けて設置し,設置した網を動かさないように注意して,ガサガサと魚を驚かして網に入ってもらう」というガサガサのコツを実践するのみとなります.
その地域ごとに網で多くとれやすい順に魚を配置した「絵合わせ図鑑」も紹介しました(小野田,2025).研究者も図鑑を使って魚種の名前を調べますが,その種の分布域と採集場所から採集される可能性のある種を絞り込みます.この図鑑は,地域ごとに採集された種を紹介することで,分布域の知識が無くても魚種の絞り込みができるようになっています.
また,ガサガサなどの自然体験は河川愛護の精神の醸成にも役立っており,豊田市の「ふるさとの川づくり事業」にもつながっていることも紹介しました.「ふるさとの川」は付近の小学校の環境教育の場としても活用されており,その効果は子どもたちの事前・事後での絵の変化に見ることができます(吉橋・山本,2020).たとえば,海にいる生きものも描いていた子が川にいる生きもののみを描くようになったり,生きものの描写がより写実的になったりします.ガサガサとの関連では,生きものが草むらと一緒に描かれるようになり,生きものの隠れ場所を体感的に理解できたことも読み取れます.
「ガサガサの魅力」は,もちろん楽しいことにつきます.良い場所を狙って魚を捕れるかどうかというドキドキ感,新たな魚種との出会いなどの意外性も魅力の一つと言えるでしょう.個人的には「狩猟本能が刺激され,採集欲が満たされる」のも,根源的な楽しさと関連していると思います.さらに,動物学会との関連で言えば,ガサガサは動物学への入門のきっかけになり得るとも考えています.魚の習性の理解(→生理学や生態学),魚種の見分け(→分類学),生物多様性への気づきとその保全(→保全生物学)などへの発展も期待できます.そんなガサガサを皆さんにも楽しんでもらいたいというメッセージを伝えて来ました.
講演後に高校の先生から,「正しいガサガサの仕方やガサガサの魅力が分かったので,今後の活動で伝えたい!」との感想を頂きました.ガサガサの魅力を伝えることで,ガサガサのファンが増えて,身近な川の環境に関心を持つ人が育つといいなと思っています.
(小野田 幸生)
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・ 小野田幸生(2025)効果的な川学習の教材作成に向けたタモ網を用いた籠川での魚類調査.矢作川研究,29:7-22.
・ 吉橋久美子・山本大輔(2020)子どもが描いた「川と生き物の絵」は川学習の前後でどのように変化したか.矢作川研究,24:55-67.