2025/04/27
4月27日に、矢作川中流の右岸、豊田市越戸町の下越戸水辺愛護会(以下愛護会)活動地と、隣接する「お釣土場水辺公園」で、第二弾となる「春の川辺の花観察会」を行い、愛護会の会員約15人が参加してくださいました。この観察会は、4月13日の観察会に参加した方の「自分たちの活動地でも実施してほしい」とのお声がけにより実現しました。
この日は竹林を伐り開いて明るくなった草地からお釣土場水辺公園の林内まで歩き、明るくて頻繁に草刈りや踏みつけを受ける草地と薄暗い林内、その二つの環境の移行帯で、短い距離でも生育する植物が変化するさまを観察することができました。移行帯の半日陰の環境では、クサノオウやツボスミレのお花畑を見ることができました。
愛護会会員の方々は、植物の名前や特徴、見分け方などを次々に研究員に質問し、楽しみながら観察をしていました。「意識せずにただ草刈りをしてしまっていたなあ」という発言も聞かれ、今後の植生管理にも話題が及びました。
植生管理については、研究員から「河畔林の構成樹種の稚樹があれば、伐ってしまわずにその成長を促し、木陰をつくって草の勢いを抑える」、「繁殖力の強い外来種を集中的に刈る」などの工夫により、草刈りの労力を減らすなどの提案をしました。今回の観察会が愛護会の皆さんの植物に対する関心を高めるきっかけとなり、今後の植生管理の工夫にもつながることを願っています。(吉橋久美子・洲崎燈子)
2025/04/13
4月13日に、矢作川中流の右岸、猿投台地区にある「お釣土場水辺公園」で、「春の川辺の花観察会」を行いました。同地区の7つの水辺愛護会の方々を対象とした会で、雨にもかかわらず、15人の方々がご参加くださいました。
お釣土場水辺公園は、矢作川中流の代表的な河畔林として位置づけられ、研究成果に基づいた管理が行われています。この公園は、かつてはマダケの密生林でした。そして、より良い河畔林の管理に向けて、竹をどの程度伐採すれば良いのか、研究所が調査したところでもあります。竹を伐採するほど林床が明るくなり、下草が生えることで植物の種数が増加しましたが、林床が明るくなりすぎると、明るいところを好む外来の草なども生えてきました。つまり、ほどよい明るさの林床にする必要があるということが分かったのです。
参加者のみなさんは、資料を片手に、研究員とやりとりをしながら、春の川辺の花を楽しみました。トウカイタンポポ、ナズナ、タネツケバナ、ヤブツバキなどの花が見られ、カメラを近づけて撮影される方、植物が食用になるかどうかに興味を持つ方など、それぞれに楽しんでいました。
水辺愛護会の方々は日頃から草刈りなどの活動に取り組んでいますが、植物をじっくり見る機会があまりないそうです。「自分たちの活動地でも植物観察会をしてほしい」という声があり、今回の観察会によって植物への関心が高まり、より植物の多様性を意識した管理につながるのではと、嬉しく思いました。(吉橋久美子)
クサノオウなどが見られた場所
ホトケノザは、葉を仏の座に見立てたもの、と説明
花を指して会話したり、撮影したりする参加者
散策路にはたくさんのヤブツバキの落花があった
2024/11/16
2024年11月16日(土)、矢作川の中流域でエクスカーションを行いました。川底の石に着目した夏の回に続く第二弾で、市民の方を対象として、矢作川の川辺を散策しながら自然を味わい、川と人の歴史と今を知り、今後の矢作川について考えるきっかけとしていただくために実施しました。
園児から60代以上の方まで17人の参加がありました。まず、集合した越戸公園付近で、研究所から、河畔林の特性、対岸の「古鼡水辺公園」で行われた近自然工法による護岸工事、川辺を整備する「水辺愛護会」について説明しました
平戸橋下流の「波岩水辺公園」では、かつて景勝地だったことや、治水を巡って両岸住民の駆け引きがあったことなどをお話しました。
お釣土場水辺公園では、「中越戸水辺愛護会」の会長、森和夫さんからお話を伺いました。2016年から、この猿投台地区全体の取り組みとして散策路の整備を始め、眺めを遮っていた竹林を伐開してきたそうです※。地区の7愛護会が連携していること、企業ボランティアを受け入れていることも教えていただきました。
(※2016年から「中越戸竹伐り隊」として活動開始、2020年から現在の愛護会として活動。)
その後、研究員が行う植生調査のうち、「検測棹(けんそくかん)」を使って木の高さを測る方法を見ていただきまし
