エクスカーションの内容紹介【底生動物編】

2024/08/24

川底の生き物に興味津々!?


「底生動物」とはその名の通り,川や海の底に棲んでいる動物で,魚類やエビ・カニなどの甲殻類,貝類,昆虫類(水生昆虫)などが含まれます.エクスカーションではまず,この底生動物の中でも矢作川で個体数の多い水生昆虫について説明し,底生動物は川の様々な環境指標として利用されており,採集された動物から水質の善し悪しを判断できること,川底の「安定化」の指標になることをお伝えしました.川は本来,浸食と堆積が繰り返される不安定な場所ですが,ダムがあることで,ダム下流の川底では砂が減り,石と石が組み合わさってガチガチになる「安定化」が起こります.この川底が安定化していく過程において,矢作川では水生昆虫のヒゲナガカワトビケラが優占し,最も安定した川底ではオオシマトビケラが優占する(岡田・内田,2016)ことを説明しました.


底生動物の説明


次に参加者のみなさんに川に入って石を拾っていただきました.石が大きく,ガチガチなため,石を川底から持ち上げ,岸辺まで運ぶことにとても苦労されていました.みなさん,採集した大きな石の裏に砂粒や小石がたくさんくっついてくること,そしてたくさんの生き物が付いていることに驚いていました.砂粒や小石は糸で大きな石に繋がれており,ヒゲナガカワトビケラやオオシマトビケラの巣であること(通称「トビケラマンション」)を説明しました.また,みなさんが採集したどの石ににも特定外来生物のカワヒバリガイが付いており,矢作川へ侵入してからの経緯や生活史についてお伝えしました.カワヒバリガイも糸でガッチリと石にくっついているため,どのぐらいの力で引きちぎれるかをみなさんに体感していただきました.


石を拾ってじっくり観察


重い石を岸辺まで移動


石裏の生き物を手に取って観察


カワヒバリガイのくっつき強度を体感中


トビケラマンションとヒゲナガカワトビケラ


オオシマトビケラ


今回のエクスカーションでは矢作川の典型的なダム下流の底生動物を紹介でき,オオシマトビケラやカワヒバリガイなど特定の生物がたくさんいることを実感していただけました.ただ,川にほとんど足を踏み入れたことのない参加者も多かったので,ダムの無い不安定な川底も今後体感していただき,違いを感じてもらえる機会を作れればと思いました.(白金 晶子)


岡田和也・内田臣一(2016)矢作川中流の瀬の底生動物群集 の遷移におけるヒゲナガカワトビケラとオオシマトビケラ の位置付け.矢作川研究,20:1-11.

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