2020/03/12
毎年3月に行っている矢作川の水生生物広域調査に出かけました。場所は上流が矢作ダム湖上流の流水区間から下流が葵大橋上流までの6ヶ所で行っています。調査の対象は石の上に生育している付着藻類と川底に棲んでいる底生動物です。
底生動物の中でも水生昆虫と呼ばれる、一生のうちの一部、もしくは全部を水中で暮らす昆虫は、春に羽化する種類が多く、この時期は終齢幼虫と呼ばれる最も身体が大きくなる時で、種類の判別にうってつけと言えます。しかし今年の冬はご存じの通り暖かい日が多く、すでに羽化してしまったのでは?と少々心配でした。白波が立つ瀬の部分や、ヨシなどが生える岸辺を、手網を持って採集してみると、何とかまだ水に留まっていたようで、例年通り多くの種類が採集でき安心しました。
2020/02/12
矢作川本流で川底に繁茂するコケ植物の分布調査を行いました。水位が低くて川底の様子を観察しやすい1月下旬から2月下旬にかけて、矢作ダムの上流大野瀬町から葵大橋までを対象に10カ所で行いました。
本来、1年で最も寒さ厳しい時期ですが、暖冬のおかげで比較的楽に調査できました。上の写真は古鼡公園下流の瀬です。ここでは、コケ植物と糸状緑藻が混在している(写真下)ポイントが多く、植被率の判断に苦労しました。
2020/01/21
今回は、大型鳥類の保全を通じた自然再生に取り組まれているお二人を講師にお招きしてセミナーを開催しました。
まず、「サシバをシンボルにした生物多様性の保全 ~サシバのすめる森づくり~」と題し、豊田市自然観察の森の川島賢治氏にお話し頂きました。
里山環境を好んで利用するサシバはアジア域を生息地としており、数年前まで主として東南アジアでの食用を目的とした密猟が絶えませんでしたが、保全のために設立された国際ネットワークと地元自治体の協力によって密猟は激減したそうです。2019年には第1回サシバ保護エコツアーがフィリピンで、同じく第1回国際サシバサミットが栃木で開催されました。
サシバの保全は里山生態系の生物多様性の保全に直結します。2003年より「サシバのすめる森づくり」事業を実施している豊田市自然観察の森では、サシバの餌環境を保全するため「カエルの谷」と名付けられた谷戸で田んぼ環境の保全が行われました。ここには多くの希少種が生息するようになり、休耕田の水張りがカエルを増やし、畦の草刈りが植物と昆虫の多様性を高めることが分かりました。
続いて「豊岡市におけるコウノトリをシンボルにした生物多様性の保全」と題し、兵庫県立コウノトリの郷公園の佐川志朗氏にお話し頂きました。
コウノトリの個体数は現在、世界で3,000羽程度だそうです。日本では1930年が個体数のピークで、その後は営巣木となるアカマツの減少や農薬使用量の増加により減少し、1971年に野性個体が絶滅しました。1985年にはロシアのハバロフスクから導入した個体の飼育が始まり、2005年には試験放鳥が始まりました。現在は170羽を越える個体が野外で生活するようになっています。
コウノトリの主な餌は魚類、昆虫類、クモ類、両生類などで、水域を主な餌場としています。剥製の羽を用いて絶滅前の個体群の餌を分析したところ、特に干潟の多かった太平洋側で海水魚の比率が高く、餌環境を守るためには海から淡水域の生物多様性を保全することが必要だと考えられました。
より多くのコウノトリが生息できる環境づくりをめざし、豊岡盆地では河道内外の氾濫原づくり、水域の連続性の確保、環境配慮型護岸の導入が進められています。こうした自然再生事業の取組は各地で進められるようになり、2013年には、「コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル」(IPPM-OWS)が設立され、コウノトリの野生復帰の支援や各個体のデータ管理を行っています。
