2024/09/28
豊田市には、矢作川をはじめとする川辺で竹伐りや草刈りなどを行い、景観や、川辺まで人が近づける空間を維持する「水辺愛護会」が25団体あります(2024年現在)。
そのうち3団体は、昨年4月に発足した新しい団体です。この3団体をご紹介するため、お話を伺いに、活動日に訪問しました。発足のきっかけや成果、課題などを、お話をしてくださった方の言葉としてご紹介します。(吉橋久美子)
***【大見川河川愛護会】(準用河川大見川:豊田市大見町)***
古川利孝会長にお話を伺いました。
「2009年に大見町の有志で立ち上げた、ふれあい道路や通学路、ウォーキングコースなどの草刈りをする”大見町を愛する会”が母体です。
水辺愛護会発足の背景には、ホタルをシンボルとした様々な生き物がすみやすい環境を守りたいという思いがありました。大見川ではゲンジボタルもヘイケボタルも飛びます。同じ益富地区の樫尾川で活動する益富蛍友会の方と一緒に矢作川研究所にホタルのことを聞きに行った際に、水辺愛護会の存在を知り、それぞれの川で設立することにしました。会員は昔からこの地区に住む皆さんで、農業をしている方が大半なので草刈りは慣れています。
一年半、草刈りをしてきて、環境を守るという会員の意識は高まったと思います。皆さん協力的で、活動日に出られない人は事前に草を刈ってくれたりします。課題は高齢化ですね。70代の方が多いです。ただ、50代の方も5、6人います。
毎年6月に益富地区で「ホタル観賞会」があり、樫尾川と大見川の2コースが設定されています。大見川でもカワニナはいますが、小学校でもカワニナを育てており、小学生も関心を持ってくれています。ホタルの出る時期には草刈りを控えるなどの配慮をしています。大見川にホタルを見に来てくれるのが嬉しいです。
大見川は昔から、ドジョウやフナなどの魚がいます。大見川は大見という町の名前がついていて、町の人にとって愛着のある川です。」
***【樫尾川水辺愛護会】(準用河川樫尾川:豊田市古瀬間町)***
会員の末永義博さんにお話を伺いました。
「20年以上、ゲンジボタルの飼育を支援する活動をしている「益富蛍友会」(※1)が母体です。
この川辺は住民が散歩する川でもあるので、ホタルのためだけではなく、景観の面でも草ぼうぼうではいけないと、草刈りをしています。会員は地元の人ですが、生まれ育ちは地方の人が多いです。課題は高齢化ですね。30代の会員が一人いますが、60過ぎ、70過ぎの人が多いです。
草刈りは、ホタルのことを考えて控える時期があります。水中で生活するホタルの幼虫が上陸して蛹になるころまでは、川の中はできるだけさわりません。ホタル観賞会後は川の中や堤防沿い、それからホタルの幼虫が上陸しやすいように護岸に多孔質の溶岩パネル(※2)を貼ったところもきれいにします。
活動自体は蛍友会の時とあまり変わりませんが、一年半、水辺愛護会としてやってみて、意識が変わってきたと思います。ホタル小屋で飼育するだけじゃいけない、樫尾川をきれいにしてホタルを飛ばそうと。ゲンジボタルの餌になるカワニナなども含めたいろいろな生き物が育つ、そういう川の環境をつくらないといけない(※3)。人間の手がすごく加わった「きれいさ」ではなくて、自然豊かな、という意味での「きれいさ」を目指したいです。」
※1.益富地区では、1987年からゲンジボタルの飼育が行われている。その支援をするために、2001年に益富蛍友会が発足した。
※2.溶岩パネル:多孔質であることで、コケ植物が付着しやすく、ホタルの幼虫が移動しやすい。
※3.蔦(2007)は、草刈りをせずに水中に日差しが入らなくなった水路において、カワニナの稚貝がいなくなり、ゲンジボタルが発生しなくなった例をあげ、草刈りなどの「農家が常日頃行う水路の管理」が「ホタルを象徴とする人と自然が共生する身近な自然の生態系を維持する作業」だとしている。
蔦 幹夫(2007)ホタルの移植と生息地管理方法 ~米沢市小野川の事例.全国ホタル研究会誌,40:19-21.
