矢作川研究所セミナー「色めく世界の創出者―虫が支える生物多様性と私たちの暮らし―」を開催しました。

2026/09/02

2026年8月6日、名城大学農学部より辻本翔平さんをお招きし、矢作川研究所セミナーを開催しました。今回は15名が参加し、研究所職員のほか、河川課や公園緑地課、水辺愛護会、中部日本みつばちの会など、さまざまな立場の方にご参加いただきました。なお、今回のセミナーは、名城大学の出前講義として依頼し、発表していただきました。


様々な質問が飛び交いました。    


みんな熱心に聴いていました。


セミナーでは、植物の花粉を運ぶ動物である「送粉者(そうふんしゃ)」について学びました。日本で送粉者としてよく知られているものにニホンミツバチがありますが、実際にはマルハナバチなどのハナバチの仲間をはじめ、チョウ、ハエ、アブ、甲虫、鳥、コウモリなど、多様な動物が送粉に関わっています。

辻本さんのお話では、送粉者の種類によって利用しやすい花の色や形は異なるそうです。例えば、ハエの仲間は白色や黄色の皿状の花を訪れることが多く、ハナバチの仲間は筒状の花やお椀状の花、紫色の花など、より多様な色や形の花を利用するとのことでした。こうした送粉者との関わりの中で、現在見られる多種多様な花の姿が生まれてきたと考えられており、植物と動物が互いに影響し合いながら進化してきた過程に、生物同士のつながりの奥深さを感じました。

さらに、農作物の70~80%は送粉者の働きに支えられており、その価値を金額に換算すると数千億円にのぼると推定されている、というお話もありました。日々の食卓や地域の農業が、小さな昆虫をはじめとする送粉者の働きによって支えられていることを、改めて実感する内容でした。


ヤマハッカ(植物)と
ホシホウジャク(昆虫)


ツルボと
キアシトックリバチ


オトコエシと
マルボシヒラタヤドリバエ


こうした送粉者の話は、矢作川流域で行われている地域活動とも関わりがあります。現在、水辺愛護会の中には、河畔環境整備の一環として養蜂に取り組んでいる団体もありますが、ニホンミツバチを安定して育てていくことには難しさもあるようです(例えば、病害虫や農薬等の影響によって働きバチが大量失踪して巣を維持できなくなるなど)。そうした難しさに向き合いながらも、ニホンミツバチだけでなく、身近にいる多様な送粉者にも目を向けることで、河畔環境を整備し続けることの意義を考える視点がさらに広がるように感じました。

今回のセミナーは、送粉者の生態や役割を学ぶだけでなく、河畔環境をどのような視点で見ていくのかを考える機会にもなりました。研究所としても、今回得られた知見を今後の調査やより良い河畔環境の整備に生かしていきたいと思います。


作成者:野田
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