波岩水辺公園付近では勢いのよい流れ、お釣土場水辺公園付近では静かな流れを見ることができました。足元では様々なキノコが目を引きました。アンケートでは、印象に残った話として、「水害を和らげる人の知恵、歴史」(60代以上)、研究所に期待すること、研究所と共にしたいこととして、「今ある風景を知る解像度を上げる知見を得たい。河川整備の取り組みの成果、経緯を知りたい」(50代)、自由意見として、「楽しかった!!」(10代)、「初めて知ることばかりで川の関心が深まりました」(20代)、「大変勉強になりました」(40代)などの回答を得ました。
また、散策をしながら、川で遊んだ思い出を語ってくださる方が多く、「遊べる川」への期待が高いと感じました。
2024/10/29
2024年10月29日、水辺愛護会・河畔林愛護会の会員を対象とした
「河川愛護活動視察研修会」があり、12団体17人が参加しました。
この研修会は、河川環境を守る人材育成と、河川愛護活動についての知識向上のため、
豊田市河川課が毎年開催しているもので、研究所員も同行しました。
今年の訪問先の一つ目は、豊田市の下山エリアにある「下山バークパーク」です。
下山バークパークを運営している株式会社鈴鍵は、近自然工法を用いた河川整備、
ビオトープづくりを行っています。
その実例を見ることで、生物がすみやすい川辺づくりの参考にするため、訪問しました。
下山バークパークでは、樹木廃棄物である木くずをチップにしています。
チップは発酵させて堆肥にしたり、降雨時の土砂流出を防ぐために、
工事直後の法面に吹き付けたりして有効活用しているそうです
(「ウッドチップリサイクルシステム」)。
このような、環境に配慮した複数の取り組みについて説明を受けました。
ビオトープは心地の良い林で、池と小さな流れがあり、地面には柔らかなコケが生えていました。
参加者の皆さんは、水辺の生物への興味から、水中のカワニナを見つけて、
ホタルの飛翔の有無を職員の方に尋ねたりしながら、散策しました。
昼休憩時に河川課と研究所から以下のお知らせをしました。
豊田市には矢作川の整備計画があり、エリアによって、
自然環境の保全と河川空間利用のバランスを考えた整備イメージが設定されています。
研究所では、この「整備計画」よりさらに細やかに、愛護会の活動地を対象に
それまでの管理を振り返り、研究所の知見も反映させてその後の方針を打ち出す
「管理・活動計画」の作成を愛護会に呼びかけてきました。
これまでに7団体が取り組み、今後も作成を希望する愛護会を募集していることをお知らせしました。
午後は松平地区の「太田川(だいたがわ)」に向かいました。
太田川を維持管理している「太田川河川愛護会」は、
ちょうど昨年度、「管理・活動計画」を作成しました。
その計画図を見ながら現場を視察すると共に、計画立案の有効性を感じていただきたい
という思いで訪問先としました。
太田川は豊田市が初めて近自然工法による改修を行った川で、
季節の花が咲き、夏には親子連れが水遊びをする、親しみやすい川です。
管理・活動計画づくりの話し合いを経て、ホタルが成虫になる時期に
水際の草刈りを控えるようになりました。
会長の平松清文さんによると、活動地は現在約500m、会員は10人で月1回、
草刈りとごみ拾いを行っています。2人いる女性会員はごみ拾いの担当だそうです。
毎月の活動によって、太田川は法面の草丈が低く抑えられ、人が入りやすい川となっています。
困っていることは、イノシシに地面を荒らされることで、
一月ほど前に企業ボランティアが地面を均しましたが、
再びイノシシに掘られてしまったそうです。
他にも、水際のヨシがすぐ大きくなって刈りにくいことや、
水際にある石の間の草刈りをする際に足下が見えにくく危険であること、
高齢化と人手不足が課題だと述べられました。
外部からのボランティアはありがたく、
草刈りをしてくれる人が増えると、よりありがたいとのことでした。
同じ愛護会の活動地とあって、参加者は平松さんに質問をしながら、興味深そうに見学しておられました。
雨模様のお天気でしたが、愛護会同士の交流の場ともなった研修会でした。(吉橋久美子)
2024/09/28
豊田市には、矢作川をはじめとする川辺で竹伐りや草刈りなどを行い、景観や、川辺まで人が近づける空間を維持する「水辺愛護会」が25団体あります(2024年現在)。
そのうち3団体は、昨年4月に発足した新しい団体です。この3団体をご紹介するため、お話を伺いに、活動日に訪問しました。発足のきっかけや成果、課題などを、お話をしてくださった方の言葉としてご紹介します。(吉橋久美子)
***【大見川河川愛護会】(準用河川大見川:豊田市大見町)***
古川利孝会長にお話を伺いました。
「2009年に大見町の有志で立ち上げた、ふれあい道路や通学路、ウォーキングコースなどの草刈りをする”大見町を愛する会”が母体です。