***【池田川水辺愛護会】(池田川:豊田市池田町) ***
天野泰弘会長にお話を伺いました。
「池田川は左岸に竹が多く、右岸にある部落放送の電線が倒れた竹で切れてしまったことがあります。竹はどんどん攻めてきてどうしても倒れてくるし、イノシシも出るので、竹を伐って緩衝帯を作ろうということと、桜も植えてあるので美観のこともあって、水辺愛護会を設立しました。会員は町の有志です。水辺愛護会の存在は、前区長が区長会の際の紹介で知ったそうです。
去年は8回ほど活動し、竹伐りや草刈りをしました。課題は高齢化ですね。人員不足というか。多世代で住んでいる家が少なくなりました。美観的にはそれなりにきれいになったと思います。積み重ねですかね。たくさんは活動できないですから。部落放送の電線も切れずに済んでいます。草は本当によく伸びますし、竹は一年で大人になるので伐っても伐ってもきりがありませんが、皆さん協力的に活動してくれています。
55年から60年ほど前でしょうか、小学校にプールがなくて、池田川や鞍ヶ池がプールがわりでした。活動地の上流の方、家が建てられていないあたりで、流れを堰き止めて子どもたちは遊んでいました。なかなか、今の状況では子どもは遊べないですね(川の中に草が生い茂る様子を見ながら)。」
2024/09/28
豊田市の松平地区を流れる太田川(だいたがわ)では、市が1990~99年度に近自然工法(動植物の生息空間と自然景観に配慮した工法)による河川整備をおこないました。2000年には地元住民による「太田川河川愛護会」が発足し、24年間川辺の管理活動を続けておられます。ただ太田川では近年、イノシシによる川辺の掘り返しが頻発し、管理活動の妨げになっています。同愛護会が昨年度、活動の今後を展望するために作成した管理・活動計画でも、「長靴を履かずに一周できる平らな散策路を確保」するという目標が掲げられました。
7月にトヨタ自動車の生産物流支部 製造技術職場EX会の方が、有志で地域住民の活動のお手伝いを通じた社会貢献をしたいと「おいでん・さんそんセンター」に相談されました。センターから当研究所に水辺愛護会での受け入れが可能か打診してくださったことで、EX会による太田川河川愛護会の活動支援が実現しました。
湿度の高い薄曇りの天候となった活動日、愛護会の皆さんがヒガンバナの咲き始めた活動地の上流側で草刈りをされるかたわら、12名のEX会の皆さんが右岸の全域で、スコップを使ってイノシシが掘り返した地面を平らにする作業にいそしみました。2時間の活動が終わる頃には、活動地の通路は平らに均され、安心して歩けるようになりました。
会長さんからはEX会の皆さんへの感謝の言葉と、生き物の豊かな太田川への思い、今後の活動の展望が伝えられました。研究所からは、太田川は愛護会の皆さんが管理してくださっているおかげで冬(シキザクラ:エドヒガン系栽培品種)と春(ソメイヨシノ)の桜、夏のホタル、秋の紅葉と四季折々の自然が楽しめ、川に子どもが入って遊べる環境であること、この活動をきっかけにぜひ身近な川の良さを知り、楽しんで頂きたいとお伝えしました。EX会の皆さんからは、またぜひ活動のお手伝いをしたいとのお言葉を頂くことができました。(洲崎燈子)
2024/09/26
扶桑町・百々町を流れる岩本川で、平井小学校 2 年生34人が川学習を行いました。
岩本川は「ふるさとの川づくり事業」(※)が行われた川です。この事業をきっかけに、住民団体「岩本川創遊会」が発足し、地域の皆さんが親しみやすく、生き物がすみやすい川を目指して草刈などを行っています。
岩本川創遊会と矢作川研究所は 2017 年から岩本川での川学習をサポートしており、今年も会長と研究員がガサガサの仕方を伝えたり、生き物の解説を行ったりしました。さらに、今回はなんと、岩本川創遊会の会員のお子さんがお手伝いに来ていました。ふるさとの川づくり事業が行われていた当時、小学生で川遊びを楽しんでいた子がもう大学生になっていて驚きました。
2 年生の皆さんは、川での注意事項やガサガサの仕方を学んだ後、まずは何も持たずに川に入り、川を探検しました。「ここは深い!」「流れが速い!」「ジュズダマがある!」など、発見したことを友達や先生と話しながら川を歩きました。その後、網を持ってガサガサをしたり、箱めがねで水中をのぞき込んだりしました。生き物を捕まえると「見て見て!」と他の人に伝え、嬉しそうでした。
教室に戻り、岩本川で採れた生き物をプロジェクターで大きく映して研究員が解説をしました。
暑さが厳しかったため、川に入った時間は 30 分ほどでしたが、今回も岩本川名物「ドジョウ三兄弟」(ドジョウ、ニシシマドジョウ、ホトケドジョウ)が採れました。ヤゴも、何種類も採れていました。この短い時間にいろいろな種類の生き物が採れたことから、岩本川には多様な生き物がすめる、多様な環境があることがわかります。
子どもたちは質問をしたり、探検ノートに絵を描いたりして熱心に学習していました。
川学習をすることで、子どもたちが岩本川をまちの大切な場所と感じてくれることを願っています。
※ふるさとの川づくり事業:地域の皆さんと市役所が一緒になり、川の未来像を描き、安全安心で、自然豊かで、地域の皆さんに愛され、育まれる川を目指す取り組み。岩本川では2015年度から2018年度まで行われた。
(吉橋久美子)