かつては日本各地で見られた、里山に暮らす大形の鳥たち。彼らの数を増やすことはそれ自体が目的でありながら、里山の、とりわけ水域の豊かさを再生する手段でもあることが改めて認識できました。いつか、もっと多くのサシバが棲み、コウノトリの飛来する矢作川流域にできたら…との思いを抱きました。
2019/12/08
大河原水辺愛護会で二回目の管理・活動計画作成ワークショップが行われました。
ワークショップは、研究所の呼びかけにより、愛護会の会員の皆さんが集まって活動をふりかえり、今後の将来像を描くものです。活動の「これまで」をふりかえった第一回を踏まえて、この日は将来像について話し合いました。
大河原水辺愛護会の課題となっているのは活動地の活用です。竹を伐り、草を刈って、広い空地はできていますが、利用はあまりされていない状況です。そこで、地域のみなさんが川の眺めを楽しめる、安心して歩ける道を作ろうという方針が固まりました。
一方、会員自身の仕事や、畑、田んぼの世話もしながらの愛護活動は負担となっている一面もあります。愛護会の継続についても話し合われ、今はこの活動が地域の人々をつなぐ一つの機会となっているので活動頻度や活動面積を見直しながら、今しばらくは続けていこうということになりました。ただ、人口減少や高齢化が想定されるなかで、活動の意義をその時々で考えて判断していこうということになりました。
研究所からは、活動地に生えている「ケケンポナシ」の木(枝の一部が食べられる)や、豊富な山菜の活用を提案しました。
今年度末までに、これらの意見を集約した計画ができあがる予定です。
(一枚目の写真はワークショップ当日、2枚目の写真は11月、3枚目は10月撮影)
2019/11/22
今回のセミナーは、山口県から太田陽子先生(美祢市立秋吉台科学博物館・秋吉台草原ふれあいプロジェクト)をお招きして、草地管理をテーマに講演をしていただきました。
日本有数のカルスト台地、秋吉台には約11.4㎢の草原が広がっており、採草地として利用されてきました。草原は山焼きや採草によって維持されてきましたが、現在は草原の草を使う農家が激減し、草原の面積は大幅に減少しているそうです。
「秋吉台草原ふれあいプロジェクト」では、人の営みと共存してきた多様な生きものがすむ良好な草原環境を守るため、また、地元の技術や知恵を受け継ぐ機会を作るため、草を使う伝統的な農業を支援しながら、採草地の再生に取り組んでいるとのことです。
農家はもちろん、ボランティアや体験活動の人々が、3月から5月を除き、草刈りを行います。刈った草は畑に敷く資材や牛の飼料および寝床として利用します。畑に敷いたり積み上げたりした草は、有用な菌が増え、よい肥料になるそうです。
草刈りの際、「草刈りに弱い花が生える場所では草を刈らない、草の高さが低い草原は刈らない、地面近くまで刈り込まない、刈った草は草原の外へ持ち出す」という方法によって「野草のお花畑」を出現させる「お花畑プロジェクト」も行われています。この方法を基本に、草刈りの時期や頻度を変えることで、咲く花の種類や数が、草を刈らない場所よりも増えるという調査結果が出ています。
また、外来植物が増えてしまったエリアでは、在来植物の草原を再生する活動を行っています。以前栗園として使われていた場所では、施肥によって土壌に栄養分が蓄積され、セイタカアワダチソウが繁茂していましたが、それらを刈り取って持ち出すことで土壌の化学性が変化し、セイタカアワダチソウの生育に不利な土壌環境に変わっていきました。開始から12年目の現在、セイタカアワダチソウは減少し、在来の草原性植物は増加しているそうです。
人が利用することで維持されている秋吉台の「二次的な自然」の現在の姿は、豊田市の「水辺愛護会」が行っている河畔林の草刈りに参考になるものでした。今後水辺愛護会の皆さんにこの情報をお知らせし、活動に盛り込んで頂ければと思っています。
※講演内容の詳細は、「秋吉台草原ふれあいプロジェクト」のウェブサイトで紹介されています(リンク)。
年度報告書の概要版もダウンロードできます(リンクの下方より)。