水辺愛護会発足の背景には、ホタルをシンボルとした様々な生き物がすみやすい環境を守りたいという思いがありました。大見川ではゲンジボタルもヘイケボタルも飛びます。同じ益富地区の樫尾川で活動する益富蛍友会の方と一緒に矢作川研究所にホタルのことを聞きに行った際に、水辺愛護会の存在を知り、それぞれの川で設立することにしました。会員は昔からこの地区に住む皆さんで、農業をしている方が大半なので草刈りは慣れています。
一年半、草刈りをしてきて、環境を守るという会員の意識は高まったと思います。皆さん協力的で、活動日に出られない人は事前に草を刈ってくれたりします。課題は高齢化ですね。70代の方が多いです。ただ、50代の方も5、6人います。
毎年6月に益富地区で「ホタル観賞会」があり、樫尾川と大見川の2コースが設定されています。大見川でもカワニナはいますが、小学校でもカワニナを育てており、小学生も関心を持ってくれています。ホタルの出る時期には草刈りを控えるなどの配慮をしています。大見川にホタルを見に来てくれるのが嬉しいです。
大見川は昔から、ドジョウやフナなどの魚がいます。大見川は大見という町の名前がついていて、町の人にとって愛着のある川です。」
田んぼや里山のわきを流れる大見川。2024年6月11日撮影
***【樫尾川水辺愛護会】(準用河川樫尾川:豊田市古瀬間町)***
会員の末永義博さんにお話を伺いました。
「20年以上、ゲンジボタルの飼育を支援する活動をしている「益富蛍友会」(※1)が母体です。
この川辺は住民が散歩する川でもあるので、ホタルのためだけではなく、景観の面でも草ぼうぼうではいけないと、草刈りをしています。会員は地元の人ですが、生まれ育ちは地方の人が多いです。課題は高齢化ですね。30代の会員が一人いますが、60過ぎ、70過ぎの人が多いです。
草刈りは、ホタルのことを考えて控える時期があります。水中で生活するホタルの幼虫が上陸して蛹になるころまでは、川の中はできるだけさわりません。ホタル観賞会後は川の中や堤防沿い、それからホタルの幼虫が上陸しやすいように護岸に多孔質の溶岩パネル(※2)を貼ったところもきれいにします。
活動自体は蛍友会の時とあまり変わりませんが、一年半、水辺愛護会としてやってみて、意識が変わってきたと思います。ホタル小屋で飼育するだけじゃいけない、樫尾川をきれいにしてホタルを飛ばそうと。ゲンジボタルの餌になるカワニナなども含めたいろいろな生き物が育つ、そういう川の環境をつくらないといけない(※3)。人間の手がすごく加わった「きれいさ」ではなくて、自然豊かな、という意味での「きれいさ」を目指したいです。」
※1.益富地区では、1987年からゲンジボタルの飼育が行われている。その支援をするために、2001年に益富蛍友会が発足した。
※2.溶岩パネル:多孔質であることで、コケ植物が付着しやすく、ホタルの幼虫が移動しやすい。
※3.蔦(2007)は、草刈りをせずに水中に日差しが入らなくなった水路において、カワニナの稚貝がいなくなり、ゲンジボタルが発生しなくなった例をあげ、草刈りなどの「農家が常日頃行う水路の管理」が「ホタルを象徴とする人と自然が共生する身近な自然の生態系を維持する作業」だとしている。
蔦 幹夫(2007)ホタルの移植と生息地管理方法 ~米沢市小野川の事例.全国ホタル研究会誌,40:19-21.
上流から下流を見る。右手には住宅団地がある。2024年6月11日撮影
***【池田川水辺愛護会】(池田川:豊田市池田町) ***
天野泰弘会長にお話を伺いました。
「池田川は左岸に竹が多く、右岸にある部落放送の電線が倒れた竹で切れてしまったことがあります。竹はどんどん攻めてきてどうしても倒れてくるし、イノシシも出るので、竹を伐って緩衝帯を作ろうということと、桜も植えてあるので美観のこともあって、水辺愛護会を設立しました。会員は町の有志です。水辺愛護会の存在は、前区長が区長会の際の紹介で知ったそうです。
去年は8回ほど活動し、竹伐りや草刈りをしました。課題は高齢化ですね。人員不足というか。多世代で住んでいる家が少なくなりました。美観的にはそれなりにきれいになったと思います。積み重ねですかね。たくさんは活動できないですから。部落放送の電線も切れずに済んでいます。草は本当によく伸びますし、竹は一年で大人になるので伐っても伐ってもきりがありませんが、皆さん協力的に活動してくれています。
55年から60年ほど前でしょうか、小学校にプールがなくて、池田川や鞍ヶ池がプールがわりでした。活動地の上流の方、家が建てられていないあたりで、流れを堰き止めて子どもたちは遊んでいました。なかなか、今の状況では子どもは遊べないですね(川の中に草が生い茂る様子を見ながら)。」