2025/10/09
2025年10月9日、水辺愛護会・河畔林愛護会の会員を対象とした「河川愛護活動視察研修会」があり、10団体19名が参加しました。この研修会は、河川環境を守る人材育成と矢作川の河川環境に関する見識を深めるために豊田市河川課と豊田市矢作川研究所が毎年開催しているものです。
今年度は、改めて川について学ぶためのダム見学と、ハチクの開花が見られる有間竹林愛護会の活動地訪問をすることになりました。
まず、矢作ダム管理所(国土交通省中部地方整備局矢作ダム管理所)を訪問しました。矢作ダムは豊田市と岐阜県恵那市の境界に位置する放物線アーチ式コンクリートダムで、高さ100m、堤頂長さ323m、今年は完成から54年となるそうです。
矢作ダム管理所では、矢作ダムの5つの役割(洪水調整・農業用水の補給・工業用水の補給・上水道用水の補給・発電)についてのビデオを視聴しました。その後、職員の方からフェンスや選択取水による濁水流出防止対策、25年前に発生した東海豪雨の被害とその後の対応などについて説明を受けました。また、この日見学できなかった堤体内トンネルの様子も画像で紹介して頂きました。参加者の皆さんからは揚水発電やダム湖内の堆砂の処理、ダム操作やダムの寿命、堤体内で貯蔵・熟成されている日本酒などについての質問が矢継ぎ早になされ、関心の高さがうかがえました。その後、ふだんは入れないダム操作室も見学させて頂きました。
次に、ダム管理所の入り口付近でダムの放流を見学しました。微細な水しぶきが見学場所まで届き、迫力がありました。その後、ダム湖面が見える位置に少しだけ移動して、洲崎研究員が2000年に起きた東海豪雨の被災について解説を行いました。山崩れにより、矢作ダムには約110万㎥の土砂(平年値の10年分)と、3万7千㎥(同40年分)の流木が流れ込み、流木は湖面を埋め尽くしました。しかしこれらの被害を繰り返さぬよう、合併前の豊田市が上流の水源林を“自分たちの手で”管理するスタンスをとるようになり、市民ボランティアによる人工林の間伐などの取組も活発化しました。最後に、洲崎研究員は「川を間近で見続けている水辺愛護会の皆さんに、魅力だけでなく脅威も含め、川の大切さを伝える“伝道師”役を担って頂きたい」という願いを述べました。
旭地区の「しきしまの家」での地元産の米や野菜を使ったおいしいお昼をとった後、有間(あんま)竹林愛護会の活動地であるハチクの竹林を訪問しました。活動地の広場に行くと、これまでの活動紹介パネルがきれいに並んでいました。写真を多用したわかりやすいパネルに、参加者の皆さんは釘付けでした。
有間竹林愛護会の原田茂男会長からの活動報告では、竹が密生した状態から、まずは10年計画で間伐を進め、活動地を二分して5年ずつ整備したこと、その後一度活動の区切りをつけ、再度会員を募って再始動したこと、タケノコを水煮にして出荷したこと、地域の園児にタケノコ掘りに来てもらい、小学生には竹馬づくりなどを指導して交流したこと、学生や企業ボランティアを受け入れてきたことなどが紹介されました。地元の木材を使って、会員である棟梁が指揮して立派な「竹林ふれあいの小屋」も建築されています。
続いて洲崎研究員から、ハチクの生態についての解説がありました。ハチクは全国的に120年程度に一度と言われる開花時期を迎えて枯死(こし)しつつあり、有間竹林愛護会の活動地でも竹林全体が茶色に変色しています。洲崎研究員は、「この状況は大変残念なことですが、120年に一度の開花という神秘的な現象にめぐり合うことができたと捉え、その過程を見届けましょう」と呼びかけました。
参加者の皆さんからは、少人数で約6haの竹林の良好な景観を維持されてきたことへの感嘆やねぎらいの言葉、ハチクの生態に関する質問などが次々に上がりました。
研修を終えてのアンケートでは、「矢作ダムの役割、管理の重要性が良く分かった」「竹林(管理)の活動と竹の生命周期について、初めて聞くことが多く興味が持てました」などの回答をいただきました。
この研修会によって、川への理解が深まり、今後の水辺愛護会活動への活力のもととなることを願います。
(吉橋久美子・洲崎燈子)
2025/05/10
2025年5月10日に、猿投町公民館で、猿投山を源流とする広沢川で草刈りなどの愛護活動を行う「広沢川猿投水辺愛護会」の設立総会が行われました。市内では26番目の水辺愛護会です。
広沢川では、これまでに共働による「ふるさとの川づくり事業(2020年度~2024年度)」が行われ、猿投町まちづくり協議会が中心になって、ワークショップや川遊び体験会などを行って広沢川の将来像を描いてきました(末尾のリンクも参照下さい)。
その結果、「人も生き物も生き生き 川暮らし」を合い言葉に、「子どもも大人も安心して遊べる、生き物がすみやすい川」を目指すことになりました。広沢川では浚渫(しゅんせつ…溜まりすぎた土砂を取り除く)工事や、自然石を使用した置き石、石組みなどにより、生き物のすみやすい川づくり工事も行われました。コンクリートで直線的な構造物をつくるのではなく、自然の素材を用いることで、景観を損なわず、水流の変化や隙間が生まれ、多様な生き物の生息環境がつくられていきます
浚渫、置き石、石組みによる川づくり
今後、広沢川猿投水辺愛護会や地域の皆様の活動により、将来像が実現していく未来を楽しみに想像しています。(吉橋久美子)
広沢川ふるさとの川づくり事業関連 研究所日記
「ふるさとの川づくり」第二の川として、広沢川で活動が始まりました
