2024/12/16
このモニタリング調査は2011年以降、年に1回、出水のほとんどない冬季に実施しています。調査を始めた頃は、アユの釣り舟で川下りをしながら繁茂するオオカナダモを把握していました。しかし、近年、高齢化に伴い、調査の相棒となってくださる船頭さんが激減しました。ドローンを利用すると、上空から水中の様子を短時間で撮影でき、とても便利ですが、釣り舟に驚いて飛び立つ水鳥や川の主ヅラをしたコイに出会うという楽しみが減りました。
オオカナダモが最も多かったのは2011年頃で、場所によっては水面を覆い尽くすほどに繁茂していました。オオカナダモの繁茂面積は、2018年に激減してから小康状態にあります(内田ほか 2023) 。今年の状況は、大繁茂していた頃と比較すると、ほとんど生育していないと言えるほどですが、それでも局所的にオオカナダモの小さな群落を確認しました。今後も大繁茂の抑制に向けて、オオカナダモの動向をモニタリングしていく予定です。(内田 朝子)
※内田朝子・白金晶子・椿 涼太(2023)矢作川におけるオオカナダモ(Egeria densa Planch.)の分布と出水撹乱(底面せん断応力)との関係.矢作川研究27:11-17.
2024/12/06
ちょっと前(2024/10/18)の話になりますが,アユの産卵場調査の休憩時に不思議な光景を目にしました.川辺の石の上に落ちた鳥の糞に蝶が集まっているのです.蝶を撮影しようと近づくと一旦は飛び去りますが,また近くに降り立ち,糞に寄っていきます.よく見るとストロー(口吻)を伸ばして,鳥の糞を舐めているようです.
しばらく見ていると,複数種の蝶(アカボシゴマダラ,コムラサキ,シジミチョウ科の一種 ※Google Lens等を使用して種名検索)が集まってきて,「糞にたかっている」状態でした(ハエももちろんたかっていましたが…).
後日,ネットで調べると鳥の糞を吸う蝶に関する記述をみつけることができ,鳥の糞から繁殖や体細胞維持に必要な栄養素(ナトリウムやアンモニア)を補給するための行動のようで,オスによく見られるとのことでした(Honda et al. 2012参照).乾いた鳥の糞に水滴を出して湿らせて,その液体を吸っているようですが,この観察時に小雨が降ってきて(写真の水滴に注目),水滴を出す手間を省いているのかなとも思いました.
アユ産卵期には,産卵のために蝟集したアユ親魚を食べるためにカワウなどが集まっていることがあります.今回川辺で観察したこの鳥の糞にも,きっとアユの栄養が含まれているでしょう.そう考えると,アユ→鳥→(糞)→蝶という繋がりがあり,アユは蝶も支えているとみることができる…としみじみと思った休憩時間でした.(小野田 幸生)