広沢川ふるさとの川づくりワークショップ「川の思い出を語ろう!」を行いました。
広沢川で川づくり学習会(ふるさとの川づくり事業)
広沢川で川遊び!(ふるさとの川づくり事業)
広沢川で川づくり学習会(第2回)を行いました
広沢川で川づくり勉強会をしました
2025/04/27
4月27日に、矢作川中流の右岸、豊田市越戸町の下越戸水辺愛護会(以下愛護会)活動地と、隣接する「お釣土場水辺公園」で、第二弾となる「春の川辺の花観察会」を行い、愛護会の会員約15人が参加してくださいました。この観察会は、4月13日の観察会に参加した方の「自分たちの活動地でも実施してほしい」とのお声がけにより実現しました。
この日は竹林を伐り開いて明るくなった草地からお釣土場水辺公園の林内まで歩き、明るくて頻繁に草刈りや踏みつけを受ける草地と薄暗い林内、その二つの環境の移行帯で、短い距離でも生育する植物が変化するさまを観察することができました。移行帯の半日陰の環境では、クサノオウやツボスミレのお花畑を見ることができました。
愛護会会員の方々は、植物の名前や特徴、見分け方などを次々に研究員に質問し、楽しみながら観察をしていました。「意識せずにただ草刈りをしてしまっていたなあ」という発言も聞かれ、今後の植生管理にも話題が及びました。
植生管理については、研究員から「河畔林の構成樹種の稚樹があれば、伐ってしまわずにその成長を促し、木陰をつくって草の勢いを抑える」、「繁殖力の強い外来種を集中的に刈る」などの工夫により、草刈りの労力を減らすなどの提案をしました。今回の観察会が愛護会の皆さんの植物に対する関心を高めるきっかけとなり、今後の植生管理の工夫にもつながることを願っています。(吉橋久美子・洲崎燈子)
2025/04/13
4月13日に、矢作川中流の右岸、猿投台地区にある「お釣土場水辺公園」で、「春の川辺の花観察会」を行いました。同地区の7つの水辺愛護会の方々を対象とした会で、雨にもかかわらず、15人の方々がご参加くださいました。
お釣土場水辺公園は、矢作川中流の代表的な河畔林として位置づけられ、研究成果に基づいた管理が行われています。この公園は、かつてはマダケの密生林でした。そして、より良い河畔林の管理に向けて、竹をどの程度伐採すれば良いのか、研究所が調査したところでもあります。竹を伐採するほど林床が明るくなり、下草が生えることで植物の種数が増加しましたが、林床が明るくなりすぎると、明るいところを好む外来の草なども生えてきました。つまり、ほどよい明るさの林床にする必要があるということが分かったのです。
参加者のみなさんは、資料を片手に、研究員とやりとりをしながら、春の川辺の花を楽しみました。トウカイタンポポ、ナズナ、タネツケバナ、ヤブツバキなどの花が見られ、カメラを近づけて撮影される方、植物が食用になるかどうかに興味を持つ方など、それぞれに楽しんでいました。
水辺愛護会の方々は日頃から草刈りなどの活動に取り組んでいますが、植物をじっくり見る機会があまりないそうです。「自分たちの活動地でも植物観察会をしてほしい」という声があり、今回の観察会によって植物への関心が高まり、より植物の多様性を意識した管理につながるのではと、嬉しく思いました。(吉橋久美子)
クサノオウなどが見られた場所
ホトケノザは、葉を仏の座に見立てたもの、と説明
花を指して会話したり、撮影したりする参加者
散策路にはたくさんのヤブツバキの落花があった
2024/11/16
2024年11月16日(土)、矢作川の中流域でエクスカーションを行いました。川底の石に着目した夏の回に続く第二弾で、市民の方を対象として、矢作川の川辺を散策しながら自然を味わい、川と人の歴史と今を知り、今後の矢作川について考えるきっかけとしていただくために実施しました。
園児から60代以上の方まで17人の参加がありました。まず、集合した越戸公園付近で、研究所から、河畔林の特性、対岸の「古鼡水辺公園」で行われた近自然工法による護岸工事、川辺を整備する「水辺愛護会」について説明しました
平戸橋下流の「波岩水辺公園」では、かつて景勝地だったことや、治水を巡って両岸住民の駆け引きがあったことなどをお話しました。
お釣土場水辺公園では、「中越戸水辺愛護会」の会長、森和夫さんからお話を伺いました。2016年から、この猿投台地区全体の取り組みとして散策路の整備を始め、眺めを遮っていた竹林を伐開してきたそうです※。地区の7愛護会が連携していること、企業ボランティアを受け入れていることも教えていただきました。
(※2016年から「中越戸竹伐り隊」として活動開始、2020年から現在の愛護会として活動。)
その後、研究員が行う植生調査のうち、「検測棹(けんそくかん)」を使って木の高さを測る方法を見ていただきまし
波岩水辺公園付近では勢いのよい流れ、お釣土場水辺公園付近では静かな流れを見ることができました。足元では様々なキノコが目を引きました。アンケートでは、印象に残った話として、「水害を和らげる人の知恵、歴史」(60代以上)、研究所に期待すること、研究所と共にしたいこととして、「今ある風景を知る解像度を上げる知見を得たい。河川整備の取り組みの成果、経緯を知りたい」(50代)、自由意見として、「楽しかった!!」(10代)、「初めて知ることばかりで川の関心が深まりました」(20代)、「大変勉強になりました」(40代)などの回答を得ました。
また、散策をしながら、川で遊んだ思い出を語ってくださる方が多く、「遊べる川」への期待が高いと感じました。